第34話 ノックアウト?!

「死ねエっ!!!」


「アンタがねぇっ!!!」


射撃。


血走った目をした二人の女子高生サイボーグが、全力で殺し合いをしている。


俺はそれを、興奮しながらカメラに収めていた。


女同士のガチ殺し合いとか、割とマジで勃起もんである。


「ごあっ?!」


「あぐえっ!」


お互いが放った弾丸が、お互いのボディアーマーに阻まれる。


しかし、軽量のボディアーマーは、衝撃までは殺しきれず、二人は弾丸の打撃力により仰け反った。


「ごええええっ!!!」


「ぐはっ!!!」


ああ、シヤは生の胃なのか。衝撃でシェイクされた生の胃は、弾丸のダメージに耐えきれなかったらしく、黄茶色の吐瀉物を撒き散らす。


吐瀉物の中には赤色が混じっていることから、恐らくは内臓にダメージがあるだろうな。


ナナオの方はどうやら人工胃管のようだが……、それの機構がイカれたっぽいな。赤黒い人工体液が、口と鼻からどばっと溢れる。


目尻からもドバッと出ていて、まるで血の涙だ。


「「じね……、死ねえええええっ!!!!!」」


きゃー!


弾切れになった銃を捨てて、ガチ目な殴り合いが始まったぞー!


かわいー!


スタイルとしてはナナオは空手、シヤは八極拳。


しかも、ナナオのそれはフルコン系の空手の動きだ。一撃一撃が重い。


シヤはそれを、拳法の柔らかい動きでいなす。


そして。


「喰らえええェア!!!!」


「なっ?!ぎええっ!!!」


おっ!隠し球!


どうやら、シヤは、右腕の人工皮膚の下に電磁掌底を取り付けていたらしい。


白魚のような美しい手の皮膚が焼き切れ、機械的な腕部が露出。


しかしその代わりに、ナナオを仕留めることを成功したようだ……。


ナナオは、血の涙を流しながら失禁し、口から黒い煙を吐いて倒れた……。


「は、ははは!やった!これで百万クレジット……」


……いや、まだだ。


ナナオは、食らった瞬間にシステム再起動をかけていた!


一瞬で飛び起きて……!


「さっぎもいっだでしょ……!死ぬのば、アンダよ……!!!」


いつの間にやら拾っていた、その辺に落ちていた他人のハンドガンを、シヤの脇腹の防弾プロテクターがない部分に押し付けて、連射した……。


「あぴ」


あ、シヤが死んだ。


ギリギリだったが、ナナオの勝ちだな!




カルイとミコシも、ボロボロだが勝利したようだ。


カルイは両腕が捩じ切れていて、ミコシは右足と顔の左側がないが、まあ誤差でしょ。


「はぁ、はぁ……。医務班!治療を……!」


「只今!」


後方から、ボックスカーに乗った医務班がすっ飛んでくる。


即座に治療して戦線復帰するつもりだろう。


サイボーグは、壊れた部品を付け替えて、肉の部分もバイオ技術で高速再生できるから、機能停止しなければすぐに治るので負け扱いじゃない。


ゾンビアタックが当たり前なのだ。


そしてついでに言えば、脳核が破壊されない限り死なないので、殺されても終わりじゃない。


脳核の破壊は『脳死』と呼ばれ、それは流石にこの学園都市では忌避されるようだった。


「大丈夫ですかナナオさん!バイタルチェックします!ジャックインの承認を!」


「承認ずるわ……」


《!承認!》


「ダメージレポート……、損壊率34%!戦線復帰まで十分ください!」


「五分でやりなざい!!!」


「は、はいっ!」


んー、良いねぇ。


でも、このままじゃ落第とは言えんが赤点ギリギリだぞ?


ちょっとアドバイスしてやるか。


「いえーい!」


俺は、ダブルピースしながら医務用のボックスカーに入り込んだ。


「……チッ!!!!」


おっ凄い、全力の舌打ち。


「そんな目で見るなよ、好きになっちゃうだろォン?」


「じね……!!!!」


「あらやだ、余裕ない感じ?」


「何じにぎだのよ!」


「忠告〜」


「はぁ?!!!」


ははっ、キレるなキレるな。


「問題でーす!Dr.无は、そもそもどうして人攫いをしていたんでしょーか!」


「ぞんなの、知らないわよ!狂人なんでじょ?!気狂いの思考回路なんで分がる訳ないじゃない!」


「思考回路は理解できんでも、動機は分かるはずだ」


「はぁ?!……いや、待っで……、まさが!」


ナナオは、医務班を突き飛ばし、体に繋がれたコードを引きちぎり外に出た。


「あ、あぁ……!ぞんな!」


おっ、気づいたっぽいねえ。


やっぱり、戦いはそこそこだが、頭が回るなあこの子は。


『全体コール!敵の狙いは……、この戦いで生み出された死体よ!死体を回収している奴を捕まえて!!!』


電脳通信。


だが、それを気づいちゃったらもう……ねぇ?


あっち側も、最早生かして帰さないでしょ……。


地下、Dr.无のアジト予想地である廃駅から、5mほどの大きさの影が現れる……。


『ターゲット確認。掃討します』


高めの電子音声。


ずしん、ずしんと大地を揺らす「四足歩行」……。


「ほ……、歩行戦車『ジャガーノート』……?!!!」


誰かが叫んだ。


同時に、医務班のボックスカーが吹き飛んだ。


四連装75mmオートキャノン。


巻き込まれた生徒は即死だろう。


威力があまりにも高いため、運悪く直撃した生徒は脳核ごと肉体を破壊されてしまった。


あそこにいた生徒達の脳核から発せられる、生命信号をロストしたから、死んだことは間違いない。


次撃たれたら、何人『脳死』するのやら……。


何人もの生徒が腰を抜かして、失禁して泣いている。


当たり前だ、対人用の手持ちの火器程度で、軍用の歩行戦車とまともに戦える訳がない。


ま、仕方ない。


これは俺の仕事でもあるしな。


ギリギリまで手出ししないつもりだったが、そういう軍用機とか出してくんなら、軍人がお相手せにゃならんだろう。

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