第4話 発見?

「今日は本当にありがとうね」


 皿を洗い終わったアーベルとヴィルは玄関で、そう母親に言われた。


「いえいえ、ペスト同士はちゃんとこういうところも協力しなければなりませんからね」


 青年はささやくと、家を後にした。街に出ると、待っていた真莉が二人に合流する。


「それで、ヴィル。さっそくなにか行動していたみたいだけど、なんだったんだい?」


 アーベルが弟子に尋ねる。


「さっきあの家に配達員が来ただろ。それで、この地域担当しているって聞いた。行方不明者が出たのは、全部あの区域に限定されているんだよね?」


「ああ、そうだよ」


 リストを取り出したアーベルは、もう一度隈なく確認する。もちろん、ヴィルの言った通りだった。


「もしかしたら行方不明者すべての家に配達してるんじゃないかと思って、今ゴキブリに尾行させている」


「なるほど……。でもなんでその人をそんなに疑うの?」


 真莉がきくと、少年は応える。


「さっきの家の子供の一人が『家のことをよく聞いてきて気味が悪い』って言ってたからさ。俺には奴があの家庭を探っているようにしか見えないね」


「へえ。確かに、子供の『嫌だ』とか『気持ち悪い』っていう感覚は大事だもんね」


 少女は弟弟子の言葉に頷いた。


「そう、だからあっちであの虫待ってていい? あ、あと隠れ家から角砂糖持ってこなきゃ」


「あ、じゃあ私が行ってくるよ」


 真莉がはりきって、自分の家へ戻っていく。



 ヴィルの小さな情報屋が来たときに、真莉もちょうど帰ってきた。


「ふーん、なるほど。やっぱり俺の予想通りだったな」


 ゴキブリからすべてを聞き取った少年はそうつぶやく。


「なんだって?」


「やっぱりあの配達員は行方不明者が出ているすべての家に関わっている。他の家でも探るような質問をしているらしい」


「は? 絶対そいつが犯人じゃん!」


 真莉はゴキブリに砂糖をやりながら、ほとんど叫び声に近いくらいの音量で言った。彼女には虫に対する苦手意識はまったくなかった。


「さっさと捕まえよう! あいつが他のペストをさらう前に」


 少女は自分の二人の弟たちを思い浮かべながら二人に話す。もし彼らに何かがあったら……。


「待て、真莉。そんなにすぐに断定するな。やつがまったく関係ない可能性もあるんだぞ。そうなったら僕たちが終わりだ」


 ちょうど二十歳で、三人の中で最年長のアーベルは、師匠として真莉をたしなめる。


「でも……」


「真莉。君は我が団を壊滅に導きたいのかい? もっと慎重に行動しないとダメだぞ」


 アーベルに言われ、少女は不満そうな顔をしながらも口をつくんだ。




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