いじめ
学園の裏。
人気のない裏庭。
「あら?そこで何をしているのかしら?」
そこで、たった一人の少女を三人で囲っていた女子生徒たちへと僕はできるだけ優しい声色になるよう心掛けかながら、声をかける。
「……っ!?」
「す、ストレーガ侯爵令嬢閣下」
「んなっ!?」
少女を囲っていた女子生徒たちが僕から声をかけられたことで動揺の声を漏らす。
見たところ、三人ともそこまで位の高くない、男爵家程度の田舎からやってきた新入生だろう。
「何をしているのですの?」
「……ぁ」
「え、えっと……」
「ば、罰です!」
僕の追及に対して、一人の女子生徒が意を決したように前へと出てきて果敢にも声を張りあげる。
「我が国は……それに平民がいるなど、ありえないことだとは思いませんか!だ、だから……今すぐにでもやめるように、と!」
そして、そのまま少女は自分の意見を言いきって見せる。
「確かにそうね……でも、その子も貴族家に匹敵するという力を評価されてここにいますわ。貴方たちが勝手に存在する価値がないと決めつける理由はないわ」
「で、ですが!この女は平民でありながらこの誉ある高校に在籍しているのですよっ!?こ、これが許せるものなのですかっ!?」
「そ、そうです!」
「そ、うですわ……!」
「あら?貴方たちは私たちの国の歴史を侮辱するのかしら?実力があれば入学を許すというのが我が国の通例……それを否定して、無事でいられると思っているのかしら?国を代表する実力者が認めた。それ以上に大事なことがあるというのですの?」
僕は淡々と女性生徒たちの肝を凍えさせるようなことを話していく。
「……そ、そういうわけで、ではぁ!?」
それを受け、女子生徒たちはたじたじだ。
それもそうだろう。
男爵家の娘と侯爵家の娘とではあまりにも格が違いすぎる。
「今なら何も言いませんわ。早く去りなさい?次に顔を合わせてもこのことについては触れないですの……今、去るのでしたらね」
「は、はひっ!?すみませんでしたぁー」
「わかりましたぁー!?」
「すみませんでしたーっ!」
僕の言葉を受け、一人の女子生徒を囲っていたものたちは逃げるようにその場から去っていった。
おとなしく逃げ帰ったことだし、もう触れないであげよう。あの子たちももう学んだだろう。
「さて、と。大丈夫ですの?」
そして。
「……ぁ、新入生あいさつを、していた」
「えぇ、そうですの。覚えていてもらえてよかったですわ」
僕は女子生徒たちに囲まれていた一人の女子生徒へと笑顔で話しかけるのだった。
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