悪役破滅フラグ回避

 入学式が終われば、そのあとに残っているのは自由時間である。

 多くの人たちが新入生並びに、在校生とあいさつ回りをするのだ。

 僕はすでに多くの人たちとの挨拶を終えたところだ。

 自分ほどになれば、僕が回らなくとも相手が勝手にやってくるのである。


「どうなっているのかなぁ、っと」


 自分のやるべきことを終えた僕はゲームの舞台でもある学園内部とその人間関係の確認のためにこの場を歩いていく。


「……えぇ」


 この時間において、自分の元婚約者である王子が主人公と初めて接触するのである。

 普通の女の子が悪役令嬢に転生したのだとしたら、まずはここの接触が起きないようにするのが一番効果的なのではないだろうか?

 別に今の僕はすでに婚約者じゃないのでどうなってもいいが。

 どうぞ、好きに主人公と接触してくださいといった感じである。


「ぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおお!!!」


 だが、そのはずなのにいまだに王子は地べたをはいずりまわり、あっさりと僕に振られたことを引きずって涙を呑んでいた。

 勝手に接触フラグが折れていた。

 というか、なんでこの王子は僕へとこんなにも執着するのだ。


「はぁー」


 まったく、君がいかなければ主人公がどうなるのかね。

 ここは優秀であれば平民であっても生徒にすることも容認する学園である。

 主人公はその優秀さゆえに入学を許されたものなのだ。

 その定めだとでもいうのか、主人公は入学早々の身分からいじめられてしまうのだ。

 ゲームの物語は虐められれていた主人公を王子が華麗に助けるところより本格的に始まっていくのだ。

 それだというのに、ここで王子が道草を食っていたらどうなってしまうと……、いうのだ。

 あれ?ここに王子がいるってことはさ。


「……あれ?もしかして、この男の代わりに主人公の攻略対象ポジを奪えるのじゃね?」


 見た目は完ぺき美少女。

 だが、それでも僕は男の子である。

 人生二度目の学園生活。

 かわいい女の子との青春を送りたいと考えるのは何か、おかしいだろうか?

 いや、おかしいわけがない。

 ごく自然な話である。


「……悪役破滅フラグ回避」


 悪役として破滅を回避する。

 それに最も効率的で圧倒的な方法は一体何であろうか?

 そんなの……当然、主人公を自分の女にしてしまうことである。

 自分の恋人を処刑しようとする主人公がいるわけない。


「よし」


 自分の中で完ぺきなロジックが出来あがった僕は今、ヒロインがいるであろう場所に向かって歩き始めるのだった。


「レイユぅぅぅぅぅぅぅぅううううううううううっ!」


 背後からの、悲しき男の声を聴きながら。

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