第26話ナンパお断りします

 人々の視線を一身に浴びながらシンとバキュアは国境付近にある検問所まで談笑しながら移動する。


 「よぉ、そこのいかしたねーちゃん達。俺らと良いことしよーぜ。」


 「すぐそこに、良い感じの店があるんだ、だからな?」


 ざ、テンプレという雰囲気を醸し出したさして顔が良いというわけでもない男2人が話しかけてくる。


 (うっへー、面倒なのに絡まれた。)


 バキュアとシンは目配せし、頷き合う。


 「えー、おにーさん達みたいな素敵な人たちに誘われるなんてー、僕たちついてるなー。」


 「あっ、僕っ娘なんだ。かわいい~ね!そっちのねーちゃんは無口だけどそこがまた良いって言うか…。」


 ((キッモ))


 バキュアとシンは内心辟易していた。だが表面には出さない。にこやかに?笑いながらそれぞれ男の両わきに近く。腕を組むふりをして首に手を掛ける。


 「…な、なぜ…だ。」


 やっと言葉を絞った男の口からは当然疑問が漏れる。バキュアの方の男は既に息をしなくなっていた。


 「シン、さっさとしろ。急がないと日暮れまでに国境を越えられないぞ。」


 「もー、わかってるよ!それっ!」


 ゴキンッ


 掛け声と共に男の首をへし折る。


 「お待たせー。ささっ、行こー」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 程なくして検問所が見えてきた。あれから着くまでに3組のナンパに絡まれた。


 「やっと着いたね。思ったよりも遠くて着かれちゃったよ。」


 「道中やかましい奴らが何人かいて時間を食ったからな。」


 検問所は石のトンネルをくぐるタイプだ。高さは30mくらいだろうか。ちょっと厳つめの門番が四人ほど裏と表の両わきにそれぞれたっている。その内の2人が近付いてくる。


 「そこの綺麗なお嬢さん方こんな時間にどうしたのですか?」


 下卑た内心を隠そうとしない目が語る。


 (どうしてくれようか)と。


 「僕たちは検問を通りたいだけなんです。通していただけませんか?」


 予定どおり少女達から奪ったドッグタグを渡す。警備兵はまじまじとドッグタグを見つめる。そしてなにを思ったのかそれを地面に落とした。不思議に思いながらも、といった雰囲気を出しながらシンが拾うためにかがむ。その瞬間上から首根っこを捕まれる。抵抗することは可能だがあえて抵抗しない。バキュアの方もシンの行動を見てか抵抗していない。そうとも知らず警備兵は舌なめずりをする。


 「こんな上玉なかなかいねーぜ。どーせこの国から出るなら俺らがここで何かしたって証拠さえ残さなければばれないはずだ。」


 シンは内心毒づいていた。


 (またか。この格好をしてから良く絡まれる。失敗したな。せめて顔を隠すべきだったなー。)


 押し倒されて空を仰ぎながらシンは半眼で警備兵を見つめる。


 「なんだその目は。もっとそそられるような顔をしろ!」


 殴りかかられるがそれを華麗に頭を左に傾けよける。


 「なんか面白くないや!バキュア、もー良いよ。やっちゃおう!」


 「ああ。」


 「あっ、殺すのはダメだよ!足が着くのは避けたいからね。」


  その瞬間バキュアを掴んでいた男が顎を赤くして倒れる。白目を向いていてものすごくみっともない。シンを掴んでいた手が動揺して手を緩める。その瞬間をシンは逃さない。


 「じゃぁーね!これは夢だったと思って忘れてくれたらうれしーな?」


 あっそれとこれはもう要らないからあげるよ。そう言いシンは服を脱ぎ捨てた。バキュアも倣って服を脱ぐ。そして悠々と歩き出す。もう2人の門番は先程のやり取りは聞こえていなかったようでなんの不審もなくシンとバキュアを通す。


 「やっと越えられたね!さーて、あとは茶葉を探すだけだね。」


 (ついでに目ぼしい人材も確保しておきたい。特に情報に強いやつが良いな。こいつには悟られないように動こう。)

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