第2話 強武器ゲット

泉に来ると俺は水辺まで近寄った。


そこでしゃがみこむと犬を両手で抱えながら足を水に付けさせた。


チャプン。


水に血の色がついていく。


しばらくするとピカーッ!と泉が光を放って犬の足の怪我を治していく。


「おぉ、すげぇや」


犬の怪我が治った。


犬から手を離すとペタペタと歩き始める。


そして、


「わん!」と吠えた。


どうやら元気になったようだ。


(それにしても良かったなぁ、この泉が原作通り回復の効果を持っていて)


この泉、ゲーム世界に登場する宿屋と同じような効果があって使えば回復するようになっている。


回復アイテムなんかもケチりたい序盤のありがたい味方だった。


分かるよね?


モンスターに殴られて怪我する度にここまで戻ってきて回復するんだよ、ね。


そんなことを思い出すと少し懐かしくなってきてしまう。


「ハッハッ」


俺の足に前足でしがみついてくる犬。


どうやらかなり懐かれてしまったようである。


「このまま俺に着いてくるか?」

「くぅん!ハッハッ」


しっぽを振りまくってる。


どうやら、ほっていかれたくないようだ。


(連れていくか)


俺はそう思い犬の頭を撫でながら話しかける。


「連れていくにあたってとりあえず名前を決めたいところだな」


う〜ん。


そうだなぁ。


よし。


「お前の名前はキャンディにしよう」

「わん!」


自分の名前を理解したようだ。


(原作でも賢かったもんなぁ)


ちなみに原作で犬を助けているとストーリーが進めば主人公のピンチに駆けつけてくれるようになる。

超激アツ展開なのだが、RTAプレイヤーからはとうぜん不評だ。


助けるのも時間のロスだし助けに来た時は敵の行動パターンが狂うから、だそうだ。


こんなにかわいいのにかわいそうだよなぁ?


「さてと」


立ち上がって俺はとりあえずこれからの方針でも考えようと思ったんだが。


「くぅん。くぅん」


キャンディが俺の足に力を込める。


まるで、着いてきて欲しい、と言ってるようなそんな感じだった。


「うん?なんかあるのか?キャンディ?」

「わん!」


タッタッタッ。


走っていくキャンディを俺も追いかける。


泉の水際を走って、グルーっと半周する形で反対側にやってきた。


原作では来たことが無かったが、そういえば


(この泉には噂があったよな)


なんでも、泉の周りには強い武器が埋まってる、とかなんとかそんな噂があったな。


なんか、特別な能力があれば埋まっている武器を見つけることが出来るらしいのだが、その能力を手に入れるより、他の能力を手に入れた方が強くなれるっていう本末転倒感があったんだよな。(ちなみに埋まっている場所はランダムであり、埋まっている武器もランダムなので、手に入れるには能力を獲得するしかない)


そんなことを思い出しているとキャンディが地面を掘り始めた。


「わん!わん!」


前足でガシガシ地面を掘っていく。


俺はその様子を暖かい目で見ていると、やがて。


ガチン!


キャンディの爪がなにか硬いものに当たったような音。


「わん!」


キャンディが穴の中を指さした。


「なになに?なんかあるわけ?」


大して期待することも無く穴の中を覗いて見たのだが。


穴の中には黒い武器?みたいなのが入っていた。


「なんだ?これ」


すっ。


穴の中に手を伸ばしてそれを掴んでみた。


グッ。


力を込めて穴の中からそれを引き出してみた。


ずぼっ!


穴の中からそれが出てきた。



名前:鉄刀

ランク:B

攻撃力:+300



「おぉ……まじで?」


この泉から出る武器のことは一応穴掘り武器って呼ばれてたりするんだけど、その穴掘り武器で1番の当たりとされている武器が出た。(この武器でストーリー終盤までいけるくらい強い武器)


これはかなり嬉しいことだ。


「キャンディ!ナイス!」

「わん!」


キャンディの頭を撫でてやることにした。


いい子だぞ〜。


それはそれとして、俺は地面から出てきた鉄刀を泉で洗うことにした。


地面に埋められていたせいで土まみれで汚いからだ。


バシャバシャ洗ってから俺は刀を近くに置いた。


かなり綺麗になった。


それからキャンディを見た。


「?」


舌を出して不思議そうな顔で俺を見てくるキャンディ。


「穴掘ったせいでまた汚れたよな。もう1回泉で洗おっか」


「きゃうん!」


俺はキャンディの体を掴んで泉でもう一度洗っていくことにした。


「くぅ〜ん」


とても気持ちが良さそうだ。


正直言うと犬なんて飼ったことがないが、この反応を見るに洗い方は間違ってなさそうだ。


「よし、だいぶキレイになったな」


キャンディも洗い終わったので俺は次の方針でも決めることにした。


(やはり原作と同じようにこの村を出るべきなのかな?)


原作ではこの村に滞在する時間は作中時間で数日である。


んでもってこの村にはなにもない。


あんまり長居する必要が無いんだよな。


それはおそらくこの世界でもそうなので、とりあえず出る方向で考えることにしよう。


さて、方針は決めたことだし、


「キャンディ。今日の宿屋でも探そうか」

「くぅん!」


キャンディがジャンプして俺の胸に抱きついてきた。


「よしよし、いい子だぞ〜」


俺はキャンディを抱っこしながら少し疑問に思った。


「武器は原作通りの扱いが出来るのかな?」


今の俺はキャンディを抱っこしていて両手が塞がっている。


武器を手で持って移動できないので疑問に思ったのだが。


ちなみに原作ではアイテムポーチなるものが存在していて、武器やアイテムはそこに収納可能だった。


ゴクリ。

少し緊張しながら俺は呟いた。


「アイテムポーチ」


すると、目の前にモヤモヤとした渦巻きが現れた。


そしてモヤモヤの上には


【アイテムポーチ】


という表示があった。


「とりあえず安心だな」


俺は鉄刀をアイテムポーチに入れた。


それから村の方に戻っていくことにした。


村の方に戻る頃には夕方になっていた。


ぐぅ〜。


お腹が鳴ってきた。


「腹減ったな」

「くぅん」


俺はアイテムポーチを呼び出すことにした。


アイテムポーチからは色々と確認ができる。


その確認できる項目の中にはこういうものもある。



所持金:10000Z



Zというのはこの世界の通貨である。


原作でもそうだったのだが、転移特典としてお金を持っているらしい。


この世界でも同じなようだ。

とりあえずこれを使い食事をしようか。

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