入学式

 サングイス王国がアーンクラ王朝になる前より永遠と続く歴史ある学園、ネモセク学園。

 五年生の学園であり、基本的にここで貴族の子女が多くのことを学んで教養を深めると共に三年生の段階で結婚式、四年生で妊活。そして、五年生で子育て、と。

 学園による手厚いサポートの中で貴族の子女が人生の中でも重要なことを押し進めていく重要な場所である。

 そんなネモセク学園へと新しい新入生がやってくる歓迎すべき時こそが今日なのである。


「……」


 入学式の進め方、形式は日本とよく似ている。

 新入生は同じ制服を着て並ぶのである。


「それでは新入生のあいさつです。それではお願いします」


「はい」

 

 司会者を務めている男性の言葉を受け、僕は新入生代表として立ち上がって壇上のほうへと向かっていく。

 自分の元婚約者である豚王子を含めて、多くの有力者が今年は新入生として学園にやってくることとなっている。

 そんな中で、新入生代表として選ばれたのはドラゴンスレイヤーというあまりにも大きな名声を持った僕であった。

 ドラゴンスレイヤーというその名声は、王族をも超えるのである。

 個人によってたやすく世界を変えられるだけの実力者がポップすることもあるこの世界だと、貴族社会でありながらもその実力によっては平民であっても重要視されることも多々ある。


「学園に在籍している教師と先輩方。そして、新しい旅の始まりに立つ同級生の皆さん、こんにちは。ストレーガ侯爵家令嬢のレーユですわ。今日、新入生代表として、皆さんの前で話す機会をいただき、心から感謝していますわ。これから、私たちの高校生活が始まりますわ。この瞬間から、私たちは無限の可能性を秘めた新しいページを開くことになりますわ。ここには多くの思惑と生まれによる事情が集まっているでしょう。ですが、私たちは幸運にも同じ学園へと通う生徒同士ということになりますわ。共に多くの困難を乗り越え、自身の可能性を追求していく仲間となったのです。これからの3年間、私たちは共に成長し、素晴らしい思い出を作っていきましょう。最後に、この新たなスタートに立ち会えたこと、皆さんと一緒に学べること。心より感謝します。皆さんの夢が叶う日まで、一緒に頑張りましょう。ありがとうございました」


 社会構造が違おうと、世界が違うと。

 式典が長いのと偉いおっさんの話が長いことは永久に変わることのない不変の真理である。

 僕は世界が変わっても似たような新入生のあいさつを短くまとめて話し終えるのだった。

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