第14話 軍隊のヒミツ?

とりあえず、第一回目の授業を終えて解散となった。


なのだが……。


「……何でまだいるんだ、ナナオ?」


それと、大型アームのカルイと、元傭兵のミコシ。


「私はね、才能はないのかもしれないけれど、人の話はちゃんと聞いてるわ」


ふむ。


「あんた、言ったわよね?『位置データは常に公開している、二十四時間受け付けてる』って」


ほう、そこに気付くとは。


+1点だな。


「素晴らしい、そう言うことだ。日常会話の中でも、俺を感心させることができれば、得点はある……」


「戦いの才能がないことは、薄々自覚してたわ。なら、戦い以外であんたを感心させれば良い!」


「そうだ!その通りだ、ナナオ。お前は賢いな!」


うーん、良いぞ。


こう言う、言外の意味を汲み取れる奴は、外交官向きだ。


戦闘中の『気付き』こそが機甲道の極意なのだが、会話の中での『気付き』は、素晴らしい交渉人の才能だな。


「それに、あんたは軍の高官なんでしょう?軍の高官と無制限に話せる機会なんて、貴重だわ。学園長推薦も確かに欲しいけれど、あんたに教えを受けたい気持ちも、今はあるわ」


おおー……!


良いぞ、こいつは。


見れば、他にも、授業が終わったのに俺の方に向かってくる生徒が何人もいる。


こりゃ素晴らしい。


「じゃあ、昼食を食べながら質問でも受け付けるとするか」




バーガーショップ、『マクダニエル』……。


やっすい合成食材のジャンクフードが特徴の、チェーン店だ。


発祥はアメリカだったんだが、あの国は第三次世界大戦でほぼ壊滅し、大きく衰退したからな。


その時に、日本のメガコーポにM&Aされて、今はもう日本企業だな。


うーん、お安い味だ。雑に美味い。


化学調味料まみれのソースに、パサパサの肉とパン。


なけなしの肉汁とべったりとしたソースの油分で、無理矢理にパサパサの肉とパンを咀嚼する……。


だがこれでも、荒廃した欧州アメリカや、滅亡した中国ロシアの食事と比べれば、天国のような味だ。


後進国の飲食物となると、最早割り切って、味覚センサをオフラインにした方がマシな始末。


本当、この世は地獄だぜ!


「で、ナナオちゃん、何が聞きたいのー?」


ボケーっとしながら、大型の掘削アームの爪で器用にボトルを掴み、太いストローで合成アイスクリームを吸うカルイ。


合成アイスクリームはなあ……、合成スキムミルクと合成糖類の混合物というゴミなのだが、味覚センサに作用するナノマシンを配合することにより、「味だけは」マシにしたよく分からん何かだからな……。


まあ今時天然食材なんて、金持ちしか食えんか……。


「カルイ……。相手は軍の高官よ?聞きたいことなんて山ほどあるじゃない!」


「例えばー?」


「欧州戦役の話とかよ!戦争の話は検閲されてて、ダークウェブくらいにしか流れてないんだから!」


「おー、そうだねえ」


「それに、軍用のインプラントにも興味あるし……」


「そうだ!それを言えば、先生ってインプラント何入れてるの?」


カルイに聞かれた。


何入れてるってか、95%がインプラントなんで、入れてるって表現は正しくないな。最早俺が入っていると言うべきだ。


俺は、胸をはだけさせて、型番を見せてやった。


「「「「……『サクラダK.K.製HIDDEN00』?」」」」


首を傾げる女の子達。


「ヒデュン、ゼロゼロ?どういう意味?」


「隠されたゼロ〜?意味分かんないー」


はは。


「こりゃ、『秘伝無限』って読むんだよ」


「へー……、ん?あれ?型番は?」


「型番が、秘伝無限なんだ」


「そんな馬鹿な……。三文字のアルファベットと八桁の数字コードの組み合わせでしょ?」


「うんそうだな。既製品はな」


「………………もしかして、それ、ワンオフ品?」


「さあ、どうだろうな?」


「バカーーーーーッ!!!!サクラダK.K.のワンオフインプラントなんて、型番知るだけでもヤバいわよ!!!!」


「大丈夫大丈夫。……あぁ、でも、もし何があれば『飯草夏吉に許可された』と言え。逆にそれ以外は口を開くなよ。サクラダK.K.の一級バウンサーは容赦しないからな」


「一級バウンサーが来るの?!!!そんなレベルの秘匿情報?!!!!」


「いや、逆に一級レベルなら話が通じるぞ。低級は有無を言わさず殺しにくるもんよ」


「何で言っちゃうの?!何で言っちゃうの?!!」


「世の中には、あえて秘匿情報をばら撒くことによって、不特定多数の人間をバウンサーの的にして殺すタイプのテロもあるということだ」


「そんなの、あんたしかできないでしょ?!」


「いや、そうでもない。2098年の『殺人ウイルス事件』を知っているか?実はあれはな〜……」




そんな感じで、バーガーを齧りながら講釈を垂れる俺。


「……と、まあ、そんな感じで、真実は『光芒』の攻撃だった訳だな」


「な、なるほど……」


「他に質問は?」


「そ、それじゃあ、軍部の話を……」


と、ナナオが身を乗り出すが。


「そんなのいいよー!それより、先生のこと、もっと知りたいなあ」


と、俺にくっついてきたカルイ。


へえ、色仕掛け。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る