第13話 EP4『箱』狂騒曲とウェイトレス(2)
他の3人が『ラサリア』で待っている時に、ウォードはモーテルの部屋にいた。彼が所属している精神神経学会からの緊急連絡内容を確認していたのだ。その要旨は、次のとおりであった。
・未知の箱である通称グレーズドケースが世界各地で相次いで発見されている。
3月23日現在で14個。
・ウォード氏の報告にある精神病患者への治療と同様な治療効果が他に既に5例程度確認されている。おそらくその治療実績は今後指数関数的に増えていくだろう。
・その内一例はウォード氏のケースと同様、回復した女性に特殊な能力が確認された。これに関わったのは形成外科の権威であり精神科医でもあるオーラ博士である。
・学会はガラス箱特別研究会を設置することを決めた。ついてはウォード氏に主幹会員として参加していただき研究会をリードしていただきたい。一次回答は3月24日までにいただきたい。
ウォードは思った。グレーズドケースをどこの誰が作ったのかはわからないが、意図的にこの世界にばら撒いている。
たまたまザックと僕がその使い方に最初に気が付いたが、ピクトグラムや回路構成から、おそらく誰でも解読できるように作られているものだろう。
仮に僕らが気が付かなくても、他の医者や科学者が気が付くのは時間の問題だった。
ウォードは研究会への参加を承諾することをメールで返信した。仕事はリモートで可能だとあったので旅は問題無く継続できる。
ウォードは、オーラ氏と積極的に連絡を取りたいとも付け加えた。治療された患者のケースを詳しく聞きたいのである。
ウォードはPCをバンと閉じると、レストランへ駈けて行った。
◇ ◇ ◇
ザック達は食前の飲み物や軽い食べ物をつまんで、ウォードが来るのを待っていた。
「ウォード遅いなあ。まさか寝ちゃって無いよね?」
クレアがぼやいた。
「メールの確認に時間がかかっているんだよ。すぐ来るよ」
「そんなの夕食終わってからにすればいいのに」
「やつも仕事先に終わらせてお前と飲みたいんだろうさ」
「あら、そう言う事? またまたザックったら」
クレアはウォードの事がまんざらでもない。本人にそんな態度を見せたことはないが。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます