第34話 EP5 (3) ヒーラー仲間
薬草モリッツデイジーを縮めることに成功したニーモをコロが褒めた。
「やるじゃん、ニーモ。最初にしては上々だな。もう少し小さくなるといいがな」
デイジーの変化を心配そうに見守っていたウォードが気になった事を聞く。
「ところで、それは後で元のサイズに戻せるんだろうな?」
「ウォード心配しないで。それは大丈夫」
ニーモはウォードににっこりと笑った。さらにニーモは他の箱に入っている全ての薬草を三分の一に小さくすることができた。ちょうどその時にザックが目を覚ます。
「お、ニーモ。押し花制作か?」
ウォードが冗談じゃないぞ、といった顔で真面目に言い返す。
「ザック、小型化しただけだ。押し花なんて縁起でもない」
「何でそんなことしてんだ?」
「スペース削減だ」
「削減されてねーじゃん」
確かにケースの中の薬草は小さくなったが、ケースそのものは変化が無い。スペースが改善する訳がない。
「ケースは無機物だから小さくできないの!」
「何本かまとめて一つのケースに入れりゃあいいんじゃねーの? すかすかじゃん」
妥当と言えば妥当なザックの指摘だが、ウォードが否定する。
「だめだ。別種の薬草を同じケースに入れるのはリスクがあるのだ」
「じゃあ草だけを小さくしても意味がねーな」
ザックが言う通りスペースが何も改善されていないのを目の当たりにして、ウォードとニーモは溜息をついた。
「小さいケースをどこかで手に入れるんだな」
ザックが至極最もな意見を言うと、また眠り始めた。
すると見かねたコロがニーモにアドバイスをした。
「レベッカに相談してみたらどうだ? やつならヒントをくれるかもしれないぞ」
「えー? たかだか薬草のケースで?」
「ケースもそうだが、草のサイズもまだ大きすぎる。もっと小さくしないと。こういうのはヒーラーとして成長するトレーニングになるんだ。物事を解決するのにどうすればいいか、ヒーラー同士で相談してできる手を打つんだよ」
コロがこだわりを見せたのでウォードが感心した。
「コロもたまにはいい事言うんだな」
「いつも言っている」とコロ。
「うー、分かった。聞いてみる」
ニーモは仕方なくと言った感じでデバイスを操作してレベッカに連絡をとった。
「あ、レベッカ? ニーモです。元気? ……そう良かった。あの、話があるんだけど時間あるかな?」
ニーモは、はきはきとレベッカと話をしている。以前より口がかなり滑らかになった。特にレベッカとは話しやすいらしい。
「でね、そのケースを小さくするとか、どうにかしてスペースを減らしたいんだけど、いい手は無いかな?…… うん、うん、そっか。そうだね。考えてみる。ありがとう」
話が終るとニーモがウォードとコロに言った。
「あの、レベッカは分かんないって」
ガクッ ――ウォードもコロもずっこけた。
「「分かんないのかよ!」」
「でもね、シオンに訊いてみたら? って言ってくれた。シオンって頭がいいんだって」
ウォードがコロに相談した。
「シオンとはまだ話をしたことがないけれど、いい機会だから一度話をしておくか?」
するとコロも賛成した。
「そうすべきだ。ヒーラー同士のつながりは強い方がいい。例えそれが面倒なやつでもだ」
「面倒なやつって……」
「シオンは少し警戒した方が良さそうだぞ」
「分かった。シオンだけでは無いがな」
ウォードはコロの忠告を頭に入れながらグレーズドケースによる通信連絡先をシオンの箱に設定した。いよいよ第3のヒーラー、シオンとのご対面である。
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