2話 なんだ、この変態っぽい神
「君達まるで恋人のように仲がいいっすね!!!」
突然、体がムキムキそうな情熱的な男の声が反響して聞こえてくる
声の主が誰か、俺達2人は周りを見渡すがあたり一面綺麗なお花が咲いていたり、空を見上げると透明っぽい神秘的な鳥が飛んでいたり天使のような翼の生えた人が飛んでいたりしていた。
「なあサグメ…今思うとここめちゃくちゃ綺麗だな!しかも翼が生えてる人間もいるぞ!」
「私もそれ思った!まさか死んだ世界がこんな綺麗なんて…ここってやっぱり天国なのかな~兄さん!」
「天国で間違いないな。おいサグメ!俺達も空を飛べるか試してみるぞ!」
「あはは!いいよ!」
俺達2人はすっかり死んだことを忘れてまるで無垢な子供の用にはしゃいでいた。
そりゃそうだ、誰だって死んでこんなに綺麗な景色や見たこともない生物が広がっていたらはしゃぎたくもなるはずだ。
「ハッハッハッハッハッ!二人とも元気そうでなによりっすな!」
俺達2人ははしゃいでいると背後から体育会系の熱血教師らしい男性に話しかけられ振り返った。
そしてその声の主を見た瞬間まず目に入ったのは───
「な…なんて素晴らしい筋肉の付き方だ…こんな筋肉漫画でしか見た事ないぞ…まるで芸術だな」
俺は思わず無意識だがその芸術的な筋肉をつい褒めてしまった。
「足の指先から脳みそまで筋肉でできてそうだね…冬でも服着なさそう」
サグメの場合褒めてるのか貶しているか分からないが……この声はここに来て”最初”に話しかけてきた男で間違いないだろう
こちらが質問しようとしたが先にこの脳筋ぽっい男は喋りだした。
「この私のスンバラシイッッ~~”家族”を芸術と言ってくれタ事は賞賛に値するッッスヨ!」
俺はこの男の自分の筋肉を家族呼びするこの熱血な後輩感のある喋り方をする男をヤバイ奴と思い苦笑してたら、サグメが俺の腕に抱きついてきた。
顔を見ると分かる。こいつもどうやら俺と同じ気持ちらしい。
「なんか、あなた怖いです」
こいつの目は本当に怖そうに見ている。俺は言わなかったがサグメは本人目の前にストレートにそう言った。サグメは本当に本音をズバリと言う時があるよな~まあおもろいから見てる分にはいいが
「ウッッッソォォォ~こう見えて優しさと話しやすさが売りの死神なのに~~」
俺は聞いた瞬間鳥肌と冷や汗がドバッと滝のように出始める。さっきこいつ……いやこの神様…死神と言ったか!?
急いでサグメに目を合わせるとサグメも腕に抱きつく力を強め俺と同じく少し震えだしたのが分かる。
てか、普通死神って黒いコートにガイコツで鎌持ってるような、そんな姿だろ! なんだよ...このマッチョが死神って...
俺は嫌な予感をした為、焦りながらも冷静に頭をフルで動かし、深呼吸を深くすると…
「すうぅ────よしっ!」
「なんて~素晴らしい!筋肉なんでしょうか!!!神様は家族と呼んでいましたね!やっぱり人間と比べ物にならないな!ちなみにお名前とかあるのでしょうか!?」
そうだ。相手がヤバいと感じたら俺たちに出来ることはご機嫌取りだ!もし、「今からあなたは地獄に行きます。」とか告げられたらそれこそ本当に人生の終わりなのだ!
俺の行動を察したのかサグメも……
「そ、そうですね!兄さんの言うとうり筋肉様にお名前とかあるのでしょうか~あるとしたら驚くほどのご立派な素敵な名前なんでしょうね!」
俺達は必死に目の前にいる神の機嫌取りを行ったが───
「ハッハッハッ!私を死神と聞いて怖気づいたっすか!!!」
なんだか喋り方のせいでバカにされたような気がして腹立つがそれで済んだら安いもんだ。
「安心するっすよ~~勘違いされやすいっすが、決して地獄行きとか言ったりしないっすよ~私は君たち二人を案内しに来たっすよ~」
そうか...よかった、本当に良かった~
俺達2人は地獄行きとかひどい事をされないとわかった途端、胸を撫でおろし安堵した。”案内”と言っていたがそれ次第ではまた震える羽目になるが...
