第9話 鎌老婆

2024年5月、あれから100年・・・


ここは、都内某所にある会社。


「おい修平、最近起こっている切り裂き殺人の話知ってるだろ?」

「ああ、知ってるよ」

「あれさ、まだ犯人捕まってないじゃん。その理由知ってるか?」

「えっ?何かあるのか?」

「あれさ、鎌老婆っていうやばい妖怪みたいな奴がやってるって話なんだよ」

「なんだそれ?」

「なんでも、今から100年前の5月、鎌老婆の話を聞いた奴は、そいつの鎌で切り裂かれて惨殺されるっていう伝説があるんだよ。

だから、殺された連中も鎌老婆の話を聞いて殺されたんじゃないかって」

「は?なにそれ?そんなバカみたいな話あるわけないだろ」

「俺も最初はそう思ったんだけどさ、とある地域では100年に一度の5月に、鎌老婆が現れるって言い伝えがあるんだよ。今年がちょうど100年目の5月。偶然とは思えないんだよな」

「ふ~ん。でもさ、それなら康太も俺も、いずれ鎌老婆に殺されるんじゃねえの?」

「かもね~♪」

「お前、楽しんでるだけだろ」

「そうとも言う~!!」

「はいはい、さっさと仕事しろよ」

「へ~い」


そんな、たわいもない会話の一つが行われていた。

ましてや、そんな話はただの迷信と思うのが普通だった。


そう、そのはずだった・・・


あれから一週間後


「おい、修平、ちょっと・・・」

「なんだよ急に」

「いいから、ちょっとこっち来い」


康太は、血相変えて修平を人の少ない場所へ連れていく。


「おい康太、俺にそんな趣味は無いぞ」

「ちげーよ、俺だってそんな趣味ねーよ!」

「なんなんだよいったい。仕事あるんだから手短にしろよ」

「・・・実はさ、この前の鎌老婆の話しただろ。あれさ、大学時代の先輩から聞いた話だったんだよ。

俺もさ、そんな事あるわけないと思ってたしさ、先輩が俺を怖がらせようと面白がって話した作り話だと思ったんだよ。

けど昨日、その先輩が切り裂き殺人の被害者になったんだよ・・・」

「えっ!?」


確かに、ニュースにもなっている。被害者がすでに数名出ているため、

大きく取り上げられている。


「なあ、修平。もしかして、本当に鎌老婆がやったんじゃないか。偶然とは思えねぇよ・・・」

「落ち着けよ康太。偶然に決まってんだろ。どこかのヤバい殺人犯の仕業だろ。そんな話が影響するはずないだろ」

「でもよ、俺この話を同じ営業部の同期5人に話しちまったんだよ。

もし、これが影響してみんな死んでしまったら・・・」

「大丈夫だよ。そんな話ただの迷信に決まってるだろ」


修平は何度も康太を説得するが、康太は顔が青ざめたまま。

ひとまず、修平は仕事に戻り、康太は早退した。


そして、翌日


康太と、同じ営業部5人が切り裂き殺人にて死亡した。

体中切り裂かれ、部屋が血まみれの状態で死亡していた。


「う、うそだろ、康太・・・」


偶然なのか、本当に鎌老婆の仕業なのか。

修平は、恐怖に襲われる。


「どうすればいいんだ・・・」


今日は5月31日。修平は、今日が過ぎれば鎌老婆は現れないのではと考える。


「ただの迷信かもしれないけど、偶然にしては出来すぎている。

もし言い伝えが本当なら、明日まで頑張れば・・・」


そこで、修平は大学時代の剣道部の先輩である御堂の家に泊めてもらうことにする。

先輩は大学時代、優勝経験のある最強の部員だった。

この人と一緒なら、なんとか助かるかも知れない。

わらにもすがる思いで、先輩の家へ駆けつける。


「先輩、そういう理由わけなんで、今日泊めてもらっていいすか?」

「お前正気か?いくら何でも、そんなバカすぎる話誰が信じるんだよ」

「いや、俺も最初はそう思っていたんすけど、周りの知り合いがみんな殺されて・・・」

「はいはい、お前がそんな甘えん坊だとは思わなかったよ。

まあいい。泊めてやるから、ちょっとビール買ってきてくれ。駅前にコンビニあるから」

「えっと、今からですか?」

「当たり前だろ。俺は今からリモートで彼女と話しするんだから。ゆっくり行ってこい」


出来れば先輩の傍を離れたくなかったが、泊めてくれなくなると困るので急いでコンビニへ行き、ビールを購入した。

そして、先輩の家に戻る。


「先輩、ビール買ってきましたよ。先輩?」


部屋が妙に静かだった。

嫌な予感がする。

修平は、恐る恐る御堂のいる部屋へと行くと、

御堂は血まみれの状態で死んでいた。

刃物で全身を切り刻まれていた。


「うわああああああああああああああああああ!!!!!!!!」


修平は、悲鳴をあげた。

そして、テーブルの上にある御堂のスマホを見ると、

先ほどまで御堂とリモートで会話していた彼女の様子が見える。

そこには、御堂と同じように切り裂かれ殺されていた御堂の彼女が映っていた。


「う、うそだろ?まさか、先輩まで・・・」


修平は、すぐにでもその場から逃げ出そうとした。

そして玄関の方を振り向くと、

血の滴る大きな鎌を持った、不気味な笑顔を浮かべる老婆がいた。


「ま、まさか・・・あいつが鎌老婆!?」


修平の足は震えていた。

このままでは、鎌老婆に殺される。

だが、このまま死にたくはない。


部屋にあった、先輩が使っていた竹刀を手に取り、

臨戦態勢に入る。


「俺だって、長年剣道やってたんだ。簡単に殺されてたまるか!!」


修平は一気に鎌老婆を攻撃しようとした。

しかし、鎌老婆は一瞬で修平に近づき、修平の脇腹に鎌を刺し込む。


「ぐあああああああああああああああああ!!!!!!!」


修平に激痛が走る。

持っていた竹刀も落とし、その場で転げまわる。


「い、痛い、だれか、助けて・・・」


そして、鎌老婆は修平の手、足、肩、胸、顔、そして首。

次々と切り裂いていく。

部屋は、御堂と修平の血で溢れていた。


修平を殺した鎌老婆は、その場から姿を消した。


修平の死を最後に、切り裂き事件は無くなった。

警察は犯人を捜そうと躍起になっているが、手掛かりは何もつかめていなかった。

結果として、この事件は迷宮入りとなる。



みなさんもお気をつけください。



だって



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