第20話素直な気持ち?

 「僕はね今の戦いを見て思ったんだー。やっぱり君が欲しいなって。もちろん拒否権なんてものはないよ、でも、それはフェアじゃない。なんてったって君は僕たちと一緒に行くのが嫌なわけだからね。そんなのを無理矢理連れていっても逆に足手まといになるしひいては寝首をかかれかけないわけ。それは嫌だからー、僕からおにーさんにサプラーイズ!イエーイ!」


 シンが大仰な素振りで話しかけた後サプライズと騒ぎながらパチパチパチと手を叩き出した。見ていたロフォンスとバキュアは驚いて開いた口が塞がらない様子だ。辛うじてロフォンスが絞り出したのは一言。


 「は?」


 シンは構わず説明を続ける。


 「おにーさんには今から僕とゲームをしてもらいます。ゲームと言っても体は使わないよ?おにーさんはバキュアとの戦いでボロボロだからね。僕に勝てっこない。だからもっと面白いことをしよーってわけ。」


 無意識的にロフォンスのからだが強ばる。


 「アハッ、そんなにキンチョーしなくても大丈夫だよ。今からやるのは名付けて、"チェストニー·チューストバ"名前からもわかるように、素直な気持ちではなすって言うだけの簡単なゲームだよ。簡単でしょ?」


 「…うそを…うそを着いた場合は…どう…なる?」


 まだ完全に回復しきらない様子でロフォンスが尋ねる。


 「それを聞くってことは、ゲームに参加してくれるんだね!ゴッボンッ。たしかにー、一理あるよね!もちろんこの世に魔法なんて無い。たがらー僕たちは相手がたとえうそを言っていたとしても見破ることができない、そういうことでしょ?」


 ロフォンスがうなずく。動きがだいぶ戻ってきたらしい。手を開いたり閉じたりしている。


 「安心してよ。僕はね、人の動きから相手が噓をついているか見破れるんだー。すごいでしょ!それに、僕はおにーさんに噓はつかないから。根拠は、僕がおにーさんを仲間にしたいってことじゃ薄いかなー?」


 「…。たしかに、そちらから誘ってきているあたり噓をつく理由はない、か…。わかったよ。俺はそれで良いよ。細かなルールについて話してよね。」


 もうほとんど回復したようだ。普通に喋り、なんなら胡座までかいている。バキュアが後ろで


 「俺が頑張った意味は…?」


 と呟いていたが会えてスルーしていく。


 「細かいルールはこう!まず、お互いが順番に質問をする。回答者はそれに噓偽り無く答えなければならない。あとはこれらを繰り返す。どちらかの質問がなくなるまで。片方の質問がなくなったらそこで終わり。」


 「…それで?君はそれでどうやって俺を仲間にするわけ?それに君が俺の知りたいことに100%で答えられると言う保証もないわけでしょ?」


 ロフォンスが諭すように問いかける。


 「もー。おにーさんてばセッカチなんだからー。今から説明しようと思ってたのにー。」


 少しふて腐れたように頬を膨らませる。


 「僕はねこの国のことならなーんでも知ってるよ。たぶんだけど、おにーさんが知りたいことを聞く上で僕ほどの適役はそうそういないはずだよ!」


 「そこまで言うなら…。でも、俺は用心深いんだよね。俺の信用を勝ち取るためにも質問を1つカウントにいれずに答えてみてよ。それから考えるから。」


 「もちろんだよ。なにが聞きたいの?」


 ロフォンスは人知れず固唾を飲んだ。自分が確実に知っていてシンが知らなさそうな情報。あわよくばゲームを始める前に逃げるつもりだ。


 「国外でも良いか?」


 「もちろん。でも、人の場所とかの特定はできないからね。ある程度有名な人や物にしてねー!」


 ロフォンスは考えた。ある程度知識があれば誰でも知っているがこんなスラムに住んでいるような人間にはわからないであろう問題を。ロフォンスが迷いに迷って出した質問は


 「この国には1人の正妃と4人の側室がいる。これは誰でも知ってる常識だよね?なら、第4側室であるトラピキーラ様はどこの国の出身でしょう?」


 シンはうつむいた。だがそれも束の間キョトンとした顔で右頬の辺りを掻くような動作をする。


 「えっ、そんな簡単なことで良いの?」


 ロフォンスは唖然としておりバキュアに至っては、質問の答えを考えていてそれどころではない。


 「答えはゼストでしょ?こんなの簡単だよ。その辺の子供たちですら答えられるんじゃないかなー?ねーバキュア?」


 バキュアはピンときていない様子だ。今度はシンが逆に首をかしげる。もしかしてこれは常識ではないのではないか、と。


 「まぁいっか!答えたわけだしー、おにーさんもゲームに参加してかれるよね?」


 「あ、あぁ…。」


 どこか納得がいかない様子だが時間が惜しいため無視をする。


 「先行はおにーさんで良いよ。その様子だと聞きたいことがたくさんありそうだかんね。」


 (思ったよりも彼は有識者のようね。それならこのゲームやる価値がありそうだね。)


 「わかったよ。でも、まずは座らない?こんな格好じゃ示しがつかないしなによ俺が嫌だからね。」


 2人は元々おいてあった机と椅子の方へ行きそれぞれ座る。バキュアもシンのとなりに座っている。少し興味があるようだ。


 「まずは最初の質問。君、何者?ただのごろつきって訳じゃないでしょ?それにしては知識があるもの。質問の仕方を変えね。その教育はどこで受けたのかな?」


 「…。予想外の質問だよ。もう少し癖のあるものが来るとばかり。まぁ、いいよ。僕のこの知識は母から聞いたものだ。他のものは本を読んで知ったんだけどねー。」


 「…。それ本当?それが本当なら君のお母様は相当頭が良かったようだが。お母様はどこ生まれなの?」


 「はーい、ブッブー。質問は1回につき1回まで。次は僕の番だよ。」


 ロフォンスは乗り出しかけていた体を椅子へと落とし、深呼吸をする。俺はいったい彼になにを聞かれるのだろうか。

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