「じゃあ、遅くなったが説明するっすね!改めまして、私の名はスマイルって名前っすね~死神なのに笑顔!行きますよ!スマイルマッシィング!!」
スマイルがそう叫ぶと胸の筋肉を使って笑顔のスマイル顔を作り披露した。
一発芸なのか、確かに凄いとは思うが......正直筋肉の笑顔は気持ち悪い......
「…………」
「…………」
俺達2人は茫然としていた、サグメもやはり俺と同じ気持ちなのか死んだ目をしている。
俺はさっきサグメが言っていた事に理解が出来たので妹の肩を組み小声で......
「俺もお前の言ってたこと理解できたわ…あの人怖いわ…」
そういうとサグメからも肩を組んできて…
「普通に考えて全裸なのもおかしいし、(パンツは履いている。)筋肉で顔作るとかヤバイを通り越して怖いよね」
小声で俺たちはお互いの感想や気持ちを共感しあっていると、スマイルが割り込んできた。
「こらこら!そこの2人!こそこそ話さない!」
死神のスマイルもにもギャグが受けないと悲しいらしい。顔が少し落ち込んでいたのだ。
スマイルはすぐに気を取り戻し咳払いをすると…
「コホン!話の続きをするっすよ!」
俺達2人も気を取り戻し地べたに座り真剣に話を聞く。
これからどうなるか正直不安だが、もう受け入れるしか道はない。
そしてスマイルは説明を続ける。
「君たち二人は本来の寿命を全う出来ていないのでやり直す権利があるっすよぉ!」
本来の寿命?やり直す権利?疑問に思ったがすぐに答えが出た。
「君たち2人は事故に巻き込まれて亡くなったっすぅ!もし事故に巻き込まれてなかったら2人はこれから先、数十年楽しく穏やかに生きられたっす。
でも今回の事故、たったの一日でその数十年の時間が無くなったっすね!しっかり生を謳歌していない人間が天国に行くのはまだ早いっすよ!」
俺は確かに生を謳歌していないなと、改めて自分の人生を振り返った。
一番は童貞のまま死んだことだ!これは決して許されることではない!
でも、まさか理不尽な死に方をすれば復活出来るとか、神様が居たとか情報量やばいな…
サグメに目を向けるとさっきと違い元気がなさそうだった。そりゃそうか、サグメは俺とは違い友達も多かった。いきなり全員とお別れになったのも思い出して辛いのだろう。
「ハッハッハッサグメちゃん辛そうっすね、君が何を思っているかこのスマイルが当ててやるっすぅ!」
「君はズバリ!お兄さんの蓮君とお別れになるかと思い不安なんすね!」
スマイルがそう言った途端サグメが目を見開いて質問しようとした…しかしそれを読んだのかすぐに返答する。
「大丈夫っすよ!これから言う道二つのうち一つは君たち2人は一緒に居れるっす!!」
サグメはそれを聞いた途端落ち込んでいたのが嘘みたいな笑顔で俺を見てきた。俺ももその笑顔を見たら自然と笑みが零れこう思った。
こいつ────────俺の事好きすぎるだろ!!
「全く、サグメお前って奴はぁ~!」
無性に頭を撫でたくなったので俺はサラサラな綺麗な髪をわしゃわしゃと撫でまくってやった。
「に、にぃ~さんやめてよもー」
サグメは照れ臭そうだったが、うれしそうに喜んでくれた。
うん決めた!俺もシスコンかもしれないが、この最高に気が合う妹…いやずっと一緒にいる相棒とこれからもだ!!!
「本当に仲いいっすね!君たちは」
「じゃあ選択肢を話します。」
俺達はじゃれ合いをやめ、スマイルの方に体を向ける。
「君たち兄妹は離れ離れになり記憶を失うが日本に生まれなおす。もう一つは命の危険性は高いが君たちは一緒に居れて魔法を使える異世界に行く。後者の場合私の”お願い”も聞いてもらう事になりますが、いかがいたしましょうすか!!」
俺達2人は目を合わせるとお互い自身ありげに頷いた。サグメと俺の答えは当然一緒だろう。神からの”お願い”……ろくでもない願いかもしれないが、サグメと一緒に居れて魔法も使えるなら使ってみたい!
答えはもちろん────────
「「異世界でお願いします!!!!!!!」」
俺達2人は息ぴったりにそう叫んだ────────
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