第26話 EP4 (15) アーシャの痣(あざ)

 ニーモは考えた。(エリックさんの例で脂肪細胞の減少はできたけど、皮膚はどうやってやるんだろ。修復と同じか? 縫合が必要だよね。色を抜くことはできないのかな。移植だと私はできないし。あ、そうだ)


 ニーモはコロに声をかけた。


「コロちゃん」

「何だ?」

「メルを呼べない?」

「またか、もう少し自分で考えてからにしたらどうだ? それから呼んでやるよ」


「えー、ケチね。わかったよ。――うーん、皮膚移植ねえ。あ、そうだ。ウォード、オーラ先生って形成外科ですよね?」

「あ、そうか。先生に相談すればいいのか」とウォード。


「そう。オーラ先生に連絡とってもらえますか? 遠隔になるけどアーシャの痣を診てもらいましょうよ」

「よし、ちょっと待ってくれ。ホテルでメールを見てくる。連絡方法を確認する」


 ウォードはそう言うと道路向かいのモーテルに走って行った。

 ニーモがアーシャに説明した。


「アーシャさん、いいお医者さんがいるんです。あと私の先輩もいますし、大丈夫ですよ。エリックさんみたく、ちゃっちゃって治してあげますよ」


「すみません。ありがとうございます。まさかこんな機会があるなんて」


 しかし、ニーモは甘かった。例え一流の医者でも、ニーモでも、全ての治療がそ簡単にできる訳ではないのである。


 ウォードが戻って来た。


「やり方がわかったぞ。デバイスを貸してくれ」


 ニーモが箱のデバイスをウォードに渡すと、ウォードは一分くらいちょっとした操作をした。 やがて、またオーラ博士と連絡がついた。


「オーラ先生、先ほどはどうも。少しご相談が……」

「やあウォード、どうした?」


 ウォードはアーシャの事を博士に説明し、痣をモニター越しで見てもらった。 オーラ博士は映像でアーシャの痣を良く確認した。


「先生、いかがでしょうか? 治療方法は?」

「そうだな、皮膚移植がいいと思うが、範囲が広いから結構たいへんだぞ。臀部の皮膚を移植するのがいいな」


「その臀部はどうなります?」

「一ヶ月もすれば機能的には治るよ。変色するが、徐々に薄くなっていく。どうする? ノースランドまで来てくれれば施術するぞ」


 ニーモが言った。


「あの、私も細胞を変性したり再生を加速したりできますが、例えば他人の皮膚を移植してもいいんですよね?」


「そうだな。レベッカもできる。早く治したければそれもいいが、やるなら他人の皮膚移植は臀部だけにしておいた方がいい」


「わかりました。こうします。アーシャの臀部から顔に皮膚を移植、臀部は私が再生を試みますが、広範囲すぎて難しすぎたら、他の人の皮膚を移植します」


「そんな他人の皮膚はあてがあるのか?」

「はい、あります」ニーモが言った。

「ウォード、適合するか確認しなさい。」

「はい。分かっています」

「そちらで手術するつもりか?」

「検討します。無理ならまたご相談させてください」


 ウォードは迷っていた。

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