終の住処の見つけ方

高梨蒼

とある山間の村にて

「こんにちは〜!」

「あっ、こら!……どうも、突然すみません」

「おやおや、珍しいね。お若くてした人がこんなことろに。別に、この辺は……ばずる?ものなんてないんだが」

「あはは、そうじゃなくて……今度こちらへの入居を考えているのですが」

「内見……も大事ですけど、直接お話聞ければな、と!」

「そうか、そうか。……ここはいいところだよ、山ン中だけあって涼しいし。冬は少し堪えるけど」

「そうなんですか。近隣トラブルとかは?」

「俺ぁあんまりないね。なんか昔の人は、やれ苗字だ家系だって話してたらしいけど……そんな時代じゃないよね」

「あはは、それならよかった!」

「彼女さんも気に入ったかい、この辺。……奥さんかな?」

「まだ彼女ですっ! そうですね〜、この辺りは雰囲気がいいですよね。自然も多いし……果物も成ってる!」

「こらこら、果物って。あーいうのは食べちゃダメ」

「いやいや、あの辺のはもう半分放置されててなァ。地主の爺さんも食っていいって言ってたぞ」

「やったっ!」

「やれやれ……」

「他にも候補、探してたりするのかい」

「はい。海のそばとか……山の上とかですかね」

「ほうほう。やっぱりそっちもいい感じかな?」

「はい。眺めもいいですからね」

「でも海は潮風で家が悪くなるんですって……!」

「あぁ、それはまったく……恨めしいね」

「あははっ!そうですね、お姉さんもそんなこと、言ってました」

「山の方はどうだい?ここもまぁまぁ、森だけど……もっと上?」

「ええ。なかなか人もいないし、家族も会いに来てくれないって」

「その分静かでいいんですけど……家が雪に埋もれるときもあるって言われると、なかなか怖いですよね」

「うーん…そりゃ俺も嫌だなぁ」

「まぁ、ざっとこんなところです。他にも候補はあるんですが……」

「湖とかも見に行きたいよね〜!」

「まだまだかかりそうだね……まぁ、ここに決めたなら歓迎するよ」

「はーい! ありがとうございました!」

「ありがとうございました」



「なかなかいいところだったねぇ、あそこ」

「うん。やっぱり古戦場はいい。先住民の落ち武者とか、もう成仏してるしねぇ」

「次はどこだっけ?街中の……ビル?集合住宅かぁ」

「そうそう。多分、うるさい先住の人はいないはずなんだよね。それに賑やかで便利だし……」

「でもね〜……ロマンティックじゃないよ!」

「手厳しいなぁ」


「だって、心中は一生に一度!憑く土地は変えられないんだよ!?」


「うん……まぁ、そうだね。ビルは中止だ」

「いいの?」

「いいの。考えてみたら、現実から旅立ちたいのに街中は違うよね」

「ふふっ、そうだね!じゃ、次はどこの内見にする?」

「そうだなぁ……さっき言ってたし、湖の別荘地?」

「気のいい幽霊さんがいるといいねぇ!」


今日の内見:とある山間の古戦場

ポイント!:四季折々の景色が綺麗!

気に入り度:★★★★☆



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

終の住処の見つけ方 高梨蒼 @A01_Takanash1

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る