第2話 異能の力
この世の中には、絶対にありえないような難事件というものがある。難事件は、常人には考え付かないようなトリックが隠されているため、そうなりえているのではないか。実はトリックなんてものはなく、天才の突拍子のない天才たりえる才能によって引き起こされているだけであるのがほとんどではないのか。常人だからこそ事件を解決することができない。実は思いつかないアプローチが存在するからだ。なら、天才の中の天才である家達シャーロならどうだろう。天才なら天才の起こした事件を解決できるのである。そう、僕ならね。
そんなことより、君らは知っているのだろうか。都市伝説の数々のこの一端を。あるところに一人の男の子がいた。彼は、テレビではなかなか有名人であった。そうなっても仕方ないものである。彼は、心を読むことができたんだ。そんなことがあり得るのかって。
最初は、皆どういうトリックだ、やらせだ、と罵ってきたけど、もちろんテレビで見ただけの人間はそう思っているんだけどね。だが、ノンフィクションである世界で彼に関わった者たちは、彼を悪魔の子と呼んでいた。まぁ、仕方のないことだよね。人間って、自分の常識で測れないようなものを見た時、それを異端の者として扱う。そして、彼は研究機関に入れられ、研究者たちはその異端の力を調べた。すると、彼には脳の著しい発達がみられた。 それによって、彼の異端の力が備わってっしまったのだろうと。それを神からの贈り物、『ギフト』と呼ばれた。
まぁ、そんなこと知らないよね。結構死語みたいなものだし。この天才と呼ばれるものはギフトを持っているに違いないんじゃないかな。そう、実は僕もね。そりゃ、僕も天才だからね。
だが、そんな僕でもなかなかの難事件を目の前にしている。天才であり、ギフトも持っているのだが、どう頑張っても解決できる方法を思いつかないのである。
「あの、そろそろ・・・・・」
僕は、東都銀行の窓口に立っている。僕の隣には中学生ぐらいの身長の女の子が立っている。そう、彼女は僕の助手でもある和登ソーカである。僕は二十歳になったばかりだが、彼女も実は同い年である。そして、僕らの前でおどおどとしているのは、銀行員の女性である。こちらの手違いとは言え、そうせっかちになる必要なんてないのではないか。
「そう焦らなくていいじゃないか。あまりせっかちになると、せっかくの美人が台無しになる」
「焦るに決まってるじゃないですか!」
僕はせっかちにならなくてもいいようになだめてもみたが効果はなさそうだ。
「シャーロ、まだ?おなかすいた」
ソーカは暇そうにこちらを眺めていた。
「いや、だから後ろをもっと気にしてください。そんな海外の銀行からこの銀行に送金出来てなかったのなんて、どうでもいいじゃないですか」
なぜかこちらの要求である、預金のことよりも大事なことが後ろにあるような言い草だった。こちらとしては、今ここでお金をおろせない事実より気にすることなんてないのだから。今日の宿代、食事代とお金を持たざる者の末路は痛いほど知っている。
「金が下せないことより気にすることなんてあるわけない」
「いや、この状況でまだそんなこと言っているんですか。とりあえず後ろを見てくださいよ」
僕はしょうがなく後ろを向いてみるのだが、そこには縛られている客とみられる集団。それにサブマシンガンであろう銃を客に向けている目出し帽をかぶっている体格的にも男であろう人物が三人。そして、まさか僕の後ろには最も屈強そうな男が背後から拳銃の銃口を向けていたのだ。
「そういうことか。だから、君はそんなに焦っていたのか」
「いや、なんでそんなに冷静なんですか!」
僕は銀行員に振り向き、謎が解けたかの如く冷静な顔で見てみたのだが、逆になぜか癇に障ったようだ。
HIDDEN GIFT 虎野リヒト @konorihito
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