第7話 逆転

「まずは羽を開かせましょう」


 男は固定された真莉の手首をつかむと、その部分を強く押した。


「い"ッ!!!」


 痛みで短い悲鳴を思わず上げる。すると背中の皮膚が伸び、羽が服を突き破って出てきた。

 ペストには抗えずに能力や羽を見せてしまうツボがある。ペストハンターだった男はその存在を知っていたのだろう。


「おお……! これはこれは……色も形もなんて綺麗なのでしょう……」


「触るな……!」


 真莉は抵抗するが、男がそれを気にする様子はない。彼は確信していた。真莉が至上最高の作品になると。

 あわれなことに、男は気がついていなかったのだ。目の前の少女がたかがハンターにやられるほど弱くはないことに。


 男が自分の後ろにあった加工用の特殊な液を取ろうと後ろを向いたとき、真莉の目に変化が起こり鮮やかな緑に染まった。そして彼女がわずかに目線を動かしたとき____


 床のタイルが突然バリバリと割れ、一本の長い枝が生えてきた。それは男が反応する間もないうちに、彼の肩をつらぬき、首を絞める。

 動けないことを確認した真莉は、今度は髪を黒にする。それから炎の力を使い、自分の手を覆っていた鉄のカバーを溶かして外した。


「な……なぜ……」


 男の苦しそうな声を聞いた真莉は笑う。今度は彼女が嘲笑の矢を放つ番であった。


「なぜ? なんでお前が敗北したかの理由か? いいだろう、教えてやる」


 彼女は人差し指を上げて言う。目はギラギラと輝いていてまるで悪魔のようだった。


「一つ目。私はお前の『作品』になってしまった人たちと違って戦闘慣れしている。二つ目」


 言葉とともにまた一つ、彼女は指を上げる。


「私は三つの能力を持っている。そう簡単にはやられない。三つ目、私は一人で敵の懐にもぐりこむような真似はしない」


 そこで突然またタイルが割れ、地中からヴィリアミが出てくる。


「合図を待っていたぜ」


「遅くなってごめんな」


 そのまま二人は仕事に取り掛かる。

 ヴィルは氷の能力を使い、斧を作る。そのまま鍵のかかった扉を破壊し始めた。

 一方、真莉は他の空いている部屋をあさり、生存者を探した。


 二人がこうして他のことに取り掛かっている間、男はなんとか隠し持っていたナイフを取り出し、自分を捕えていた枝を切断した。


「あ」


 逃げ出した相手を見た真莉は、彼を追いかけようとする。だが特にその様子に焦っていることもなく、ヴィルも彼女を止める。


「追いかける必要はない。外にはどうせがいるだろ」



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