第11話 EP3(6) モーテルにて [解決!]
「魔法だ!」ウォードが叫ぶ。
「違う。細胞変異だ」コロが否定する。
「ニーモ、すごいよ、あなた」クレアが賞賛する。
男の体は一分ほどで世の中の平均的な体形まで細くなった。
ニーモがそっと体を離して男に尋ねる。
「大丈夫でしたか?」
ついさっきまで巨体だった男は目をパチクリさせ、ゆっくりと立ちあがった。
痩せたら結構イケメンであることが分かった。足腰も治っている。
「ええ。あの、これって……」
「私はニーモと申します。医者ではありませんが治療ができます。あなたのお名前をお聞きしてもよろしいですか?」
「エリックです」
「エリックさん、あなたの細胞を少し変質させてもらいました。脂肪分は飛ばしました。あと下半身の関節を修復させてもらいました。もう車いすがなくても自力で歩けるはずです」
ウォード達は誰がしゃべっているのか理解ができなかった。これがあのニーモなのか。コロだけが当たり前という顔をしている。治療されたエリックは説明が全て終わる前に涙を流し始めた。
「少し変質どころか、こんなに体をスリムにしてもらって……。奇跡だ、あなたって…… いや、まず本当にありがとうございます。感謝してもしきれません」
「あの、これで当分は問題ないでしょう。あとはリバウンドが起きないように食生活を見直していただく必要があります」
「はい、そうですね」
「これから胃の細胞に少し仕掛けをさせていただきます。もう一度処置しますね」
ニーモはそう言うと、立っているエリックの腹部にまた両手をかざし光を当てた。
照射が終るとニーモは自分の体を少し屈めてエリックの腹部を優しく抱いた。
それが終るとニーモは言った。
「エリックさん。たいへん申し訳ありませんが、運動などをしていないときは胃が小さくなるように胃の細胞に仕掛けを入れました。これで本当に体が必要としている時以外は胃が食物を受け付けにくくなるでしょう。一年くらいはこの作用が働きますので、その間に適切な食生活が身に着くようにしてくださいね。一年経つと通常の胃に戻りますから」
「はい、わかりました。ありがとうございます」
エリックは無事103号室に入ることができた。もう彼の特注の車いすは必要が無くなった。彼の心の重さも体の余分な細胞と共に一緒に消えて行った。
こうして、モーテルでのトラブルは無事解決したのだった。
そしてこれがニーモのヒーラーとしての第一歩であった。
マスターヒーラへの修行の道が始まったのである。
エピソード3 終わり
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます