第26話 大発見?!地下で見たモノ!
「ここは臭くないねえ」
「廃棄された工業地帯の、稼働していない工業廃水排出所なのよ?使われてないんだから臭くないわ」
「無駄話はやめろ、敵陣だぞ。リミッターもしっかり解除しておけ」
「無駄話じゃないわよ。まだ戦場になるとは決まってないわ。むしろ、気がついたことはどんどん言って。……まあ、今後は会話は電脳ネット通信でね。じゃ、行くわよ……」
『Please give me gloves for fox hand.(このお手々にちょうどいい手袋を下さいな)』
『Dig dig, Bow wow.(ここ掘れワンワン)』
『Little tree, little tree, shake over me.(ゆすって、ゆすって、若木さん)』
三人がサイボーグとしての身体能力を制限するリミッターの解除パスワードを呟き、銃器を構える。
ナナオはカスタムされたハンドガン、カルイは盾としても使える肉厚幅広なブレードとサブマシンガン、ミコシはマークスマンライフルだ。
カルイのサブマシンガンは、型番のIDを見る限りでは、エイジャーナカト製の官給品であると分かる。
その他のことは分からないが、粗製ではないが名銃と言えるほどでもない、悪く言えば面白みのない銃だと見受けられるな。
ブルバップ式、大型の弾倉、電子制御式トリガー。非人間型サイボーグにも使いやすいタイプの新しい型のもの。
そしてそれを、大型の掘削アームの手の甲にあるハードポイントに接続して射撃するようだ。
ミコシのマークスマンライフルは……、かなり古いな。
第三次世界大戦頃の旧型モデル。
欧州共通規格の7.62mm弾薬を使用する、セミオートのバトルライフルに非電子式スコープをつけたもの。
テロリストなどが軍部の払い下げ品を不正に手に入れて所持しているのをよく見るな。
精度はそこそこ、信頼性は抜群。ありふれたパーツと弾薬で使えるから、傭兵などによく愛用されているモデルだ。
電子制御を一切していないのが戦場帰りらしい……。
下手な電子制御式の銃器は、特殊ECMで簡単にブッ壊れるからな。割り切って銃器とか肉体の駆動部とかは非電子式にした方が、補給の乏しい戦場ではアドと言うケースが多いんだよ。
『スリーマンセル、いつも通り私がポイントマン。カルイはセカンド、ミコシはバックアップ』
『りょーかい』『了解した』
『……アンタはどうすんのよ?』
あ、俺?
『ついてきて欲しいか?』
『邪魔。消えてほしいわ』
『ヒューッ!キッビシー!』
《!坂本ナナオが電脳通信を切断しました!》
あ、ブロックされた。
しゃーない、ちょっと後ろからこっそりついていくか。
『カルイ、カバー』
『りょーかいー』
丁字路。
カッティングパイ……射角を確保する足運びで素早く死角を潰していく。
なるほど。
この動きの確かさは、確かにエリートだ。
風紀委員ルテナンⅢだったか?
本土で言えば警部に相当するらしいが、このクリアリングの手際はベテラン警官並みだろう。
そうして進んだ先に……。
『……こんなところに扉?』
『うわ、怪しいねえ』
『待て、スキャニングする……完了した。熱量正常、表面にトラップはない。オフラインのオブジェクトだ、原始的なブービートラップの可能性に注意しろ』
『……やるしかないわね。カルイ、突入準備。3カウント後にドアを蹴破るわよ。ミコシは後方警戒よろしく』
『りょうかいー』『了解した』
『いくわよ、3、2、1、ゴー!』
怪しい部屋に突入した三人は、そこで悍ましい光景を目にする……。
「いやっ!いやあああっ!助けててぇ!助けおべあっ」
誘拐被害者の少女らが、頭をかち割られて脳核を引き摺り出されている様をだ。
「ッ〜〜〜?!!!」
悲鳴と怒りをグッと堪えて、冷静なままに銃を構えて叫ぶ。
「動くなッ!風紀委員会よ!!!」
「「「「………………ハ」」」」
「両手を頭の後ろに組んで腹這いになりなさい!!!」
「「「「ハハハハハハハハ!!!!」」」」
被害者の少女をバラバラに分解していた不良生徒と思しき四人の女達は、銃を向けられているのにも関わらず、狂ったように笑ってみせた。
何かがおかしい。
ナナオはそう思い、銃を握る手に力が籠る。
「ふ、う、きィ〜……委員だとぉ?ばーーーっかじゃねぇの?!!!」
「ショボいサイバネ肢体でさぁ!アタシらに勝てるとでも思ってんのか?!!!」
「『博士』からもらったこの身体、試したかったんだよねェ〜〜〜!!!」
「行くぞォ!!!」
『『『『They ran round the tree, trying to eat each other!(虎達は木の周りを走り回り、お互いを食べようとしました!)』』』』
不良女四人がそう叫ぶと、皮膚が裂けて全身の黒いマッスルアンプが異常肥大し、目玉は充血して真っ赤に染まり、悍ましい虎のような姿に成り果てた……。
それを確認するや否や、ナナオは叫んでいた。
「制圧射撃ィー!!!!」
ナナオがハンドガンを撃ちながら、電脳ネット通信で後退指示を出しつつも、口頭で射撃命令。
ミコシは退路を確保しつつ狙撃態勢に入り、カルイは盾を構えてガードしつつ、サブマシンガンの弾丸をばら撒いている。
最善のコンビネーションだ。
こういう、真っ当に強いタイプが一番の難敵だからな。
奇策で勝つとカッコよく見えるものだが、実際のところは策を使わないと勝てないっていうのは拙いもんなんだよ。
地道な訓練、確かな戦闘経験、充実した補給線……。
これらの王道には、基本的に勝てないもんなんだ。
ほんの二秒程度で大型の弾倉の弾薬を撃ち尽くしたカルイは、盾を構えて後退するナナオをカバー。
ナナオは、カルイの制圧射撃で怯んだ不良女四人の爪先や関節部などの脆い部分に精密に弾丸を当てつつも後退し。
後退したナナオがリロードをしている最中に、マークスマンライフルを構えたミコシが通路から狙撃をする。
『いギゃあああ!!!』
『ソんな!嘘ダ!《博士》の改造は……!』
『最強になれルって、言わレたのに!!!』
『博士!どうシて?!見てルんでしょ?!博士!!!』
『博士ェ!……《Dr.无》!!!』
その瞬間、不良女達の肉体が、異常に膨れ上がる!
「伏せてーーーッ!!!!」
咄嗟に伏せるナナオだが、大正解だよ。
四人の不良女達は、生身の肉の部分が一瞬で黄色く腐食して、バイオケミカルな爆発を起こし、汚染物質をそこらじゅうに撒き散らした……。
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