第12話 タマシイの在処
次の時間に授業がない子達が集まって、グラウンドに来ていた。
「あ、備品って借りて良いのか?」
「ええ、良いわよ」
隣にいたツンデレツインテのナナオがそう言った。
恐らくは、備品をどうこうする権限が、この子にあるんだろう。
聞けば、基本的に教師はほぼいないから、学校の運営や事務も全部生徒がやっているらしい。
つまりは、風紀委員としてそこそこの立場にあるナナオには、訓練用の備品を貸し出す権限がある、と。
OKなら使わせてもらおうか。
俺は、クイックハッキングで倉庫内の訓練用ロボットを全て操作して、連れてくる。
「ッ……?!クイックハッキング?!しかも、これだけの多重並列で?!!」
ん、ああ、そうか。
民間用のニューロチップにクイックハッキング機能なんてついてないからな。
脱獄してニューロチップを改造し、IoT機器への接続用の電波発生プログラムをハッキングプログラムにすり替えればいいだけなので、民間人もできると言えばできるが、その場合は違法改造の為に保証が効かなくなって万一の時に大変困る。
俺?
俺のは軍用の特別製だもんよ。
「よし、じゃあ、ナナオ。早速、風紀委員のエリート様とやらの実力を見せてくれよ」
そう言いながら俺は、十体の訓練用ロボットに、脳内メモリにある軍用の戦闘プログラムをインストールする……。
『『『『排除、開始』』』』
「ちょっ待っ、う、嘘でしょ?!動きが良過ぎる?!!」
逃げ回って、グラウンドの射撃場にある遮蔽物に身を隠すナナオ。
そして、息を整えると……。
カスタムオートマチックピストルを引き抜いて、叫んだ!
「『Please give me gloves for fox hand!(このお手々にちょうどいい手袋を下さいな!)』」
瞬間、通電!
電子制御式のオートマチックピストルと、ナナオの電脳が無線通信により接続!
脳内の火器管制プログラム制御と、眼球にインプラントされた高機能カメラ。腕神経を代替する精密な神経ファイバ。
眼球インプラントカメラで捉えた敵を認識するや否や、脳内のコア・プロセッサにより映像が高速で処理され、AIによる敵の動きの予測結果を今までの経験パターンを参照に割り出し……。
移動予測先に、神経ファイバから電気の速さで発せられる命令信号を受けたマッスルアンプにより、強装弾を的確にロボットに撃ち込む!
正確に撃ち込まれた強装弾は、一発も外れることなくロボット部隊のボディに撃ち込まれる……。
十体の内、三体のロボットが行動不能判定だ。
が、ロボット達は即座にフォーメーションを組み直し、訓練用の弱装ゴム弾を撃ち返してくる。
それに対して、背中を丸め、遮蔽物に隠れて移動して逃げて、素早く遮蔽物から身を乗り出してウィーバースタンスでハンドガンを撃ち込むナナオ。
上手い、上手いんだが……。
仕留める効率が悪いな。基本的に手足を狙って、無力化することを主眼に置いた射撃術。
警察官などの射撃術だ。
殺すつもりの顔面や胴体への射撃が一番効果的なのだが、それをやらない、いや、できないようだ。恐らくは捕縛用の戦闘プログラムしか入れていないんだろう。
だから、軍用プログラムにどんどん追い詰められて……。
「きゃああっ!!!」
撃たれる、と。
弱装ゴム弾だからちょっとアザになる程度だな。
が、それでも、弾丸を身に受けてボコボコになったナナオは、半泣きになりながらこう怒鳴った。
「あんなの無理よ!軍用プログラムじゃない!」
うーん?そうだろうか?
「スペック的には勝てるラインだと思ったんだが」
「無!理!……私の普段の相手は暴徒と化した生徒くらいよ?!何で本国の軍用プログラムに勝てると思ったの?」
どうやら、日本の女子高生はそこまで強くはないようだな。
後進国の暗黒街には、型落ちの非正規品インプラントで軍と平気で戦う奴とかいる。
装備の質の話をすれば、確かに、この学園都市の女子高生のものの方が遥かに良い。
だが、南米製の非正規コピー品のようなインプラントで、軍警察と互角以上に戦うアウトロー達がいるというのもまた事実……。
やっぱり、魂だな。
後進国のアウトローは、生きる為にはなんでもするという、ギラギラとした魂の輝きを持っている。
この学園都市の子は、甘やかされてるな。
俺は、ナナオの手から拳銃をひったくる。
「手本を見せてやる」
そう言って、訓練用ロボットを再起動して、訓練を見せてやる。
まず俺は、ハンドガンを構えたまま、真っ直ぐに駆け出した。
「馬鹿なの?!撃たれるに決まって……!」
そう、ナナオの叫びの通りに、当然、集中射撃をされる。
だが、考えてみてほしい。
ロボットに魂はない。
魂のない攻撃は、簡単に対処できる。
俺の言う魂とは広義だが、こう言った場面ではつまり、『意』のような意味合いで言っている。
殺気、殺意。そう言うものが、ロボットが相手では簡単に読めてしまうのだ。
いつ、どこに撃ち込んでくるか?それが分かれば、例え生身でも攻撃を回避することは容易い。
俺はそう説明しながら、十体の訓練用ロボットの急所ポイントを撃ち抜いた。
「「「「……何言ってんのこの人?」」」」
ふむ、まあそうなるだろう。
なので、ちゃんと説明しようか……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます