番外編②金運の上がる石?

 テーブルを挟み、春兎とユリアンが会話していた。


 「なぁハルト、聞いてくれ」

 「何ですか?」

 「実は──」


 そう言って、彼女はポケットから黄金色の綺麗な石を取り出した。


 「なんとこれに触れば、運がアップするらしいぞ」

 「運がアップ?ちなみに何の運があがるんですか?」

 「え…」


 俺の質問に、なぜか彼女は固まった。


 「それは…アレだ」

 「アレ?」

 「金運が上がる」

 「……」


 俺は疑惑の目で彼女をジッと見ていた。


 「あの、ついてませんか?」

 「……」


 彼女は黙ってしまった。

 そこに日和がやって来た。


 「あれ?二人とも何してるの?」

 「日和、実は──」


 俺はこれまでのことを日和に話した。


 「金運が上がる?多分本当だよ」

 「え、マジで…?」


 未だに疑っている俺を見ながら、日和は《スキル》を発動させた。


 「私の心眼しんがんで見たから間違いない」

 「あっ、そうなんだ……」


 俺はユリアンの方に話しかけた。


 「あの…疑ってごめん」

 「え、いや気にしてないから良いよ」


 ユリアンは笑って許してくれた。


 「…ちょっと外の空気吸ってますね」


 俺は少し外の空気を吸うため、玄関に向かった。

 その後ユリアンと日和が部屋に残った。


 「ユリアンさん」


 俺が出て行った後、日和がユリアンに話しかけた。


 「もうちょっと、マシな"嘘"つきません?」

 「……」


 日和の言葉で、ユリアンは再び黙ってしまった。


 「考えておく…」

 「頑張って」


 最後に日和から応援されたユリアンは、その後部屋に行って、嘘の研究をし続けた。


 「…心眼しんがんあって良かった」


 日和は自身の《スキル》に感謝しながら、その場でホッとため息をついた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る