第22話やること
気付けば雨は止んでいた。少々面倒な依頼だが、シンにとってはまたとないと言ってと良いほどの好条件だった。このまま武力行使になっていたらロフォンスは五体満足で仲間になることはなかっただろう。
シンとバキュアは早速旅の準備に取りかかる。一度拠点に戻るつもりらしい。出口まではロフォンスが見送りに来た。
「期限を忘れないでね。それじゃぁ、頑張ってね!」
扉の縁にもたれ掛かるようにしてこちらに向かって手を振っている。完全には回復していないようだ。
シンとバキュアは雨でぬかるんだ道を歩いていく。ロフォンスが見えなくなるとシンから会話を切り出した。
「ねぇねぇバキュア?ロフォンスは明日から10日って言ってたでしょ、だから今日は一度家に帰ろうと思うんだよねー。さすがに他国にいくのに手ぶらってわけにはいかないでしょ?」
「確かにそうだが、おまえと俺との家の距離は近いのか?遠くても一度睡眠は入れたい。今日は疲れたからな。」
「そーだね、僕もやらなきゃいけないことがあるし明日のお昼前にバキュアの家にまた行くよ。僕の家よりもバキュアの家からの方が通る道に近いからね!」
「わかった。あと1つ。俺は地理に詳しくないが大丈夫か?それに国を跨ぐとなると身分証とかいるんじゃないか?俺、持ってないぞ。」
「そこはほら、なんとかなるよ。塀があるはずだけど登れば良いし、身分なんていくらでも偽装できちゃうよ。」
「そうか、なら良いんだが…。こういってはなんだが旅行するみたいで楽しみだ。」
「そーだね!」
この後はたわいのない話をしていた。気がつくとバキュアの家の前だった。
「着いたね!それじゃ、また明日ね!」
「あぁ、またな」
お互いに別れの挨拶を交わす。バキュアの表情は少し乾いていた。それに気付いていたがシンは歩き始めた。少し進んだところでシンは振り返り大きく手をふった。そして大声で
「バキュアー!今日はありがとー。」
シンはバキュアのアフターケアも抜かりなく済ませた。
(今後の行動に支障を来すようなフラグはゼーンブ叩き折らなきゃだよね?)
シンはどこまでも計算して動いていた。暫く歩いた。辺りは暗闇に閉ざされている。遠目に拠点が見えてきたが様子がおかしい。仄かに明かりが点っているような気がするのだ。中にいるのは拐ってきた町娘が2人だ。拐ってきて早2週間になるが今まで勝手な行動をすることはなかった。ということは第三者である可能性が高い。幸い拠点まではまだ距離がある。歩きながらどうするか考えたのでも十分間に合うだろう。
(中にいるのが第三者でありなおかつ刺客の場合は殺すとしてー、捕まえてる女の子たちを探しに来た人達だったらそのままにしようかなー?あっ、でもあの子達に顔見られてるから助けに来た人もろとも死んでもらおう。どっちみち今から殺る予定だったしねー。殺る前に国境線の壁について情報を搾り取ろう!)
そうこう考えているうちに拠点まであと2mというとこまで来た。中にいる人物たちはまだシンに気がついていない様子だ。ここからはシンも気配を殺して行動する。耳をたてると男たちの話し声がした。だが、遠すぎてなにをいっているのかわからない。そこで壁に穴を空けた申し訳程度の穴から部屋の中を伺う。中には3人ほど大柄な男たちがいた。とりわけ真ん中にいる男は大きくおそらく3人のうちのリーダーであろうと推測できる。女の子たちは部屋の隅で放られていた。服の乱れ具合から使用済みなんだろう。せっかくの生娘だったのにと、シンは少し憤りを感じた。男たちはシンが集めてしまっておいた酒を引っ張り出して宴のような空気を作っている。
「ガーッハッハ。良いとこを見つけたぜ。酒もあるし女にもこまらねー。サイコーだな。」
リーダー格の男が上機嫌に酒瓶を振りながら話す。
「でもここ、食料の類いは一切無いですよアニキ。」
リーダーをアニキと呼ぶこの男は背は高そうだが全体的にヒョロく力はなさそうだ。
「食べ物くらいその辺から盗めばいいだけなんだから、別に気にすることねーよ。そうですよね大兄貴?」
この男は二人目の男とは対照的に丸々している。人当たりが良さそうな顔とは裏腹になかなかにえぐいことを言う。シンにはこの3人はどうでも良かったしなにより自分の物に手を出されたのだから殺さない理由はなかった。わざわざ姿を出してやる必要はないため毒を使う。吹き矢の針に毒を仕込みリーダー格の男から殺す。ドスッという鈍い音ともに男は倒れた。だが、そばにいた2人は酒に酔っただけだろうとまともに相手にしなかった。次に殺ったのは背の高いヒョロい男だ。こちらは先程よりも軽くあまり音はしなかった。最後に残った男はのんきに酒を飲んでいる。そこをシンは容赦なく殺した。三人目の男が倒れる。それから5分ほど様子を見てやっとシンは室内へ入った。そして少女たちへ近づく。ただし以前とは違いごみを見るような目で。シンにとって他人に先に使用されたものはごみでしかないらしい。だが、準備のためには情報が必要だ。そこで普段ではすぐに殺すところを今回は情報を吐く時間だけいき長らえさせてやろうと思うぐらいには譲歩した。それを相手には悟らせないように取り繕う。口調から態度仕草まで全て。
「おねーさん達、災難だったね?傷心中のところものすごーく申し訳ないんだけどー、フィロニキアについて知ってることがあったら教えて欲しいんだ!教えてくれたら返してあげるからね。」
(土の中にね!)
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