討伐決起

 この世界の衛生観念に打ちのめされながらも、僕はしっかりとエルフメイドをきれいな状態に保つ事ができた。


「うん、シミなし汚れなし……完璧な状態ですわ」


「……さ、流石に恥ずかしいのですが」


 エルフメイドのパンツの状態も完璧。

 彼女のスカートをたくし上げ、まじまじとその中身を見る形になっている僕は満足気に頷いて立ち上がる。


「……うぅ」


「さて、それじゃあエルフメイド。一緒にドラゴンを倒しに行くのですわ」


「えぇ!?あれは冗談ではなかったのですか!?」


「当たり前ですの」

 

 僕はエルフメイドの言葉に即答する。


「あの豚との婚約などごめんですの」


「ぶ、ぶた……一応王子なのですよ?も、もう少し受け入れたりはぁ……」


「私の衛生観念はあのレベルですのよ?自分の隣であんな激臭デブが立っているなんて許せないですわ。あれを強制されるくらいなら私はこの家を脱走しますわ!」


「……うぅ、そのレベルなのですか?」


「ですの」


 僕はエルフメイドの言葉にうなづく。

 というか、そもそもとして僕の心は男である。狂ったように美容の道を進んで女の身をこれ以上ないほどに堪能しているが、しっかりと男である。

 元々女になりたい願望があったりなどは一切ない。

 性自認は男で己の恋愛対象は女である。

 そもそもとして男と婚約関係になること自体ごめんである。


「ドラゴンスレイヤーになったむちゃくちゃ出来るほどの名誉を掴むのですわー!あの豚程度であれば退かせられるような!」


 あの豚王子はずっと評判が悪い。

 そんな中、頼み込むような形で国王陛下が自分の父親に押し付けてきたのである。

 そのような経緯があるため、僕の方から圧倒的な権威と共に拒否権を出せば受け入れざるを得ないだろう。


「……わかりました」


 僕は折れない。

 それを見て取ったのであろう。

 エルフメイドは諦めたように項垂れる。


「ですが、これだけは約束してください。何か、ヤバいことがあれば必ず私を囮にして逃げてくれると」


「良いですわ。万が一、負けるようなことがあれば飲んでも良いのですの」


「……本気で本気ですよ?」


「私は結構ドライですの」


「……そ、そうですか」


 エルフメイド?

 なんで僕の言葉にちょっとショックを見せているの?日本人としての僕は見捨てるなんてありえないという価値観だが、貴族としては別だ。

 さすがの僕でも貴族として現実を受け入れる事はできる。

 仕えるべき主君を殺して生き残ったメイドなどこの世界で受け入れられるはずがないだろう。

 ならば、僕も受け入れるしかない。


「それじゃあ、決まりですの!周りにバレないように行きますのよぉー!」


「えぇ!?誰にも知られせないんですか!?」


 当たり前だろう。

 いきなりドラゴンを殺してくるなんて言っても呆れられるのが落ちだ。

 ここはサクッと倒すのが最善だっ!

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