第6話 くだらない誇り
男はゆっくりと、だが始終おかしそうにニヤニヤと笑いながら、自分の経歴を語り始める。
「これは生まれつきなんです。私は小さい頃から人を箱に入れて、
男は嘲笑を声に含ませて、話し続ける。
「これはチャンスだと思ったのです。私は資格を取り、民間ペストハンターの会社に就職しました。しかし、働いているときにペストの遺体をはく製にして箱に入れて飾っていることが、会社側にバレてしまいましてね。そこまではいいのですが、どうやら綺麗な羽や目玉を売っていたのがまずかったようです。それで給料は無くなるわ、趣味はできないわであのときは本当に大変でした。
しかし、私はなんとか配達員の仕事を見つけました。趣味のほうはもう諦めようかと思ったのですが、なんというか、神様が私に続けるよう仕向けたんでしょうかね。
配達員というのは人の秘密や事情、悩みを探りやすいタイプの職でしてね……。私は自分の担当する地域に何人かのペストがいることを発見したのですよぉ。そこで彼らをおびきよせ、攫い、作品にしました。
それだけのことです、フフフ」
「それだけのこと……? それだけのことだとッ?!」
真莉は激怒した。ついか弱い女を演技することも忘れてしまう。
「お前がやっていることは作品作りでもなんでもねえッ! ただの殺人だ!! 人殺しをちょっと加工して、このクソみたいな箱に入れることを『作品』と言い、自分を持ち上げているだけだッ!! 相手が人権のまったくないペストだからって許されると思うなよ!!」
「はっはっはっ!」
男は心底おかしそうに笑う。
「あなたの言う通り、あなた方には人権がない。だから誰も探さない、相談しない、逮捕しない……。私は完全に自由なのです。それに……」
彼は一度ちらっと箱を見た。
「ペストの目と羽は非常に美しい。人間よりも加工しがいがあります」
にやりとした笑いに、真莉の全身の毛が怒りで逆立った。
「特にあなたの目はまるで宝石のよう。まだ加工していない『獲物』がいますけれども、まずあなたから始めようと思います、フフフ」
(まさか……まだ生存者がいるというのか?)
少女はギリギリと歯を噛む。
嫌悪と憤怒を顔に出す彼女に、男は一歩近づいた。
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