鬱
目が覚めて胃がいらいらしていた。頭も重い。
気分がすごく悪かった。
怒り、悲しみ、苛立ち、悔しさが去来しては消え、またループする。
ああ、今日はあの日か。
女の日ではないよ。
鬱の日。
それもこれも全部変な夢を見たせいだ。
それは目的の駅に辿り着けない夢。
降りようと思ったら邪魔をされた。
電車が目的の駅を通り過ぎる。
反対車線だった。別の沿線だった。
皆が私の邪魔をする。誰も助けてくれない。
皆が私に怒る。そして皆が私を嘲笑する。
皆とは過去の同級生達。
大人に守られた同級生達。
私が悪いなら皆が正しいの?
なら皆と同じことをしてもいいの?
そうすれば正しいの?
けれど駄目だと言われる。そして怒られる。
なぜ? どうして私は駄目なの?
善悪とは何?
数で善悪を
言うことを聞かない奴が悪い。
皆と仲良くしない奴が悪い。
悪い奴とは仲良くしない。
気持ち悪い。
もういいや。
めちゃくちゃにしてやろう。
いいよ。
出るとこ出ても。
ハハッ。
でも私は逃げた。
弱虫だから。
悔しい。
「苦しい」
思い出すと腹が立つ。発散できぬ苛立ちが私の心を掻きむしる。
「嫌な夢だ。嫌な……夢だ」
2度も同じことを弱々しく呟く。
いつからだろう。寝るのが嫌になったのは。
夢はいつも悪夢。
過去からの来訪。
もしくは不幸。
幸せな夢を見たい。
けど私には想像力がないのか、それとも無意識で否定しているのか。
どんなに頑張っても過去は変えられないからか。
逃げても過去はなくならない。
どんなに自分を変えても。ガワを
大きく息を吐く。膨らんだお
それでもお腹のむくみは取れることなく、留まり続ける。
スマホで時刻を確認すると昼の11時だった。
私はスマホを持って、自室を出る。
キッチンに行き、コップに水を入れ、一口飲む。銀紙のような味がした。そして私は残りの水を捨てた。
リモコンでテレビを
選んだのはバラエティ。
テレビから聞こえるタレント達の声が隔たりがあるように聞こえる。
遠く、そして私と関係のない世界のようだ。
彼らの笑い声を聞くと溜め息が出る。
スマホでSNSを確認。
言っておくが私はエゴサはしない。というかしたくない。メンタルをやられるから。
ガラスのハートとは言わないが、メンタルは強い方ではない。
今だって、きついんだから。
「うぅ」
アンチに近いコメントがあった。
上から目線の得にもならないコメント。
私はアプリを閉じて、スマホをリビングのテーブルに置く。
そして体を横に倒す。硬めの座布団を折って枕代わりにする。
テレビ番組はバラエティから報道番組となった。震災復興の話が報じられる。
被災者が語る。
ボランティアが懸命に働く。
コメンテーターが激励を送る。
とても素晴らしいことかもしれない。
でも、今の私にはどうでもいい。
だって私が救われたいのだ。
でも、それは言えない。
甘えだから。
口にすれば、甘えだと怒られる。情けないと言われる。世の中にはもっと大変な人がいると言われる。
でもさ──。
だからなんだよ。甘えてはいけないのか。
苦しいものは苦しいんだ。
失敗したくない。恥をかきたくない。好きなことをしたい。嫌なことはしたくない。
とんだ甘えだ。大の大人が何を恥ずかしいこと言っているのか。
バカバカしくて自嘲してしまう。
でも、それが人なのではないか。
「お
自分で呟いといて、それは本当なのかと訝しむ。
だってムカムカしているんだもん。
もしかしたら誤診かもしれない。
でも、何かをお腹に入れたい気がした。
ただし、重いものはいれたくない。
麺類は重たい。白米は味気がない。パン類はねとっとしている。今はそんなイメージがある。
私は何が食べたいんだ?
冷蔵庫を開けるとスティックのりんごゼリーがあった。
それを一つ取り、冷蔵庫の前で開封して中身を
甘酸っぱい味が口に広がる。すると食欲もきちんと復活する。
何かをお腹に入れたいではなく、なんらかの味を感じたいへと。
納豆と魚肉ソーセージ、インスタントの味噌汁を食べることにした。
りんご味が残る口に納豆が入る。
味も匂いもミスマッチ。
「失敗した」
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