森の中で

多肉ちゃん

第1話

「ねぇ、ねぇ、これなんだろう」

ウサギが切り株の上の箱を指さして言いました。きれいに装飾された小さな箱。

「見たことないな」

「何が入ってるんだろう、開けてみようよ」リスもサルも興味津々。

「ちょっと怖いな、誰か開けて」たぬきはしり込みしてそう言った。

「俺が開けるよ」狐が切り株に上がると箱のふたを開けた。

♬♬♬

「ギャ!」動物たちはいっせいに逃げ出した。しかし暫くすると音は止まった。

おずおずと戻ってきた動物たち、キツネが箱のふたを閉めた。

もう一度開けたが今度は何の音もしなかった。

「なんなんだよこれ」

「何の音だったんだ」

口々に動物たちは言いあった。

「おいおい何を騒いどるんじゃ」

「あ、フクロウのおばあさん。あのね、この箱から変な音が出て止まったの」

「物知りのおばさんならこの箱がなんだかわかるんじゃない」

動物たちは口々に訴えた。

「どれどれ、う~ん、これは人間の持ち物だね。オルゴールとか言ったかな、おい、そこのキツネ、ふたが開かないようにしながら、箱をひっくり返してねじを巻いてみな」

キツネはタヌキに手伝ってもらって箱をひっくり返した。

「ネジってこれ?」

「そうじゃ」キツネはねじをゆっくりと巻いた。

「これ以上巻けないよ」

「そうしたら箱を元に戻してふたを開けてみな」

キツネは箱を元通りに戻すとふたを開けた。

♬♬♬、♬♬♬

「これはな、人間の国で音楽と言われているものじゃ。オルゴールと言うのは箱の中に仕掛けがあって、ねじを巻いてふたを開けると音楽が鳴るようになっておる」

暫くすると音は止んだ。

「ネジが戻り切ると音楽は止むんだ。また巻けばまた鳴らすことができる。それにしても誰の落とし物かの」ふくろうのおばあさんはそう言った。


遠くから人の話し声がしてきた。足音が近づいてくる。動物たちは慌てて隠れた。

女の人と、女の子が連れ立ってやってきた。

「ねえ、どこに忘れたの?おばあさまがくださったんでしょ?」

「この先の切り株で一休みして聞いたからその時だと思うんだけど、あ、あった!」

女の子は切り株に駆け寄り、箱を手に取った。そしてネジを巻いてふたを開けた。

♬♬♬、♬♬♬

「よかった、壊れてない」

「見つかってよかったね、これから大事にするんだよ」

「うん」

そう言って、二人はオルゴールを持って森を出て行った。


「あの子の物だったんだね」

「よかったね」

動物たちはそう話し合った。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

森の中で 多肉ちゃん @tan1kuchan

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