3話 特典魔法と、そして神から教えてもらう可哀そうな魔王


「「異世界で」お願いします!!!」」



「ハッハッハッ!そう言うと思ったっす!だったら早速──」


「ちょっと待てぃ!!!」


スマイルはそのまま話を続けようとしたが、俺は立ち上がり、大声を出し話を一旦止めた。

理由は異世界に行くなら ”スマイルの頼み” それが何か聞いておく必要がある。

もし”魔王””とか倒して世界を救えとか言われたら……


「なあ、聞きたいんだが俺達にお願いってもしかしてその世界にいる”魔王”を討伐しろとかそんなんじゃないよな?」


俺は単刀直入に聞く。もしそんなお願いされたら溜まったもんじゃない、俺がそう言うとサグメもうんうんと頷いている。やはりこいつは分かっているな。

するとスマイルは手をひらひらと振り、苦笑いをしている。


「魔王関係なのは正解っすけど、そんな物騒なお願いはしないっすよ~今からそれ含め二つほど説明するから質問はその後っすよ!」


やはりか……まあ”倒せ”じゃないからひとまず落ち着いたが魔王関係に変わりはない。もし話次第ではチート能力でも貰わないと無理だろ…

しかし倒すんじゃなかったらどんな頼みなんだ?まあ答えはこの後すぐ分かるだろう…俺はいきなり幸先の悪さに不安を感じながらも地面に座りあぐらをかくとサグメがひざの上に座ってきたので頭をよしよししながら話を聞いた。


「いいっすか?じゃあ君たちはこれからその世界に行く前にまずはこの私が魔法をあげるっす!」


「「おおぉ~~~!!!」」


俺達2人目は子犬のように目をキラキラさせながら、魔法と言う何度も聞いた単語だが貰えると聞き、これまでにないぐらいワクワクした!

もしかして俺はTUEEEEを出来るのか!?


「その二っす!君たち二人には魔王と友達…いや!親友になってもらうっす!」


「「はぁあ!?」」


スマイルはサラッと自覚も無しにえげつない事を言ったが、俺達2人は意味が分からなかった。

魔王と親友になれ?聞き間違いかな?いくらなんでも無理ゲーすぎるだろ!自我のある核兵器と親友になれと言っているようなもんだ!

友達どころか、俺達が会った瞬間、世界を爆発させる気しかない!そしてスマイルはやはりかと言わんばかりの表情で話しを続ける。


「魔王、見た事もないのに”悪”と認識してしまう。それが良くないんっすよ!」


俺はそれを聞いた瞬間はあ?となったがスマイルの印象を思い出した。このムキムキが死神…もしかしたら魔王も俺の想像と違うと考えたら少し納得出来たような気がした。確かに俺たちの世界ではほぼ悪役として出てきてるから考える事もせず悪者と決めつけていた。


「…………確かに俺たちは考えもせず悪い奴と決めつけた。もしかしてその世界の魔王はいい奴なのか?」


スマイルは満面の笑みで真っ白な綺麗な歯見える大きな口を開き頷きこう言った……


「その世界の魔王…彼女の祖先は確かに大きな力が原因で人間と問題が起きたっすけど、彼女は優しくていい奴っすよ?、悪いこともして無いのに世界はあの子を恐れ、嫌う。このままだと彼女は永遠の孤独と悲しみの苦痛に精神や心を蝕まれ、世界を巻き込んで自爆しちゃうっすよ~」



「「はぁあ!?!?」


俺達2人は世界を巻き込んで自爆と聞きまたもや叫んでしまった。

なんて傍迷惑な話だ!でも一人……か、俺にも一人が辛いのはよくわかる。神様がそんなお願いをして”いい奴”とまで言ったのだ。会っただけで命を取られる事はまずないだろう。

俺は呆れながらも決心をして息を吸い、ため息を深く吐くと────


「わかったよ。その頼みが叶えられるかは正直半分は無理だがもう半分は可能であれば努力する」


「ありがとうっすよ!」


俺は中途半端な答えを出したのだが、スマイルは満足したようだった。

しかし反面サグメは少し不安そうだったがまた理由は今度聞こう。今は魔法が早く欲しい!


「じゃあお待ちかねの魔法を君たちに授けるっすよ!なんとなくで自分が使いたい魔法教えて欲しいっす!例えば、手から炎を出せる見たいな感じっす!」


”勝った!!!”俺は心の中でガッツポーズを決める。これは確定演出だァ!これは神から最強チート魔法を貰い、この俺!雨宮蓮の異世界無双伝説の物語が始まるのだ!

華麗にも勇敢に敵を倒し! そしてカッコよく! さらには無双をして! 女の子からモテまくり俺だけのハーレムを作る!

