第28話 カオが无?!

イェーイ!


美少女(処女)のファーストキス!


やる気出ちゃうな〜〜〜!!!!


「そ、それじゃ、教えてくれる?」


「ん〜〜〜……、2041年10月3日、无人机(ウー・レンジィ)博士、人民解放軍特殊部隊『狠心』……辺りでどうだ?」


「……じ、人民解放軍?確か、中華だっけ?」


「ああ、そうだな」


「中華って、狂気の人工知能『光芒』に滅ぼされて、今は各国に残った華僑だけしか……」


「ああ、そうだな」


「……滅んだ国の、無くなったはずの軍隊の、特殊部隊が犯人なの?」


「ああ、そうだな」


顎をさすって、ノデンは一言。


「ありがとー!とっても参考になったよー!」


へえ?


「信じるのか?」


「うん!」


「何故?」


「刑事の勘かな?」


へえ!


良いじゃん。


「それに……」


「それに?」


「君はつまらない嘘、吐かないでしょ?」


「ほー?初めて会った俺の何が分かるってんだ?」


「そちらこそ、ボクが何人、つまらない悪党を捕まえてきたと思うんだい?つまらない悪党はつまらない嘘を吐くものなんだよ」


「へえ?じゃあ俺は悪党じゃないから……」


「そして、とびきりの悪党は、『ここぞ』というところで致命的な嘘を吐くんだ。君みたいな、ね?」


悪党扱いは真に遺憾であるのだが????


我、正義の軍人ぞ????




「ああ!君はナナオ君だね?こっちはカルイ君と、ミコシ君!君達、スリーマンセルの検挙率はとても高いから、ボクは感心していたんだ!」


「「「恐縮です!」」」


「会えて嬉しいよ!ボクは少し忙しくて、あまり前線に立てないから……」


「「「いえいえいえ!」」」


面白いなー。


あの三人がめちゃくちゃに恐縮してる。


とりあえず俺は、ノデンの尻を後ろから撫でた。


……裏拳が飛んできた。


ナナオの引っ叩きとかじゃない、ガチのやつだよこれ。


怖〜……。


けど揉む。


「あ、あのねえ……、淫行は困るんだけど……。逮捕するよ?」


まさか、裏拳を避けることもなく顔面で受け止められ、しかも小揺るぎもしないなどとは思っていなかったのだろう。


少し驚いたノデンは、そう言って苦情を入れてくる。


「驚くなよー、上に立つんなら何が起きても平然としてろ。コーポの上役とかにゃ、未だにセクハラしてくる奴もいるぞ〜?」


「はぁ……。君、何者なの?さっきの裏拳、生半可なサイボーグなら顔面を平らにできるんだけど?」


「何だろうな?調べてみるか?」


「……やめとくよ、危なそうだし」


「賢明だなあ」


うーん、良い尻だ……。


しっかりトレーニングをしている人工筋肉尻……。


イイね!


「あ、あのっ!」


「うん?なんだい、ナナオ君?」


ナナオの方に、溌剌な輝く笑顔を向けるノデン。


こうして見ると、非常に笑顔が上手いと分かる。


自然に笑う、笑顔を維持するというのは、実は中々難しい。


ヘラヘラしている、俺のような軽薄そうな態度は上に立つものとして駄目だしな。


その点、このノデンの威厳と愛想が両立する微笑みは、政治家としての素晴らしい適性を示していた。


「COPは何故、こんなところに……?」


「ああ……、実はこの誘拐事件は、こちらでも追っていてね。足取りが中々掴めなくて困っていたんだよ。そんな時に有力な手がかりがあると聞いたからね」


「な、なるほど……?」


「ボクのね……、ボクの庭でね?無辜の民を生きたままバラして何事かに使うだなんて……、そんなタンカス野郎が、この地球の酸素をちょびっとでも消費していると思うと……、ボクはハラワタが煮えたぎるように感じるんだよなァ……」


「ひっ」


「許せる訳がねェーんだよね。このボクを、チンケなゴミ犯罪者如きが舐め腐りやがるだなんて。法の裁きにかけて殺すが、法の裁きという名目がなくても、被害者達と同じように生きたまま五体を引き裂いてブチ殺してやりたいと思うのは、おかしなことかい?」


「いっ、いえ!おかしくありません!」


えぇ……。


なんかブチ切れ過ぎて顔面に血管がバキバキ浮かんでるんだけど……。


さっきから怖いんだよなこの子……。


そりゃ、ナナオも怖がるわ。


「まあそんな風に行き詰まっている中で、優秀な捜査員君が頑張ってくれてるからね!ボク、嬉しくなっちゃってね〜!」


一転、また、人懐こい太陽の微笑みを浮かべて、ナナオの手を両手で握るノデン。


情緒不安定ウーマンか?


「COP、不良生徒の脳核をスキャニングした結果が出ました」


……おっと、モブ捜査員ちゃんが、手持ちのスキャナーで死んだ不良生徒の脳核を調べたようだ。


直接ジャックインしないのはまあ、何のウイルスが入っているか分からんから当たり前として、手際が良かったな。


本土の下手な警官より有能かもしれん。


「ありがとー!……ふん、ふんふん。なるほどね。この、白いのっぺらぼうが『无人机博士』か……」


VRビジョンに浮かぶ、黒いネクタイに黒スーツを着込んだのっぺらぼうの人型実体。


Dr.无だ。


この場限りのローカルネットワークに、資料を映し出すノデンは、真剣な顔で語り出す……。


「无人机、直訳すると『無人機』……。かつて存在した大国の軍隊で行われた、非人道的な育成法により作られた特殊部隊『狠心(ヘンシン)』の集大成……」


あ、狠心ってのは「残酷」みたいな意味の言葉だな。


「一般家庭に生まれた優秀な子供を誘拐して、その子供に対して洗脳教育を行い、人間の心を完全に放棄させ、国家のために戦う正に『無人機』にする計画、か」


反吐が出る、と呟きながら、資料を更にスクロールするノデン。


確かにそうね。


まあ、当時としてはベタな洗脳法だったんだけどなー。


自分の手で親兄弟を殺させたり、自分が愛情を込めて育てたペットを殺させたり。


友人、恋人をあえて作らせて、それを殺させるとかもあったっぽい?


あの頃ではよくある話だった。


そんな存在は日本にもいたし、俺も大体そんなもんだ。


いや、俺はメンタルが強過ぎて洗脳はされなかったんだが。


「しかし、解せない。何故、そんな存在が日本で活動している?」


首を傾げるノデン。


「そりゃ、中華からすりゃ、日本は敵国だからな」


第四次世界大戦で殺し合った敵同士だもんよ。


「いや……、戦争はもう何十年も前に終わって、しかも中華は滅んだじゃん」


「そうだね」


「滅んだのに、何で……?勝ち目のない戦いどころか、そもそも勝利を捧げる存在がいないんだよ?」


うーん、その辺は多分……。


「『ぜぼっと キョウモ ウゴカナイ……。ナニモ シャベラナイ……。』『すーぷ サメタ。 ツクリナオシ……。』……って訳だろ」


「え?えーっと……?」


パパッと検索したナナオが一言。


「うわ、何よこれ?テレビゲームってやつ?アンタもこういうのやるんだ……って何コレ?!百年以上も前の超レトロゲームじゃない!知らないわよこんな古いネタ!!!」


まあそれはそう。

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