第15話 ビショクの人々
「色仕掛けか?面白いな、『ヴィクセン』を思い出す」
俺がそう言って笑うと、カルイも笑い返してくる。
「ありゃ、色仕掛けがバレちったー」
「俺をたらし込んで、どうするつもりなんだ?」
「んー、お昼代、奢ってもらおうかなーって」
ハハ。
面白い。
「ははは!良いな、それ。よりにもよって、俺にやらせたいことが、『昼飯を奢れ』だと?最高に面白いな!」
俺はカルイを抱き上げて膝に座らせる。
そして、追加注文。
配膳ロボから合成ポテトと合成ナゲットを引ったくり、カルイに持たせてやる。
「金はいくらでもある、好きなだけ食え」
「わーい!」
ざざざ、と、ポテトを流し込むように丸呑みするカルイ。
ああ、こりゃ、巨大な掘削アームを動かす為のエネルギーを確保する炉心があるな。
胃をインプラントしていて、内燃機関が体内にあり、有機物を大量に燃やして大きなエネルギーを得るタイプのものだ。
「助かる〜!私、食いしん坊だから、いつもお金がなくてねえ」
「俺はいつでも奢ってやるぞ。天然物も好きなだけ食わせてやる」
「わあっ!本当?!」
「まあ、俺を捕まえられたらな。基本的に俺はふらふら移動しているから、俺に会いに来るなら奢ってやれる。朝晩もな」
「じゃあこれからデートしよー!ステーション前のパフェ食べたいー!『カメダ・カフェ』の新作ー!」
「はっはっは、良いぞ、何でも食え。っと、その前に、三十分程度だが講義を受けた諸君には+1点を進呈するぞ」
で、配膳ロボが持ってきた支払い用のパッドに手を乗せて、ローカルネットに接続し、電子マネーを払う。もちろん、ここにいる十人ほどの女の子全員分を奢るぞ。
我、社会人ぞ?
しかも、大金持ちぞ?
学生の飯代くらい払っちゃるわい。
で、デートだが。
次の授業を受けたり、部活動をする為に何人か女の子が帰って行き、残ったのはカルイと……。
「「「奢ってもらえるってホントですかっ?!!」」」
女の子三人組であった。
俺は、視覚センサの顔認識機能で、学校のIDに照合をかける。
「武田ムルモ」
「はあい〜!『料理研究部美食派』の部長!ムルモですう〜!」
もんのすごい、120cmは超えるかという化け物巨乳に、でっかいずっしりとしたケツ。そして、若干弛んだ腹肉を蓄えた、金髪の優しげなゆるふわ美女。
……しかし、スキャン結果によると、皮下装甲とマッスルアンプがかなり多くインプラントされており、更には「曰く付き」のバーサークシステムまで搭載している。
背中にはクソデカメイスを背負っているし、ヤバそうな匂いがしてイエスだね。
……ってか、これから食事しに行くのに、何で既に自販機の合成ブリトーを齧ってるんだ?食い過ぎだろ。
お次は……。
「藤田ニカラ」
「ういーっす!副部長のニカラでーっす!シクヨロの6ピースー!」
そう言って、六つの手でピースサインを見せてくるのは、ケバい化粧にピンクと青のグラデーションというロックな髪色をした女の子だ。
萌え袖上着で隠しているが、複碗のインプラントをつけていて、六本の腕をパタパタと動かしている。
「山国ハイ」
「ひえっ!は、ははは、はい!ハイですっ!料理部で、部長の秘書をやらせていただいておりますぅ!」
長い黒髪で目元を隠した、スレンダーな女の子。
両足をインプラントにしているらしく、反重力発生装置により浮遊しているな。
このタイプの足インプラント、鋭利なフォルムと爪先立ちみたいな形で、ロボットっぽくてかっこいいよなー。
……で。
「料理研究部?」
「はあい!学園都市の、部活動ですよ〜!」
……なるほど。
この学校というか、学園都市には、クラスや学年の関係がない。
どんな授業でも好きに受けられる、大学のような講義形式だ。
だが、事実問題、先輩後輩やグループなどの単位で組み分けされていないのは不都合……。
そこで、部活動がある訳だ。
将来、工業系の道に進むのであれば、「車両開発部」や「兵器研究部」に所属し、先輩後輩に助けてもらいながらも授業を受ける……。
それが、事実上のクラス分けとなっている訳だな。
委員会活動は、どちらかというと職業という面が強い。風紀委員会は警察だし、給食委員会は食糧生産者、みたいな。
で、ここにいるのは、「料理研究部美食派」という連中らしい。
どうやら、俺の奢りの言葉を聞きつけて、車に乗って飛んできたようだな。
トラブルシューター学に履修登録をしている以上、俺の生徒でもある訳だし、奢るのは良いだろう。
カメダ・カフェに行って甘いものを頼む。
「本当に奢ってくれるんですかあ〜?」
ムルモが、もっっっちもちのデカ乳を押しつけながら、潤んだ目で上目遣い。まあムルモの方が俺よりデカいから、ムルモは膝立ちだが。
けどまあ、中々良い色仕掛けだな。
+1点だ。
「良いぞ、金なんて腐るほどあるんだ。勲章の年金も貯まりっぱなしだしな」
「「「「じゃあ〜!メニューを端から全部、持ってきてく〜ださい!」」」」
おっ、良いねえ。
ガキが遠慮なんかしちゃならんよ。
「但し、残すなよ?」
「「「「はーい!」」」」
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