やさしい悪魔。

猫野 尻尾

第1話:デモネス・シェラ。

マルチバースとは現実世界とは別に存在する複数の平行現実世界や宇宙の

ことを言うらしい。

僕は見たことないから、なんとも言えない。


その中のひとつに、デーモン「悪魔」同士が派遣争いをしていて、いつも

揉めている学習の能力のないバカな悪魔たちがいた。

このままでは、歪みあったまま拉致があかないとようやく気付いた片方の

デーモンのボスが別の世界を支配して自分たちの独自の世界を構築しようと企んだ。


そしてこの地球が彼らのターゲットになった。

デーモンは地球ではエギゼキューターと名乗った。

なんでかは、知らないけど・・・格好をつけたかったからからだろう。


そのエギゼキューターの中の幹部クラスのデモネス「女悪魔」がまず先鋒で

地球にやって来ることになった。


そのデモネスの名前は「シェラ」

シェラは人工的に作られたクローン怪人を数体引き連れてやってきた。


「なんで幹部クラスの私が先鋒なのよ、バカにしてると思わない?」

「とっととやることやって帰るわよ、おまえら」



そしてかたや地球人の俺の名前は「満足 千太郎まんぞく せんたろう

現在、碌出裳内ろくでもない高等学校二年生。


僕の親父は世界的に有名な科学者「満足 千蔵まんぞく せんぞう

なんでもブラックホール派生装置とやらって物騒なモノを発明した。


その装置を狙って遠い異次元の世界から悪魔がやって来てることなんか

知る由もなかった。

だいいち異次元自体あるのかどうかも知らないし信じてなかったし

ましてや、悪魔なんて中世に人たちが人々に恐怖を植え付けるために

勝手に作り出した幻だろ?


この科学的平和な時代に、そんなものいるわけがない・・・って思ってた。



そして異世界からやって来たシェラたちは一軒の家の前にいた。


「この屋敷ね・・・ブラックホール発生装置とやらを発明した満足博士の

家ってのは・・・」

博士を捕まえてブラックホール発生装置の作り方か設計図を奪っちゃうわよ」


普通は裏の窓ガラスとかを割って侵入するんだけど、シェラは正面玄関から

ドアホンを鳴らした。


ピ〜ンポ〜ン、ピ〜ンポ〜ン。


「ふん、なんで私がコソ泥みたいなことしなきゃいけないのよ」

「こんなのは正面から堂々と入ればいいのよ」


「は〜い」


家の中から誰か男性の声がした。


「はい、なんでしょう?」


誰かがインターホンを鳴らしたので僕玄関に出た。


玄関ドアを開けたら、そこに顔色の悪い女が立っていた。


「なんでしょう?」


僕は顔色の悪い女にに向かってもう一度言った。


「あ、し、失礼しました」


そう言って顔色の悪い女は一旦玄関のドアを閉めた。


「なんだ?今の人?・・・めっちゃ顔色悪そうなんだけど・・・」


一方、シェラのほう


「なに、今の地球人・・・めっちゃ私のタイプなんだけど」

「めっちゃ、ドキドキするんだけど・・・なに?なに?」


で、シェラはもう一度、ゆっくりドアを開けた。

その時のシェラの目は完全にハートマークになっていた。

そして好き好き光線を出しまくっていた。

それが危害を加える代物なら満足家の室内は穴だらけになっていただろう。


「何かご用でしょうか?・・・」


シェラは後ろに群がっていたクローン怪人たちに言った。


「おまえら帰れ・・・もう用事ないから」

「ほらほら、とっとと帰れ帰れ・・・・もう帰れってばってば!!」


シェラは無理やりクローン怪人を追い返そうとした。

訳が分からないクローン怪人は首を傾げながら、しぶしぶマルチバースに

帰って行った。


なんでシェラはそんなことをしたのか?

