第3話 龍谷ミュージアム

 近くにあるのに全然行ってなかった。まあ大学付属なので油断していたのである。

 だが、東大寺中性院弥勒菩薩像の陳列が明日(実質今日だが)までだというので急いでいった。陳列終了のタイミングは特別公開の一タイミングと重なっていたため好都合であった。

 最近では自転車シェアのアプリがあるため、特別公開見てから博物館なんてこともたやすくなった。

 さて、今回は太陽神と弥勒信仰に関する展覧会であったが、いかに異教と深く関わりながら弥勒信仰が成立していったのか紹介されていた。

 残念ながら専門は日本彫刻史であるため理解したがたきところはあったが、バーミヤン大仏をはじめとした石窟寺院の図像から信仰の醸成過程を知ることができた。ありがたい話である。

 しかしながら、今回の私の目的は単なる展覧会の鑑賞ではない。前述の像についてよくみるためである。私自身研究の中心にすえる仏像をいまだ決めかねている。そのため候補探しといってもあれだが、今回足を運ぶに至った。

 幸いにも360度のガラスケースで間近に全体みることができた。この像の作者をめぐっては毛利久氏をはじめ諸氏が見解を出しているわけだが、改めてこの眼で検証したく思えてきた。

 今回は時間の関係上、モレリの法則に基づく耳の確認と面部のパーツ構成に注目した。詳しい観察結果についてはここでは差し控えさせていただくが、結論から言えば快慶作ではないように思われ運慶の弟子筋といわれた方がまだ納得できるものであった。今後は基礎資料集成を用いることになるが、貴重な対面が実現して幸甚なことであった。

また今回の図録ではこの像にクローズアップしてまとめられている箇所があるため、今後の研究対象に現実的にみてなりそうに感ぜられた。

 だが、実際はどうなるか分からない。他の候補を探しつつもこの像について後日さらに深堀していきたく思えた。

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美術つれづれ You大ニキ @YoudaiNiki

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