第19話 EP4『箱』狂騒曲とウェイトレス(8)

 ニーモがウェイトレスのアーシャに訊いた。


「食事させてあげたいんですけどテーブルの上に乗せてもいいですか?」

「どうぞどうぞ。ナプキンを敷いていただければ大丈夫ですよ」

「ありがとうございます。コロ、いいって」

「むー、ありがたい」


 クレアが、「小さいテーブルとイスが要るんじゃない?」と言った。

 辺りには適当な物が見当たらない。ザックが言った。

「あぐらかけよ」

「やだ」

「めんどくせえやつ。ニーモ、箱のデバイス使えよ。ちょうどいいサイズだ」

「え、これ?」


 ニーモは腰につけてある直方体のデバイスを見た。確かにちょうどコロの椅子に合う。ニーモはデバイスを腰から外してコロのところにそっと置いた。コロが座るとちょうどよい。


「机は?」ニーモが言う。

「要らんだろ」ザックがコメント。

「それは無くても、いい」と、コロ。


 クレアが言う。

「皿とかフォークとかもいるんじゃない?」

「手で食え」

「じゃん!」


 ザックが冷たく言い放つと、コロは背中のバッグから皿とカトラリを出した。そのあたりの道具は自前で持っているらしい。ニーモが言う。


「やる~ コロちゃん」

「ちゃんづけするな。年上だぞ」

「ごめん、コロちゃん」

「ニーモ……」ちゃん付けは止まらない。


 クレアが思い出したように言う。

「コロさあ、ウォードがアトランティス行くのに別の理由があるってさっき言ったじゃん、何?」


 コロが言う。

「アトランティスは彼の故郷だ」


「えっ?」

 みんな驚く。


「まあ、そう言う事だが、何で知ってるんだ?」

 ウォードが白状した。コロが答える。


「少し調べれば分かる。コロボックルの仲間は世界中あらゆるところにいる。情報収集能力は凄いんだ」


「へーそーなんだ。やるねえ」

 クレアが感心した。


 ザックが訊く。

「どうやって情報交換してるんだ?」


「秘密だ」

 秘密らしい。


 コロも加わりディナーは続く。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る