第6話 赤色コギツネ

そんな訳で、教師登録の手続きを終えた。


第一高校の教師には、「自由教師ですから、とりあえず、色々な高校を巡って雰囲気を掴んでみると良いですよ!」と言われたので、その通りにする。


第一高校は、パッと見た感じ全然合わない。


軍を思い出す規律と画一性で、頭が痛くなってくるからな。


俺はワンマンアーミーで、周りと合わせるのは苦手なんだ。


いや、ワンマンアーミーになりたくてなった訳ではなく、俺の周りのアーミー達はもうみんな死んだので、結果的にワンマンになったというだけの話だが。


そんな訳で第一高校をホームにするのは無しだな。


で、家がセントラル・エリアにあるから、セントラル・エリアから車で一時間圏内くらいのところがいい。


家から一時間で行けるエリアとなると……、『カブキ・シティ』『アキバ・エリア』『アサクサ・シティ』『オモテサンドー』『オダイバ』……。


まあ大抵のところには行けるだろうな。


アキバは工業高校、アサクサは体育高校、オモテサンドーは服飾や芸術、オダイバは芸能関係だとか。


となると……、やはり、治安は少し悪いが、一番面白い歓楽街エリアである、カブキ・シティに行くべきだな。


カブキ・シティを支配する学校、アイリス学園……。


俺は、ここをホームにしたい。




アイリス学園。


軍学校の第一高校とは異なり、アイリス学園は普通高校だ。


基礎科目を満遍なく学べるところだな。


何より、制服も施設も最新でお洒落!


オモテサンドーの芸術的なお洒落さとは違い、真っ当に可愛い感じなのが高ポイントだ。


制服は藍色のブレザーで、学生の正装たる美しさがありつつも、女の子らしい可愛さがある。満点だな。


とりあえず俺は、このアイリス学園に入ってみた。


ここもまあ、何なんだろうか、物々しい受付だな。


銃弾や手榴弾、プラスチック拳銃の自動販売機がその辺にあるのは、この世界のどこの地域でも同じだが……。


第一高校ほどの防備ではないとは言え、車止めに偽装した遮蔽物が地面からせり上がる装置がある。


他にも、監視カメラはもちろんのこと、機銃が搭載された飛行ドローンに、壁に収納されたバズーカ砲などがスキャンできた。


うーん、中々にイカれているな。好きになれそうだ。


「こんにちは」


ん?


赤い髪をツインテールにした美少女サイボーグちゃんだ。


ちょいとキツめな顔付きなのが唆るねえ。


「こんにちは、お嬢ちゃん」


「おじょ……?!!ご、ごほん!瓜中先生ですね?」


キラキラの笑顔から、一瞬表情を歪めた赤髪ちゃんだが、すぐに取り繕いそう言ってきた。


はは、顔に出すとはまだまだ若いな。


「いかにも、自由教師として学園都市に赴任した、瓜中バンジだ。君は?」


「申し遅れました、『アイリス学園風紀委員会』の、坂本ナナオです」


ふむ、ナナオちゃん、ね。


改造可のはずなのにほぼ手を入れていないブレザーに、黒の装甲ジャンパーを羽織り、腰に六本ものハンドガンマガジンを巻いた子だ。


見て回ったから分かるのだが、基本的に、この学園都市に存在する学園の制服は、軍用の瞬間硬化合成布を使っている。


これなら、衝撃力はあまり殺せないかもしれないが、少なくとも小口径の軍用ライフルでも貫けないはず。


更にその上に、トラウマプレート入りの装甲ジャンパーを羽織るのは、「戦います」と言っているようなものだ。


んー、良いね。


戦う女子高生なんて、アニメみたいで最高。


「よろしくね、ナナオちゃん」


「は、はい……、きゃあ!」


肩を抱く。


「早速、学校を案内してくれよ」


「そ、そのっ!こ、困ります……!」


とは言うが、顔の良い男に迫られたからか、喜色を隠しきれていない。ニマニマしていらっしゃる。


これは行けるか?


ケツを揉んでみる。


「きゃあああっ!このっ!何すんのよっ!」


あ、ダメだ、蹴られた。


しゃあねえ、開き直ろう。


「可愛いお尻がそこにあったから……」


「何言ってんの?!!!」


「良いケツしてんね、陸上かなんかやってる?」


「……本当にキモい!折角かっこいい人だと思ったのに、信じらんない!!!」


おや、嫌われちゃったか。


「そう怒るなよ、これくらい軽いコミュニケーションだろ?」


「……殺す」


お、銃を抜いたか。


だが惜しいな。判断は早いが稚拙だ。


それは悪手だろうに。


発砲寸前のスライドを引きながら掴み、連動するハンマーを止める。


そして、テイクダウンラッチを小指で弾きつつそのままスライドを抜き取る。


「嘘?!」


そのまま腕を捻り上げ、頭を地面に押し込む……。


一秒ありゃ、ちょっと「火遊び」がお上手なガキくらい、こんなもんだ。


「ミブロ・セキュリティ・カンパニー製ハンドガン『コックリ』……。ショートリコイル式コンベンショナルダブルアクション、9mm弾使用ってか。強化フレームカスタムに———」


マガジンリリース、弾丸をスキャン。


「———ほう、9mmライオット弾。民生用にしては高いストッピングパワーを誇る暴徒鎮圧用弾丸だな。ガキにしては良い選択だ」


「うぎぎ……!あ、有り得ない!風紀委員会のエリートの私が、こんな一瞬で……!」


はい、解放。


そして、銃を元に戻して渡してやる。


「う……」


「殺そうと思って即座に銃を抜く思い切りの良さは褒めてやる。だが、撃つんなら俺と距離を取ってからにするべきだったな」


「は、はい……。じゃなくて!セ、セクハラよっ!」


んー?


「そりゃ、俺は女子高生といちゃつきたくて教師になったんだからなあ。多少は許してくれねーか?」


「最ッ低!」


まあそれは自覚してるよ。


だが、口には出さんが、それを許可したのはこの国な訳で。


つまりは……、この国は最低だな!!!

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