第31話 EP4 (20) クレアのダイエット(痩身処置)

「ふわ~、終わったぁ。みんな今日はお疲れ様。お休みなさい」

 ウォードが言った。


 その時、鋭く低い声がした。

「ちょっと待て」


 はっとした。クレアだ。

「ウォード、何か忘れてない?」


 ウォードは思い出した。この人何か、今日やりたいって言っていたな。


「私! 私のケアを忘れてる!」

「あ~。あの、明日では?」

「だーめ。今やって頂戴。ニーモ! 準備」


「えー、これからやるんですか~」

「これからやるの!」

 やりとりを聞いていたザックは呆れ顔。

 だがもう何も言わない。両手を広げるポーズだけ。


 ◇ ◇ ◇


 クレアは下着姿でグレーズドケースに入った。ウォードとザックはその姿を見ても平然としている。男性としては普通は多少興奮するものだが、今回は反応が無い。クレアはそんな無反応の男どもを見て、少し腹がたった。


「どういう事よ?」


 ウォードがケースの操作を開始した。加えてニーモがクレアのおなかにパワーを加えた。現在考えうる最高の処置だ。クレアの体が変化してきた。しかし……


 ・小さくなってきた。

 ・お腹は凹んできたが、くびれはできない。

 ・お尻の肉も減ってきたが、骨盤の大きさは変らない。


 結果、バランスが悪い。体重は確実に減ったがスタイルがかえって悪くなった。鏡を見たクレアはしゃがんで、落ち込んだ。


「どうしてこうなるのよ……」


 ニーモが呟いた。

「ごめんなさい。何か、上手くいきませんでした」


 ウォードが説明した。

「強制的に細胞をいじるのはバランスがうまく取れないようだな。結局ダイエットで自然に痩せないと上手くいかないんだと思う」


「うるさい!」クレアには慰めにもならない。


 ザックが慰める。

「クレアは今まで通りでいいよ。可愛くてちょっぴり太めで……」

「なっ!」


 クレアのストレートパンチがザックのボディに炸裂した。最後の一言が余計である。ザックはお腹を押さえて崩れ落ちた。


「今日、二度目……」


 ザックのノックアウトで波乱の一日はようやく終わりを告げた。


 ◇ ◇ ◇


 ウォードは学会(具体的にはオーラ博士)に新規の報告メールを送信した。


「オーラ先生、本日の痣の患者の件ではお世話になりました。またレベッカにも急遽応援いただきまして大変ありがとうございました。一つ報告があります。箱とヒーラー(レベッカ、及びニーモ)をうまく利用しますと、皮膚移植が非常に早く、きれいに治ります。おそらくヒーラーがいなくてもグレーズドケースをうまく利用すれば、従来よりも効果的にオペができそうです。別途本日行った処置を詳細にご連絡しますので学会内での検討をお願いいたします。また、今日ニーモと関係が深いと思われる謎の人物に多大なる助けをいただきました。名前はメルと言います。詳細はレベッカに訊けばわかると思いますが、各ヒーラーには指導者のような人物がいるようです。レベッカにもいる可能性がありますのでお伝えしておきます。」


 部屋でずっと待っていたマメが吠えた。

 えさをくれと。散歩に連れて行けと。

 マメの事、忘れていたよ、ごめん。


 ◇ ◇ ◇


 最後にコロが呟いた。

「このエピソード長いな……」


 エピソード4 終わり

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