第49話 キルキル舞い?!
暗殺集団。
暗殺とは、暗いところに隠れて殺すということのみを指す言葉ではない。
手段に明確な定義がある訳じゃないんだよ。
殺せれば狙撃でもいいし……。
———遠距離狙撃。音からしてブルースLtd.系列の西洋系銃器メーカーのマークスマンカービン類だろう。別の位置にいるスポッターの二次観測データによる演算で座標指定し、精密なサイボーグアームによる超精度射撃。
近接格闘で首を刎ねてもいい。
———脚部インプラント。コイル駆動型の伸縮機能によって地面を蹴り急加速する伸縮脚部……、通常『バネ足』を活かした近接攻撃。単分子カッターで首狙い。
というか、殺せればなんだっていいので何をしてもいいんだよな。
昔、有名なマフィア映画に、車に乗ったマフィアを敵マフィアがマシンガンでめった『撃ち』するシーンがあった。
車の中で動けない対象に、複数のサブマシンガンを持った男達が、ドラムマガジンを撃ち尽くすまで連射連射、と。
これも暗殺だ。
ドタバタうるさい?否、確実性がありむしろ評価できる。
隠れてりゃいいってもんでもない、殺すことが最優先だからな。
だから、そう。
———こうして囲んで射撃してくるのも、暗殺者を名乗る集団としては大正解という訳だな。
「でもそれだけじゃ合格点はやれないな」
目の前、迫る、単分子カッター。
腕を捻って、そのまま、狙撃の、弾丸を、弾く!
弾かれた弾丸が別の弾丸を弾き、その弾丸がまた別の弾丸を弾き……。
火線が逸れて、ドレスの裾のように踊る!
機甲術……、その一端。
『弾逸らし』と呼ばれる技術の応用の極みだ。
サムライ・コマンドならば、これくらいはできる。
「殺しやすいのばかり殺しているからそうなる。殺せない相手に対峙すれば、ほら……」
「ッ……!殺」
「終わりだ」
俺は、叫びかけたアギトの喉元を掴み、盾にした。
「アギトっ?!」
『アギト様!』
銀髪の、単分子カッターで攻撃してきた少女。
それと、電脳通信している狙撃女の二人が、委員長であるアギトの名前を叫ぶ。
「やめときな。勝てんよ、お前らじゃ」
「ッ……!」
『撃たないで!アギト様に当たります!』
膠着した状況。
俺は、アギトの首から手を離し、背後から羽交締めにするような感覚で捕まえつつ、話し始める……。
「さて、まず一言言っておくが、俺は別にお前らがやろうとしていることを否定している訳じゃない」
「何を!貴様は我々の大義をっ……、ひゃん♡」
何かを叫ぼうとしたアギトの乳首を捻って黙らせる。
「最後まで聞け。俺が言っているのは、『無駄だからやめとけ』というアドバイスだ。受け入れないのはお前らの勝手」
「……それが教師の言う台詞か?」
「教師ってのは、『生徒の個性を伸ばしてあげる人』じゃねえ。『平均的な能力を持った量産型をたくさん作る人』だ。不良、落ちこぼれは排除するし、言われんでもできる子は放っておくもんだ」
「……クズが」
おーおー、ひでぇなあ。
「だが真実だ。『大人』に夢を見るなよ、世の中ってのはそんなもんなんだ。その辺の議論がしたいなら後で茶でも飲みながらしてやるが……、それよりまず、今回の『戦争』について話しておくことがある」
「………………」
「この戦争も、俺からすれば授業の一環として考えている。お前らが将来どうなるのかはお前ら自身が選ぶことだが、しかし今回のような戦争、組織同士の抗争は、お前らの生存能力を高めるいい経験になるだろう」
周りの、モブ暗殺少女達も頷く。
それは分かるようだ。
「今回、俺は、『どこの勢力にも加担しない』……。これは絶対に誓うと宣言しよう。その代わり、どこの勢力も見回って、授業としての評価点を付けさせてもらう。その過程で、お前らの組織の作戦やら何やらを知ることになるが、機密は漏らさない」
「信用できるとでも?」
「俺は既に、この学園都市のネットワークの管理者権限を学園長から貰っている。その気になればなんでも知れるんだよ。戦争だって、阻止しようとすればできる立場だ」
「……だが、していない。だから信用しろ、と?」
「そう言ってるんだが、通じないか?」
すると、暗号通信でローカルネットワークを介した電脳無線通信をして、アギトは恐らくは幹部らしき清掃委員会の暗殺少女達と連絡を取り始めた。
『どう思う?ユラ、サバシリ、ハシバ』
『んー……、あたしの直感的には大丈夫そうだけど、アギトが聞きたいのはもっと論理的な話でしょ?』
『ああ』
『でしたら私から。学園都市の監視カメラによる記録では、先生はここに来るまでに、既にボランティア部の支部や風紀委員会の本部などを見回りに行っているという情報をこちらで掴んでおります。本気で、採点のために見回りをしているのでしょう。イカれたサイコパスですね』
『なるほど……。ハシバはどう思う?』
『え?まあどうもこうもないんじゃね?実際問題、ここまでのガチ奇襲やって殺れねーんだもん。止めらんねえ相手にどう対策するかなんて考えてもしゃーないやろ』
『……一理あるな。清掃委員会の幹部三人と私が一斉にかかっても、傷一つつけられない相手に何ができるか、と。そういうことか』
『うちはそういうの分かんねーからあんまし口出しできんけど、勝てねーなら代表者であるアギトねーさんが交渉でどうにかするしかねんじゃねーの?』
『交渉……』
『多分、ですが。その交渉をするのも、授業の一環と言うことなのでしょう。まさに狂人ですね』
『……理解した。では、交渉に入る』
ふんふん、良いね。
下の立場の仲間の意見をちゃんと聞ける。
+1点だ。
「……交渉がしたい」
「良いよ、言ってみな……」
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