俺は一秒でハーレムになっている未来の自分の姿を想像すると、急いで計画を練るため慎重に貰う魔法について考える事にした


「よしサグメ集合」


そういうとサグメは悪だくみをする時のニヤリとした小悪魔顔で俺に肩を組んできたので組み返す。

サグメは早速欲しい魔法を話した。


「兄さん、私が欲しい魔法はお金を出せる魔法だよ。お金さえあれば安全に暮らせるし、欲しい魔法があれば魔導書見たいながどんなに高くても買えるし、なんなら教えて貰う事も出来るよ!」


俺は思わず顔を手で隠し笑った、流石俺の妹である。現実的でかつ最も信頼できる魔法を選んだ。

俺はサグメの魔法を聞いてよく考える、確かにお金さえ無限に出せたら女の子にお金を払いハーレムも作れる。無双で作るハーレムよりよっぽど楽が出来る上に簡単だし時間も掛からない、もし奴隷市場が漫画のように異世界にあるなら女の子を全員買い取ってあんな事やこんな事もも……



「───どうよ、兄さん」

サグメはニヤニヤしながら親指でグッドポーズして俺に感想を求めてきた。俺の回答は…


「───完璧だ。」


間を少し置き、俺もそういい、親指グッドポーズを返すとスマイルが横槍を入れた。


「楽しそうだからこんな事言いたくないっすけど、チート魔法?あげれないっすよ?」


「「はぁあ!?!?!?」」


俺達はまたまた叫んでしまった。そして俺はスマイルの”あげれないっすよ?”が頭の中でループして絶望し思わず倒れこみ地面を殴り、叫んだ


「そんなのあんまりだろ!!!教えたらくれるんじゃないのか!?」


「まあ...そんな都合よくは行かないよね...ねえ、兄さん大丈夫?」


サグメも少し落ち込んだような気がしたが、すぐに受け入れ俺の背中をさすってくれてた…


少ししたら改めてスマイルが説明してくれた。


「確かに私の説明不足っすね!それはすまんっすよ!」


お前反省してないだろ!と言いたかったが一応こいつも神なので心の中に留めておいた。


「いいっすか?私は君たちの求める魔法を聞いて、与えられるか、無理か、を判断してあげられるならいいんっすけど無理なら無理って言いそれに近い魔法を提案するっすよ」

「もちろんどんな敵も一撃で倒せる魔法とか、空から隕石を落とせるとか、どんな攻撃も効かないバリア魔法とか常識外れな力は無理っすよ、そんな力あるなら私も欲しいっすよ!」


はいはいそうですかぁ~、感想はそれだけだった。ハーレム生活が閉ざされたのがショックで言葉は出て来ないが、ふと一度は使えたらなぁ~と思っていた魔法を思い出したから聞いてみた。


「じゃあ時間を止める魔法」


「無理っす!!!」


分かってはいたが即答だったので思わず、この神使えるのか?と疑ったがもう一つあるので聞いてみた。


「じゃあもう一つ聞くぞ」


スマイルは頷いて耳を傾けた。


「じゃあ”透明になる魔法”」


スマイルはそれを聞いた瞬間笑顔になり……



「よかろう!その力ソナタに与えるっす!!!」


 スマイルはそう言うと両手を天に向かいあげると…


「え、ちょっとまっ──」


 急いで止めようとしたもののスマイルが叫んだ瞬間俺の体が白く光りだし言葉では表せないが力が湧いてくるような気がした。


「な...なんだこれ!」


 俺は何とも言えない不思議な感覚で言葉は出なかったが凄かった!やがて光が収まると...

スマイルが話し出した


「君には透明になる魔法と魔力を与えた」


「ま、魔力?」


ゲームでしか聞いた事のない言葉だ。俺は疑問に思いながらもそう言葉を零すと…


「簡単に言うと魔法版スタミナっす!最初は少ないっすけど魔法を使えば増えていくっすよ!」


へぇ~なるほど~ってちょっと待て!!!俺は透明人間の力にするとは言ってないぞ!

急いで俺はスマイルにその事を言う。


「なあ神様!俺は聞いたけどこれにするとはまだ言ってないぞ!」

 

 折角の魔法だ。

水や電気、炎とか色々考えて決めたかったのに!この野郎勝手に決めやがって!

俺は反論するために理由を考えているとスマイルが何か言ってきた。


「その魔法は強力な上に結構レアな魔法なのでそれでいいと思うっすよ!」


「えぇ~~レアか……ならまあ……いいか…」


俺は腑に落ちないが、今考えたら炎出すくらい、異世界では当たり前の可能性があるからこれでいいかと納得する。


「兄さん!私はとっくに決めているよ!私は"超能力"が欲しいな!」


サグメは自信満々に欲しい力を俺とスマイルに言った。

超能力か、確かに無難で色々と汎用性あり、何より魔法らしいというか使ってて楽しそうだな!使い方によっては、相手の動きを封じてその間に俺が透明になって金品を奪い取る...女の子だったらあんな事も…クックックッたっぷり稼げそうだぜ。俺は早速悪だくみ作戦を立てていたら、スマイルがサグメに少し困惑をしていた。


「超能力と一括りに言っても種類が多いっすよ~私が思うに物を浮かしたりする代表的な”念力”でならあげれるっすよ!」


「うん!それが欲しい!」


そういった瞬間サグメも体が白く光りだし、不思議そうな、でもワクワクしてるような顔をしていた。正直超能力が魔法と言えるのかが疑問だが、まあ細かい事はいっか。


こうして俺たちは能力も付与してもらい、いよいよ異世界に旅立つ準備が出来た!

これから行く場所は未知の世界!何も知らない土地に旅立つ訳だ。

今思うと本当に妹が居てくれてよかったと思う。俺一人だったら一体どうなっていた事か...

いや!そんな事考える必要はもうないな!俺にはサグメが居る!あいつと一緒ならどんな困難も乗り越えられるだろう。

俺は期待と楽しみを胸に、そっとサグメの後ろ姿を見つめた────────




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