第47話 委員会みっつ!!!
「じゃあみんなー!手と手を合わせて!」
「「「「いただきます!」」」」
給食委員会は「会議」という名目で集会することはない。
あるのはいつでも、「食事会」だ。
工業用の高負荷対応の作業台を改造したテーブルに、タワーのように食品が並ぶ。
そこの中心の席で、一際大きな背丈の、ピンク色の髪をした少女が言った。
「もぐもぐ……、じゃあ今回の議題だけどー……。もぐもぐ、図書委員会と情報委員会から奪えるだけ奪って、みんなで新しい食料生成プラントを作るってことでいーい?」
「「「「いーよー!!!」」」」
物騒な宣言の主は、給食委員会総会長、勝クウカ。
それに付き従う、給食委員会。
「よくないよー!」
「えー?」
反対の声が一つ。
それを聞き、クウカの、スイカどころか、ちょっとしたバランスボールほどもある巨乳が揺れる。
「何でよー、ムルモちゃんー!」
ムルモと呼ばれた方も、クウカに負けず劣らずの背丈とバストサイズの大女だ。
ムルモは、委員長であるクウカに、正面から言い返す。
「奪い過ぎるとー、碌なことにならないよお〜?食料生成プラントなら、今までの予算案で通したでしょお〜?」
「もーっ!また理系派閥に加担するんだからぁーっ!給食委員会は文系派閥なんだよお?!」
「派閥なんて、予算戦争の時にはあってないようなものだよお〜!」
「「むぅー……!」」
睨み合う二人だが、まだ、「キレて」はいない。
その為、他の給食委員達も無視して目の前の食品に齧り付いている。
「ムルモちゃんはそんなんだから、給食委員会の総会長になれなかったんだよお?!」
「クウカちゃんこそ、そんなんだから敵が増えて予算削られちゃうんだよお?!」
「「むむーっ!」」
二人は、しばらく睨み合い……。
「「ふんっ!」」
と、顔を背けながら、大口を開けてハンバーガーを頬張った……。
この後も二人は、過激派と穏健派として論議を交わすが、実はとても仲がいい。
リーダーとサブリーダー、考え方の違う二人の話し合いは、良い相乗効果を生んでいた。
「じゃあ、戦争はするけど、予算は半分以上奪わない方向で〜!これで良いよね、ムルモちゃん?」
「うーん……、まあ、良いかなあ……?」
「よおし!じゃあご飯タイムだからあ!ご飯は仲良く食べなきゃねえ!」
「うん!」
風紀委員会、総本部。
カスミガセキ・シティと呼ばれるそこに存在する大型要塞である。
学園都市の警察機構、風紀委員会。
その総会長、COPである大久保ノデン。
ボーイッシュな相貌をきつく引き締めた彼女は、ずらりと規則正しく整列する風紀委員達に向けて、スピーチをしていた。
「諸君、戦争が始まる!我々はこれに対して、武力による介入をもって当たることとする!」
鋼鉄の双腕が、強く机を叩く。
「戦争などと言うが、市民である大半の一般生徒はこんな馬鹿げた争いに参加することはない!我々の任務は、争う馬鹿者共から、善良な一般市民を守ることにあるっ!!!」
強い、強い弁舌。
内容もまた、まともな話だった。
「戦争!良いじゃあないか!やってやろうじやぁないか!!!ボク達の敵は、秩序を乱す者全てだッ!!!」
「「「「うおおおおっ!!!!」」」」
「さあ、風紀委員諸君!規則違反者共を、便所の隅まで追い詰めろッ!!!追い詰めてぶち殺して、脳核を引っこ抜け!!!疑わしい者は拘束して構わない、先行発砲も今月中は許可する!!!やるぞ、皆!えいえい、おーーーっ!!!!」
「「「「えいえい、おーーーっ!!!!」」」」
風紀委員会のやることは、いつも一つであるからして。
内部での揉め事も、何もない。
それは、保健委員も同じこと。
ブンキョウ・エリアにある超大型武装総合病院では、保健委員会の首領である彼女……、三条シズクが、大型カンファレンス用の多目的ホールでスピーチをしていた。
シズクは、鮮やかな青色の長髪を衛生的にまとめて縛りつつ、マイクに向けて静かに語る……。
「戦争……、馬鹿馬鹿しい話だ。私達がそれに付き合う必要はない」
瞳を閉じて、平静に。
医師足らんと、常に心がける彼女は、戦争の前においても冷静だった。
「私達の仕事は、いつもと同じ……。病める人々、苦しむ人々を救うことっ!!!!」
そして、瞳をギュッと引き締めて、叫ぶ。
「医師であるならば!どんな時でも、何があろうと!苦しむ人々を救わねばなりません!」
ゾッとするような、気迫。
「神ならぬこの身、救いきれぬ命も、取りこぼす命もあるでしょう!だが、決して立ち止まることは許しません!私達は……、医者よ!!!!」
圧倒的な、覚悟。
「しばらくは修羅場になるでしょう。緊急外来の電話は鳴り止みません。家にも帰れず、碌に眠れず、多数の死に直面することになるでしょう……。ですがっ!!!」
戦う者ではなくとも、他者を圧倒するような、強力な意志の力。
「ですが、私達は医者なのです!……私達の戦いを、始めます!!!!」
保健委員の覚悟は、常に決まっていた。
一方で、問題の福祉委員会は、と言うと……。
「皆さん!嬉しいお知らせです!何故かは分かりませんが、お布施がどんどん集まっています!」
破壊の光、絶望の白。
死の聖女、高杉サツキは、嬉しそうに十字を切っていた。
そのお布施とは、福祉委員会のフロント企業であるボランティア部……つまりは傭兵組織に寄せられた依頼報酬の前金であるのだが、彼女はそんなことは知らない。
ジャンヌ・ダルクは金策などしないということだ。
経済的な活動や事務は、福祉委員会配下の何者かがやる。
なので彼女は、邪気がいっぺんたりとも感じられない晴れやかな顔で、こう言うのだ。
「きっと、世の中の皆さんが信仰に目覚めてくださったのですね!神様、感謝します!」
死にたくなるような笑顔で、滅びたくなるような微笑みで。
彼女は言葉を続けた。
「皆さん、お布施もあることですし、今月はたくさん、たくさん、布教をしましょう!お話をすれば、どんな人とでも分かり合えるはずです!」
欺瞞か?
救済を謳い人を殺す彼女の言葉は、欺瞞なのか?
否、そうではない。
信じているのだ。
彼女の中では、そうなのだ。
「みんなみんな、殺して犯して救いましょう!救いはあるのです、私が齎します!」
殺した魂は天に昇り、天の国で幸せになれると、本気でそう信じている……。
「殺して、殺して、積み上げた死体を、天まで届く階段にしましょう!皆さんが幸せになれる世界を、私はきっと作って見せます!」
本物の狂人だ。
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