それはね、彼女は玄関に現れた青年「千太郎」に一目惚れしたからだ。

千太郎を一目にてイカれてしまったって訳。


「ごめんね・・・特に用事って来た訳じゃなかったんだけど・・・」

「よかったらおニイさん、名前教えてくれる?」


「ああ、俺、満足 千太郎まんぞく せんたろうって言います」


「千太郎?・・・あのさ、千太郎、よかったら私の彼氏になってくれない?」


いきなりの先制攻撃だった。

悪魔は思い出に残るような素敵な馴れ初めなんかはどうでもいいのだ。


「は?なに言ってるんですか?唐突に・・・」


「だからね・・・千太郎のこと好きになっちゃったの、私」

「私の後ろにいた連中は返したから・・・・もう大丈夫だから」


「よく分からないんですけど・・・」


「あのね、私は、私たちはエギゼキューターって言って、この地球を侵略する

ためにやってきたの・・・」


「あ、私はシェラって言うの・・・よろしくね」


「はあ・・・どうも、シェラさん」


(それにしても顔色の悪いな〜・・・野菜とか食ってないのかな?)


「で?・・・今、侵略って言いました?」


「そう私たちは基本、悪い人たちだからね」

「で、まずはじめに私が先鋒でやってきて、満足博士が研究してるブラックホール

発生装置の作り方か設計図を盗もうと思ってね」

「最強の武器を手に入れたら、地球人を脅迫するのに手っ取り早いでしょ?」

「それで、今、千太郎んちにお邪魔してるわけ」


「俺、満足 千蔵まんぞく せんぞうの息子ですけど・・・」

「うん、分かるよ、バカじゃないからね、苗字一緒だもんね・・・」


「だからあ、もうブラックホール発生装置パクるって話はボツにしたから・・・

心配いらないから・・・お父さんも無事だから」


「はあ・・・それは、どうも」


「私、千太郎のためにエギゼキューター裏切るから・・・」

「これからは千太郎のためにあいつらと戦うからね」


「え?いいんですか、仲間でしょ・・・裏切ってもいいんですか?」


「いいのいいの・・・私にはあいつらより千太郎のほうが大事だもん」


「そうかもしれないですけど・・・僕に関係ないし、シェラさんの彼氏に

なるとも、なんとも言ってないですけど・・・」

「それって、シェラさんが勝手に決めてることでしょ?」


「あのね、女子に向かってそんな冷たいこと言わないの」

「千太郎がなんて言おうと私は決めたし、諦めないから」

「千太郎から離れないからね」


「一方的ですね・・・」

「困ったな〜」


「なんで困るの、惚れられるって幸せなことだよ?」

「男冥利に尽きるってもんでしょ?」


「まあ最初はそう思うかもしれないけど、絶対後悔はさせないから・・・」

「こう見えても顔色も悪いけど、優しいんだよ、私」

「それともあいつらの言いなりになりたい?」


「いや〜それも困るな〜・・・」

「なんかさ〜全部、把握しきれてないんだけど・・・突拍子すぎないですか?」


「まあ、そりゃね・・・私でも信じられないかも」

「とにかく私は千太郎に一目惚れしたの、だから迷わずエギゼキューターから

抜けることにしたから・・・」

「私は地球侵略なんてバカなことはやめたけど、エギゼキューターは大バカ

集団だから地球侵略を諦めないからね」

「そんな訳で、まだ脅威が去ったわけじゃないの」


「ってことで今日から私、満足家にいて千太郎と千太郎のお父さんをやつら

から守るから・・・いいよね、千太郎?」


「え?あ、うん」


「決まりね・・・私、今日から愛と正義のデモネスだから・・・」


そう言うとシェラは千太郎の見てる前で、いきなり戦闘用スーツに変身した。


スレンダーでボン、キュッ、ボーンなコスチュームに変身したシェラを見て

千太郎は思った。


「めちゃ、かっこいい〜」って・・・。


惚れたな・・・そんなもの、人を好きになるきっかけなんて。


地球を支配しにやってきたデモネス・シェラは千太郎に惚れちゃったせいで

平気で仲間を裏切った。。

女心と秋の空とはよく言ったもの・・・男心だっけ?


ってことでシェラはショッカーに改造人間にされて正義に目覚めた仮面ライダー

みたいに、この先千太郎とともにエギゼキューターと戦っていくことになるのです。


愛の力は悪魔の悪行さえも変える・・・愛とはそれほどデイープなもの。

愛なくして男と女の世界はなりたたないのです。


おしまい。




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