第11話 ジコ紹介

「授業内容は、俺が、特殊部隊に必要と思われる知識を幅広く教えていくこととする」


「具体的には何を?」


生徒会長ちゃんに聞かれる。


うんうん、気になるよな。


だがなあ。


「特殊部隊の技能を体系的に分類することはできねえよ。だが俺は、俺が『合格』と認めた生徒は、次の日にいきなり丸腰で後進国に放り込まれても生還できるような能力を身につけさせるつもりだ」


「う、うーん……?」


分からないか?


「つまり俺は、お前らの能力を『総合値』で見ると言ってるんだ」


例えば……。


「生き残る力をつけさせんのが目的だろ?だから、敵を全員ぶっ殺せる強さを持っていても良い。敵を騙せる知恵があっても、敵と交渉できる口の上手さがあっても良い」


「なんか……、凄くファジーですね」


そうね。


「おう。だから、評価基準を出そう。今さっき、『1点加点』のホログラムを出したよな?」


「はい」


「100点取れたら、その時点でC判定合格とする。減点はしない」


「点を取るには?」


「その時々の『課題』を合格することだ。……例えば、さっき俺は、『質問の内容を十分でまとめて提出しろ』と言ったよな?それをこなしたから、加点だ」


「なるほど!」


「で、300点でB、500点でA判定。期間に制限はない」


「500点取れば、学園長推薦も……?」


「一種を出す。300点なら二種、100点でも三種は出すぞ」


「「「「おおーっ!!!」」」」


歓声。


まあ、気持ちは分からんでもない。


低学歴のまま卒業すれば、普通に犯罪者くらいしかやれる仕事はないからな。


福祉なんてもんはこの世界に最早ない。


働けなければ死あるのみ。


マジで本当に死ぬからな……。裏路地に死体とか当たり前よ。俺が生きていた令和の世は平和だった……。


まあすぐに戦争が始まって一瞬で治安は崩壊したけどな!


「でも、一つの課題で1点って……、それで500点取るのはかなりキツくない?」


誰かが言った。


ああ、そうだな。


だから、追加で説明をする。


「今のような軽い課題では1点だ。出席点みたいなもんだな。……だが、学園長からの依頼を達成、及びそれの補助をすれば、一気に50点くらいはやるぞ。まあ、内容によっては危険もあるだろうが」


「「「「おおーっ!!!」」」」


「まあ基本的には、俺と百回会話すれば、上手くいけば学園長推薦を貰えるかもしれん、みたいな感じだな。やる気ない奴も話しかけに来い。じゃあ、授業に関する質問はこれで良いか?」


「「「「はい!」」」」




で……、次は。


「俺についての質問?これは……、答える必要があるのか?」


「「「「聞きたいですー!」」」」


ふーん。


まあ良いや、答えられるのだけ軽く答えるか。


「名前は瓜中バンジ、陸軍の歩兵部隊の大佐ということになっている」


「「「「ということになっている……?」」」」


「はーい、ダメだぞお前らー。その辺深掘りすると碌なことにならなそうだから、スルーしとけー!」


おっ、生徒会長、ファインプレー。


俺としては、正体を特に隠そうとは思っていない。


ただ、知り過ぎると軍が殺しに来るだろうから、気を遣ってヤバい情報を吐いていないだけだ。


結構ヤバいことを口にしているように見えるが、本当にヤバいことは言ってない。


部隊の名前やコードネームくらいなら、知ろうと思えば知れるからな。


言うとヤバいのは軍編成の詳細やら、企業の秘匿技術やらだ。


俺の正体も、軍上層部では「公然の秘密」みたいな扱いだしな。


この時代では、軍=政府=メガコーポなので、俺のことを知る奴は、実は結構いる。


……とは言え、知られていることは「百年以上生きるサイボーグで、大戦の英雄にして、地上最強のワンマンアーミー」であることくらいだが。


「趣味は……、そうだなあ、色々あるが、基本的には機械弄りと酒と、あと音楽かな」


「車とかですか?」


「おう、車もバイクも、飛行車もだな。家のガレージには三十台くらいあるぞ」


「「「「おおーっ!!!」」」」


恐らくは、工業系と思われる、ツナギや白衣の女の子達が色めき立つ。


「銃やロボットもまあ弄るなあ。一応、メディテックの真似事もできる。死にかけたらうちにきても治してやれるぞ」


銃と聞いて、軍学系の子達がこちらを見る。


医学系の子達もだ。


「音楽って何を聞きますか?」


「パンクロックかね。ニルヴァーナ、パール・ジャム、セックス・ピストルズやクラッシュも最高だ」


「「「「………………?」」」」


全員、首を傾げる。


まあ、そりゃそうか。


百年以上前のロックバンドなんて、今時のガキは知らんだろうよ。


「好きなものは……、可愛い女の子だな。あとは、トラヤ・フードカンパニーのオーガニック羊羹とか。酒ならサカグラ・ドリンクのオーガニックブランデーか」


「お、おう……」


あっさりと女好きを告白する俺を見て、様々なリアクション。


驚く子、引く子、頬を染める子色々。


「特技?……まあ、色々とある。それをこれから教えるのが授業だ」


さて、こんなもんでいいか。


「さ、暇な奴はグラウンドにでも来い。訓練するぞー」

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