第23話情報をもとに
「本当ですか?私たちを本当に、家に帰してくれるんですか?」
シンは答えない。だが、にこりと笑う。少女達はそれを肯定ととらえたのだろう、安心しきったような顔で話し始めた。
「フィロニキアのなにについて知りたいのですか?私たちはただの町娘なので詳しくは知りません。もちろん、可能な範囲で質問には答えます。」
やや背の高い少女が話す。年はシンより少し上の18くらいだろうか。もう1人の少女はシンと同年代のようだ。背の高い少女の後ろに隠れている。だがシンにとってはそんなことはどうでもよく、ただ早く少女達との会話を終わらせたい、そう思っている。
「うーん。そーだなー、まずは国境についてかな。壁があるって話しは知ってるけど、通るときの制限とかって何かあるの?」
「ええーっと、確か身分証の提示が他国に行くには必要だったはずです。理由はわかりませんが私の推測だと他国に犯罪者などを流して国際問題になるのを防ぐためだと思います。」
背の高い少女は存外賢いようだ。シンの状況をかんがみたうえで欲しい情報を選んで話している。使用済みでなければ仲間にいれても良かったかもしれない。もう1人の少女は相変わらず話さない。
「じゃぁー、次はフィロニキアの軍事力はどれくらい?ええっとつまりー、アラゾキニよりも強いのか弱いのかってこと!」
「すみません、そこはなんとも言えません。一介の町娘である私からしたらそんなに大規模な話しは噂程度にしか回ってきません。あなたは、不確定な情報を求めているわけではないのでしょう?」
やはりこの少女は賢い。もういっそ仲間に率いれようか?そう思い始めたシンだがあることに気付く。後ろに隠れている少女の存在だ。シンからしたら欲しいのは背の高い少女だけだが仲間にさそうとなれば2人でないと嫌だと言い出すだろう。それに、目の前で殺したとしても逆効果だ。かえって危険度が増す。やはり諦めざるを得ないようである。
約五秒ほどの沈黙。少女達からすれば生殺与奪の権を握られているため数時間程に感じる緊迫した空間だっただろう。シンが再び口を開く。
「その、身分証のとやらはどこで入手できるの?」
背の高い少女が自分の胸元にかかっているチェーンを取り出す。
「これが身分証です。10歳の誕生日に国から支給されます。」
ドッグタグのような見た目のそれに記してあるものは生年月日と氏名、性別だけだ。シンはニヤリと笑う。少女達はビクリっと震える。
「そっかー。ありがとう!おかげでいい情報が知れたよ。お礼をしなくちゃね?」
「いえ、お礼は要らないので私たちをうちに返してください。」
「もちろんだよ。」
少女達が肩をおろす。安堵して少しシンから目を離した。視界が激しく回り、そしてお互いの目が合う。
「「えっ?」」
少女達の頭は体についていない。なにが起きたかも理解できていない。ただ意識は不思議とはっきりとしている。
一度は誰でも聞いたことがあるだろう。中世フランスで行われていた処刑方法、ギロチン。人道的な方法として多く使われたが実際は非人道的だ。ギロチンで処刑されたものは数秒間意識がある。頭に残っている血液だけでその数秒間をいきることができるからだ。しかし、血が体外に流れるにつれ、激しい頭痛がその人を襲う。だがこの世界にギロチンなるものは存在しない。全てシンの力量からなせる技だ。
故に少女達は、認識できないし、対処する術もない。待つのは確実なる死それだけだ。
「それじゃぁ、さよーなら!からだと頭は一緒に埋めてあげるよ。偉大なる生命の母、大地によろしくね?」
少女達が最後に見たのはきれいな笑顔を浮かべた人間離れした容姿の悪魔だった。
(これで情報が揃った。これらのドッグタグを使おう。性別のところは…なんとかなるでしょ?そーと決まれば明日の準備頑張るぞー!)
シンは鞄に髪染め用の黒炭の粉、ロープ、毒のはいった小瓶、数日分の干し肉(人間のもの)、そこらの盗賊から巻き上げた小銭をいれた。
少女達を解体しだす。服を剥ぎ取り、ドッグタグを奪う。服はほつれているところがないか確かめあれば繕う。死体は拠点のそとに埋め、部屋の中に残った死臭を消すように血痕を消す。
「数日戻らないからね。きれーにしとかなきゃ!」
そとはすっかり暗闇。夜中だ、睡眠をとらなければ明日の活動に支障が出る。
「ふぁー。眠たい。明日のためにもう寝よーっと。」
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