番外編 ずっとこのままで

 もう捨てた思い。そう自分に言い聞かせていた。だってその方が傷つかずに済むから。

 嘘で自分を固めて、悟られないようにした。

 でもきっとあの子はそんな嘘に気づいてしまう。私があの子をずっと見ているように、あの子も私をずっと見ているから。

「ねえ、紗希? どうしたの、ぼーっとして」

「……別に」

 そっぽを向き、みのりの部屋から外を見る。

「紗希って嘘つくの下手だよね」

「嘘なんてついてないし」

 後ろから近づき、抱きつくみのり。

「ちょっと!」

「嘘ついても紗希は可愛いから許す!」

 可愛いという言葉に反応して顔を赤める紗希。それを咄嗟に隠す為、みのりの手を払う。

「何かあったら言ってよ。私力になるから。って言っても絶賛私の方が頼ってるんだけどね」

 笑って流しているが目が笑っていない事に気づく。

 でもそれを口にすることはない。だってそれを口にすればあの子は私が見ている事に気づいてしまうから。

「みのりは頼りすぎよ。もう少し一人で頑張りなさい」

「えー、そんな事言わずに助けてよ〜」

 再度ぎゅっと抱きつくみのり。

 こんななんて事ない日常がずっと続けばいいのにと願う紗希。

 でもその願いはきっと……。

(ずっとこのままで……)


ーーー

本編更新は4月8日です。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る