第7話
彼女が帰宅し、電灯のスイッチを入れる。
パチッと音がして、部屋が明るくなる。
部屋には簡素なベッドに、ドレッサー等少しの家具が置いてあったが、
片隅にあるおびただしい数の箱だけが異彩を放っていた。
その大小様々な箱の中でも、一際大きい箱。
彼女はそれを抱えると、車に積んで運び出した。
しばらく車を走らせると、町明かりが消え、海が見えた。
星々が輝く中、月以外の輝きは大海原が飲み込んで、天と地が混ざり合った闇の中に迷わないよう、車のライトが照らして道を走る。
やがてそのライトも消され、わずかな月明りを頼りに、彼女はその箱を持って車から出た。
「先生、綺麗ね。まるで宝石箱みたい」
満天の星空が、大事そうに箱を抱える女を照らす。
「やっぱり彼で試して良かったわ。先生は上手くいったもの」
「でも彼も先生とやることは同じだったわ。先生は彼とは違うって言ってたけど。蓋を開けたら同じね」
ただ波の音だけが、わずかな風に混じって聞こえる。
「先生は中身が大事って言ってたけど、愛してたのは外側だもの。でもこうしてよくわかったわ。どちらも箱なんだって」
そう言うと、彼女は歩いて海の近くに寄り、箱をスッと海に放り入れた。
「ありがとう先生。先生のお願いもちゃんと叶えられました」
ズブンと箱は海に飲み込まれ、ゆっくりと闇に消えていった。
先生の箱 黒墨須藤 @kurosumisuto
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