第18話 EP4『箱』狂騒曲とウェイトレス(7)
「これおいしいね!」
クレアが待っていましたとばかりに料理に舌鼓を打つ。
「とってもです。おなかが喜んでいます」
クレアとニーモの箸は進む。
ウォードとザックは雑談に話を咲かせている。クレアはそんなウォードの方を向いて問いかけた。
「ねえ、ウォード」
「何?」
「どうしてアトランティスに行くんだっけ? 鎖国してんでしょ」
すると横からザックが口を挟む。
「鎖国じゃなくて渡航制限だ。あの国は環境や国民を守りたいんだ」
「まあ、簡単に言えば、色々なところで働いてみたいってのが理由かな」
ウォードが答える。
「それなら、なにもあんな遠くにしなくてもいいんじゃないの?」
ウォードはワインを一杯飲んでから答える。
「学会の中での噂なんだけど、アトランティスのある地域では精神病患者が極端に少ないらしいんだ」
「そもそも、アトランティス自体がリゾートみたいなところだから元々患者が少ないんじゃないの?」
クレアの言葉にウォードは頷く。
「それはその通りなんだけれど、少ないながらも地域によってばらつきがある。僕としては、どういう環境が患者を少なくするのか自分の目と足で調べたいっていうのがあるかな」
「ふーん。相変わらず勉強熱心ね」
「医療って本当は治療よりも予防に力を入れた方が効果的なんだ」
ザックも同意する。
「それはそうだろう。病気にならないのが一番だ」
「他にも理由があるだろう」
突然ニーモの方から思わぬ声がした。しかしニーモの声ではない。少しトーンが高いが明らかに男の声だ。三人が声が聞こえたニーモの方を向く。一生懸命食べることに集中していたニーモはキョトンとする。
「ニーモ?」
「私じゃないよ」
「ここだ」
ニーモが足元を見る。コロがいた。ニーモはしばらくコロを見つめてから、ニヤリと微笑みを浮かべてゆっくり片足を上げる。ニーモ、少し顔が怖いぞ。コロが身構える。
「ニーモ、お前まさか踏む気だな?」
「バレちゃった!」
「お前Sだな! 恩も忘れてコロボックルを虐待する気か?」
「冗談よ。踏むわけないじゃない」
そう言うとニーモがコロを持ち上げた。コロは四人にあいさつした。
「やあ、こんばんは」
「いつの間に来たの?」とクレア。
「今来たばかりだ」
「夕食食べる?」とニーモ。
「ああ、頼む。少しでいい」
「どうしよう。テーブルの上で食べるよね?」
「お店の人に聞いて見な」クレアが言った。
ニーモはアーシャを呼んで尋ねた。
「あの~。この子なんですけど」
「この子って言うな!」とコロ。
「あらっ、可愛い」
コロを見たアーシャがそう言ってコロの頭を撫でた。
「やめろ! 猫じゃないぞ」
どうも、コロは誰からも
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