② 小麦か小麦
チョッパッ… フルル… ぢゅぉぞぞぞぞぞ〜… はふ、はう、フす〜 フす〜
サッ…スカリッ じょぽっ…
何故だか中性的、というより何方とも本当にわからない雰囲気をした 長い黒髪の美しい女が蕎麦を食う
その目は赤い
麺を汁から持ち上げ、何故か行う助走をつけるような上下の動きをやはり行う
勢いよく啜るが、口の容量がある程度圧迫されれば麺は啜れず
かと言って噛み切るわけでなく箸で残りを送り込み
一息
その後(のち) まだ硬い、しかし中央に汁が溜まり脆くなった掻き揚げを 片側持ち上げ頬張る
すかさず こちらは既に汁で崩れ出したコロッケの一欠を開いた口の隙間に啜り込む
ようやく噛む
あまり上品な食べ方とは言えない
かと言って、乗り換え待ちの男達の忙しなさも無い
だが不快感はない
潔くあるのだ
作法でなく、 美味さと速さへの追求
立喰蕎麦ならではの寛容さか
それともかけ蕎麦それ自体の持つものか
須く、文化である
「いいー食いっぷりなもんだねぇ〜」
実際この一言で片付けられる事でもある
「………」 チャッチャッ… スッ、
もう一人の女が感想を言われながらほとんど無視で食べる女を見ているのを見ながら店主が麺の湯を切る
もう一杯欲しいのか と湯切りを傾け女に見せるが会釈され要らないのだと判断して下げる
全て無言である
「あっ、オッチャン コロッケ追加で」
「…あいよ」
ちゃシュぽん…
「ミーちゃんどうする?」
良い食いっぷりのミーちゃんと呼ばれた女は
連れの女 サヨくんを待つ意味合いを込めて、
「うぅん、 じゃあ私もコロッケお願いします」
「……あいよ」
トポッ、シュウ〜
「ふふんっ」 「…?」
サヨくんのより静かに入れられたコロッケを見て嬉しくなるが連れの前、 大っぴらに言うものでない
サじゅり…
「……ふ〜ん… フッ」
ミーちゃんは一口コロッケを齧った時 ある考えが浮かび、納得する その後また納得する
興味がなさそうに息をつき、小さく笑った
偏向した 見落とした思考のため論破は容易い
が
これ自体ただ一瞬の思いつき
議論はないのだ
ラーメン屋、蕎麦屋 これはある意味でファストフードと考えた場合
食後すぐに退店する、しなければならない
欧米式の店の食事中、食後長くお喋りするという差
これは何処に現れるか
ここでは前者は仮に、日本風(ファストフード)と呼ぶこととする
食事中、食後の場では独特な開放的な会話の場が成り立つ
しかし日本風の店ではそれが行えない
行える場所が 男性で言えば飲み屋(屋台系ラーメンもここに含める) 女性では家での食事会であると言える
日本文化である
そこに現れたのが欧米風店 ハンバーガーやファミレスである
戦後思想啓蒙的陰謀論から、 と言うより事実としてアメリカの行った思考操作
コンビニやファストフード店等 欧米文化輸出
急速な普及を目指す中で、安価なファストフード店に女性が求めた要素を盛り込んだのは偶然ではないはずである
つまり違いがあるのでなく
始まりから違う物が置かれただけなのではないか
そう思いついたのだ
……前述の通り論破は容易い そもそも麺屋をファストフードと捉えること自体どうなのか
一瞬の思考遊びと納得したのだ
そして、すぐに思いつきそうな反例がわからず自分の趣味の右翼思想に結びつけようとした浅はかさ、その視点からした観察できなかった頑なさに納得した
見たい情報だけ見たのだ
だからミーちゃんは興味なく息をついた
では何故笑ったか
この無茶なアイデア 以外に、 あくまで一つの要素にすぎなくとも本当にあったのでは
と思わせてくれるものだったからである
そして、そう考ようとすることこそ頑なさであり、良いものばかり見る 特に電脳持ちの自分達の世代には顕著な特徴
わかっていてもやってしまっていることに笑ったのだ
ミーちゃんは歴史派右翼主義である ピンポイントな懐古主義者とも言い換えられる
更に言えば、あの頃の学生運動に憧れを見る若者である
コロッケを完食 長居はできない
キッちゃっ…
サッぱらっ
箸を置き、代金を払い退店する
サヨくんも合図もなく同じようにする
これも日本的精神文化の行動と言えるか
考えに耽る前に一言
「ご馳走さん オッチャン」「あっ、 美味しかったですぅ 」
これを忘れない これこそが日本的精神文化の行動
その根源に最も近い物の一つである
やはり精神性文化は思考しない所にこそ、
純粋に見る
――――――――――――――――――――――――
後書き
なんか四部作になりそうな流れ
もし楽しんでくれている方がいればぜひ楽しみにしていていただければ幸いです
ちなみにこの短編集は私の他に書いている小説のスピンオフだったりします
今の所繋がりがほとんど感じないレベルなので単純な宣伝にでも捉えてくれればいいです
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