第7話 イヌとコマドリ

「まあ待てよナナオ。本気で嫌がってんならやめるさ」


「私、本気で嫌なんだけど?!!!」


ん?


いや、嘘だろそれは。


魂の色を見れば分かるし、魂の匂いを嗅げば簡単だ。


嘘かどうかなんて、見ないでも分かる。


ナナオは、本心では少しドキドキしているし、嫌悪感は限りなく少なく、それより驚きと混乱が大きい。


俺はそう伝えた。


「……はぁ?魂?あんた、何言ってんの?」


「俺の特技でね。俺には魂が見えるんだ」


「で、私は本心では嫌がってないって?」


「ああ、そうだ」


「キモ……。嘘つかないでよね!」


んー。


試しに、おっぱいを揉んでみる。


「ひゃ?!!な、にゃ、何すんのよっ!!!」


うーん、やっぱり、嫌がってないな。


「本気でセクハラされたくない人間は、もっと猛烈に拒否するんだが……」


「きょ、拒否してるでしょ?!見て分かんないの?!」


分かんねえなあ……。


「顔の良い男に構ってもらえて嬉しがってるようにしか見えんが」


「こ、このっ!馬鹿っ!最低!変態!」


おー、蹴るわ蹴るわ。


ま、良いや。


案内させるか……。




「あんたみたいなド変態は、私が見張ってなきゃならないんだから!もうこの際私は良いけど、他の子に手出ししたら殺すからねっ!!!」


「つまり、『私だけを見て』という解釈でOK?」


「頭おかしいんじゃないのあんた????」


そう言って、ナナオの肩を抱いたまま移動して、教室につく。


すると……。


「うわー、ナナオちゃん、彼氏できたのー?」


「ほう、良い男じゃないか」


小学生にしか見えないロリと、大人にしか見えない美女が二人いた。


両方、共に、別の意味でだが死ぬほど女子高の制服が似合っていない。


「やめてよ、カルイ!ミコシ!言っとくけどこいつ、かなりの変態だからね?!今もセクハラされてるじゃん私?!!」


「えー?そういうプレイなのかなーって」


そう言ってとぼけるロリは、ピンク色と白色を組み合わせたフワッとしたロングヘアで。


両腕に、可変式の工業用掘削アームを取り付けた、重サイボーグだった。


何故か、お遊びみたいな犬耳と犬尻尾のインプラントも付けている。謎だな。


制服は、ブレザーの上着は着ずに、半袖のシャツだけを着ている。


んー、全体的にゆるふわ系で可愛いなあ。


特に意味もなく抱っこしてみる。


「へ……?う、嘘ぉ……?」


ん?


どうしたんだ?


「あ、あんた、どうやってんのそれ?」


「何がだ?」


俺は、ゆるふわロリを抱き上げて抱きしめる。


わー、甘い匂い。


サイボーグじゃない生肉の匂いだあ。


サイボーグ率が高いと体臭が変わるからなあ。


「カルイ……、その子の体重は、大型の工業用掘削アームと、内蔵されたマッスルシリンダーで、250kgは超えるのよ……?!見たところマッスルアンプもないのに、どうやって……?!!」


あー?


なるほど。


つまり、俺が見た目では機械化率が低そうなのに、どこにそんな力があるんだ?と驚いている訳だ。


まあその辺の話をすると、サクラダK.K.の極秘技術になるからなあ。


「何でだろうね、おかしいね」


と、適当に返しておくか。


「わー!私、イケメンに抱っこされてるー?さいこぉ〜!」


ギギギと音を立てて動くアームで抱きしめ返される俺。


お、結構パワーあるな。


で、もう片方の老け顔女は……。


「ん?すまない、何処かで会ったことがないか?」


と、何故かナンパしてきた。


太え野郎だぜ。物理的にもな。


褐色肌に黒の癖あり長髪。片目を髪で隠す。


その上で、乳も尻もタッパもデカい。


筋肉もある。


制服はスカートではなくズボンを履き、SWAT用のタクティカルベストをシャツの上から着込み、その上にブレザーを羽織っているな。


更に……。


「……お前、軍用サイボーグだな?機械化率40%はある」


軍用サイボーグであることも分かる。


サイボーグ、機械化率を高め過ぎると、拒絶反応で心神喪失になる『改造鬱』という病気がある。


そのボーダーラインが30%なのだ。


民間人は、法律でも、30%以上のサイボーグ化を禁じられている……。


だが、特別な訓練と投薬で、機械化率を50%まで上げることができる……。


その機械化率を高めたサイボーグは、軍用サイボーグと定義される。


因みに、余談だが。


機械化率50%を超えるサイボーグは、『改造鬱』だけでなく、肉体的な拒絶反応から脳死率が高まっていく。


これ以上の機械化は非常に危険な手術となり、安全マージンを取れる限界は60%で。


70%ともなれば、生き残れる確率は数千人に一人と言われている。


そんな中で40%は、かなりのものだ。


兵士としてもやっていけるくらいだな。


「その問いには肯定しよう。それより、答えてくれないか?思い出せないが……、何処かで会っているはずなんだ」


んー……?


「すまんが、覚えてないな。肌色からして日本出身ではないだろ?」


「ん、ああ。私はインド難民を親に持つ、ヨーロッパ人の二世だ」


「ああ、あのポンコツロボットに滅ぼされたインドの……」


「はは、かつて世界を滅ぼしかけた『光芒』のことをポンコツロボット呼ばわりとは。貴方は愉快な人だな」


よし、乳揉んどこ。


……んん?


こりゃ、皮下装甲じゃねえか!


皮下装甲インプラント入れた女は、抱き心地が柔こくないから嫌なんだよなあ……。


あ、でもおっぱいは生だな。


恐らく、肋骨に沿うように装甲を入れていて、おっぱいは装甲の上に貼り付けている感じなんだろう。


「んー、皮下装甲がなあ」


「ふむ?触っただけで分かるのか?相当に歴戦の勇士なのだな」


感心して頷く褐色女。


「ちょっ、ミコシ?!何黙って揉ませてんのよっ!怒りなさいよっ!」


「そうは言われてもな……。このくらいのセクハラ、傭兵の世界では当たり前だったぞ?寧ろ、この方は揉み方が優しくて心地いいくらいだ」


「何言ってんのあんた?!!」


ほー、傭兵。


俺は、ロリを首にぶら下げながら、褐色女の乳をじっくり揉む。


「どこでやってたんだ?欧州か?」


「んっ……♡そうだな、インド難民は立場上、軍人として最前線に出なければならないからな。だから私は、ほぼ違法ながらも40%の機械化をして、前線に立たせてもらった」


「ほー、なるほどな。前線となるとトルコ辺りか?」


「ああ。アナトリア基地にいた」


……ん?


アナトリア基地?


あー、もしかしたら、その辺に救援に行ったかもしれん。


で、アナトリア基地のインド人傭兵というと……。


「『第八◯八外人部隊』……、『クック・ロビン』か」


ああ、思い出した。


最前線のどん詰まり、「死のアナトリア」の憐れな駒鳥……。


「……その名をどこで聞いた?」


すう、と。


目を細める褐色女。


「いや、知り合いからね」


「そうか。その知り合いとは……、コードネーム『ダーク・レイヴン』という男ではないか?」


え?俺?

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