主人公
CLOCK ONE。
その通称をクロワン。
このゲームの主人公の名をリーベ。
彼女は貴族家の生まれではない平民でありながらも、たぐいまれなる才覚によって名誉あるネモセク学園への入学が認められた天才児である。
この少女、実はすでに途絶えていたと思われていて聖女一族の末裔で特別な聖女の力を使えるようになったり、数多くの男子諸君から好意を持たれるようになったりと、主人公としての素質をしっかりともったど派手な子である。
後世ではジャンヌダルクのように英雄視されるだろう。
それだけの才覚はある子であり、ゲームでは英雄レベルの活躍をしっかりとこなしてみせた。
「……えっ、えっと」
だが、そんな彼女も未だその真価が世界中に伝わっていない今だとただの平民。
原則として貴族しかいないネモセク学園へとやってきた異分子である。
そんな彼女は入学式当日の時点で一部の女子生徒からいじめられてしまっていた。
ゲーム本編はそんな主人公を僕の元婚約者が助けるところから始める……。
「それで?大丈夫だったのですの?」
なのだが、その役割を完全に僕が奪ってしまっていた。
本来であれば主人公とその攻略対象である王子の初接近。
それを僕が王子の代わりにしっかりとこなしてみせる。
「だ、大丈夫です……ありがとうございます」
ゲームの主人公。
リーベは僕の言葉に頷きながらゆっくりと立ち上がる。
「ありがとうございました……おかげで助かりました」
そして、そのまま彼女は僕へと深々と頭を下げる。
「別にいいってことですわ。困ったときにはお互いさまですの」
「……本当にありがとうございます」
「いいってことですの。それじゃあ、顔を上げるのですわ」
「……失礼いたします」
僕の言葉を受けてようやくリーベは顔を持ち上げる。
「それにしても……本当に私のような平民を助けてよかったのですか?な、何か問題があったり」
「問題ないですわ。たかが男爵家の娘が私にできるはずがないですの。男爵家と侯爵の間にある壁は平民と男爵家の間にある壁よりもはるかに厚いですわ」
男爵家など所詮大した力を持っていない。
平民に毛が生えた程度である。
「……そう、ですか。ですが、なんでわざわざ平民である私を助けたのですか?私は何もできませんのに」
「人を助けるのに理由がいりますの?それに、何もできない。なんてことはないですの。私は貴方の実力を高く評価していますわ……それじゃあ、また会える日のことを楽しみにしていますわ」
僕はまんまゲームのあいつが言ったことをパクリながらこの場を後にするのだった。
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