第二章 平民娘

研究

 この世界も随分と胡散臭いようだ。

 ゲームの知識により、世界の流れがある程度わかっていると思っていたのだが、まさかチュートリアル的な立ち位置にあったダンジョンの課外授業の方からもう齟齬が出るとは思っていなかった。


「ふんふんふーん」


 まぁ、だからと言って僕のやることは変わらない。

 

「これで、何とかなってくれないかなぁ?」


 僕は自分の国宝級の美しさを保ち続けるだけである。

 生まれた時から、そこだけは永遠に変わらない。

 あるべき僕の姿である。


「老化を止める……これさえできれば」


 所詮美貌など年と共に衰えるものである。

 どれだけ己を磨き、美魔女と言われるようになろうともババアはババア。若い子には勝てないし、老けていることには変わりない。

 これがもし、男だったら味が出て若い子にも勝るイケオジになれるが、女性だと別。

 カッコいいババアになることしかできない。

 人間は年を取るとかっこよくなることは出来るが、美しく可愛くなることは出来ないのである。

 

「……」


 だが、それは僕の望むものではない。

 かっこよさを追い求めるのであれば男でいい。

 今の僕は女になったのだ……なれば、求めるのは美しさだ。


「……無理か」


 老化防止魔法。

 その試作品を作ったのだが……失敗だな。

 

「はぁー」


 僕は深々とため息を吐く。

 これまで作ってきた僕の魔法はすさまじいものだ。

 日焼け止めや化粧水などよりもはるかに高性能でお肌を守る魔法。髪を美しく保つ魔法に、早く乾かせるようにする魔法。生理を止める魔法。服を作る魔法。

 ありとあらゆる魔法を作ってきた。

 一般公開すれば多くの女性たちが僕の魔法を求めるであろう一級品の魔法ばかりであると自負している。


「……ふぅー」


 そんな魔法を作ってきた僕は己の能力にかなりの自信を持っているのだが、それでもいまだに老化を止める魔法は完成させられていなかった。


「まぁ、でもまだ時間はあるし。自分が年老いても若返りの魔法を新たに開発すればいいだけ。気長にいこう」


 いったん、研究の手を止めることにした僕は自分の手にあった多くの機材を机の上に置く。


「あー、整理はまぁ……うん。また今度でいいだろう。いまだに、僕は何処が何処にあるかしっかりと把握できているし、まだ焦って整理するときじゃない。もう晩飯の時間だし、整理は今度でもいいだろう。うん」


 己のしていた魔法研究によって散らかった部屋。

 それをそのままにして僕は部屋を後にし、晩飯のために食堂の方へと向かうのだった。

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