第25話 EP4 (14) ザックとクレア、エリックとアーシャ

 コロがザックに代わってクレアに答える。

「ザックはどこの出身だっけ? 忘れちまったよな」

「エリモアでいいだろうよ」

 ザックは適当に答える。


「両親とかエリモアにいないの?」

「もういないな」


 ザックは残っていたビールを一気に飲み干した。クレアはそれ以上訊くのは止めておいた。ろくな答えが返ってきそうにない。クレアはウォードのクリニックでニーモを連れてやってきたザックとは結構長い付き合いだ。でもザックの事はあまり知らない。


(何で、私は今更ザックの事を知りたがるんだろう。クリニックでのザックはニーモの面倒を見る以外にはたいした事をしていなかった。でもこうして旅行に出てニーモが回復して解放された彼を見ていると、何か気になる)


 ◇ ◇ ◇


 そうこうする内に、ようやくウォードも食事がほぼ終わった。ニーモはコロとじゃれあっている。


 そこにエリックがやってきた。ウェイトレスのアーシャを一緒に連れてきている。アーシャはなぜか、うつむき加減だ。


「ニーモさん、ウォードさん、少しよろしいでしょうか?」

 エリックが話し出した。

「はい。どうしましたか?」

 ニーモがエリックの目を見て訊いた。


 するとエリックが遠慮がちに切り出す。

「あの~、ニーモさんにどうしてもお願いしたい事がありまして」


 一同は静かになった。エリックに注目する。アーシャはうつむき加減のまま。

 ウォードだけはもう何を言うのか察した。ニーモが訊く。

「はい。何でしょう?」


「彼女、アーシャさんの顔のあざを治していただけませんでしょうか?」

「痣ですか……」

「はい。どうかお願いします。彼女、この痣の為につらい人生を送ってきたんです」


 クレアは思った。


(この男、アーシャにぞっこんだな。根掘り葉掘り聞いたんだろう。アーシャもまんざらでは無さそうね。痩せたらいい男になったもんだね。エリック!)


「痣ですか。あの失礼ですが、少し拝見させてもらっていいですか?」

「はい……」

「こちらに来て下さい」


 ニーモは他の客に見られないような場所に彼女を呼び、ウォードとコロと見ることにした。アーシャはしゃがんで髪をゆっくりと上げた。ニーモが良く観察する。


「うん、少し面積が広いですね。生まれつきですか?」

「はい。そうです」

「ウォード、どう思います?」


 ニーモはウォードに意見を求めた。

 ウォードは腕組みをしながら、痣をよく観察した。


「うーん、これは皮膚移植が必要かな。あまり詳しくないけど」

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