呼び出し

 何の問題もなく。

 いや、大きな問題はあったが、それでもそれを乗り越えて何とか課外授業であるダンジョン探索をやり終えた僕は今、この学園のトップ。

 学園長へと呼び出されていた。


「わざわざ私に何の用ですの?」


 自分の前に立つ一人の初老の男。

 かつては最も血の気が盛んで多くのダンジョンを単独で踏破してみせた人物であり、今では世界よりその功績と名誉が認められ、賢者という魔法使いの中で最上位のものに送られる称号を世界から認められている者。

 それこそがこの学園のトップである学園長で、今僕の前で座っている人物である。

 しっかりとした英傑であり、生きる伝説ともいえる人物が僕の前にいるのだ。


「ほっほっほ。そんな堅苦しい要件ではない故、力を抜いてほしい……と、並みのものであればいうところじゃが、君であればちょいと別かのぅ?」


「別扱いしてくれていいですの。私は侯爵家の令嬢でなおかつドラゴンスレイヤーですの。そう簡単に他者へと緊張することはないですわ」


 僕は侯爵家の人間であり、しっかりとした実績を持つ目の前の学園長に匹敵する英傑である。なかなか情けないところは見せられない。

 そんな何とも難しい位置にいるのだ。

 一応、我が家の名誉もしっかりと守らなきゃいけないしね。


「ほっほっほ、それはありがたい限りじゃ」


「それで?私に何のようですわよ?」


「おぬしもすでに何となく察しておるじゃろう。ダンジョンでの特課外授業における話じゃ」


「あいつですわね?」


「あいつじゃ。君たちを襲った魔物が人工的に作られた魔物であることが正式に確認されたのじゃ。もうわかるじゃろう。わしが何を聞きたいか」


「言っておきますけど、私じゃないですわよ?私は自分の美貌以外に興味ないですわ」


「安心したまえ、さすがに君を疑っているわけじゃない。聞きたいのは何か、心当たりは何かということじゃ。戦った本人より聞いてみたいのじゃ」


「答えは何もわからない、ですわ。というのも、あのキメラは多くの人の手によって積み重ねるように作られていましたの。あれだけの人から、あれだけの数を覆い隠さればもう何もわからないですわ」


「……ふぅむ。なるほどじゃの」


「それで?聞きたいことは終わりじゃ……ところで、話は変わるのじゃが。そろそろ、学園トーナメントの時期じゃな。どうじゃ?進捗のほどは。順調かね?」


「我が家の名に懸けて、負けるつもりはありませんわ。それでは、用も終わったようなので失礼しますの」


 学園長の言葉へと力強く返した後、僕はこの部屋を後にするのだった。

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