第8話 不気味すぎる教授

高校を卒業し、ずっと目標にしていた都内の女子大学に合格した。

この大学へ入るために、猛勉強をした。

その結果が報われ、晴れて春から大学生。

これから、楽しいキャンパスライフが待っていると思っていた。


あの教授に出会うまでは・・・


「やあ、久川さん。今日もかわいいね。勉強頑張ってるかい?」


声をかけてきたのは、大山教授。

見た目はハゲでデブで息が荒く、しかも汗がすごい。

いかにも、気持ち悪い中年男性という感じだ。


この教授が、いつも私に声をかけてくる。


「あの、教授。お気になさらなくても頑張ってますので」

「そんな気を使わなくてもいいよ。君は本当に良い生徒だ。

これから、談話室で話でもしないかい?」

「いえ、用事があるので、失礼します」


毎日毎日、私にだけ異常なレベルで声をかけてくる。

本当に、気持ち悪い。

けど、教授の授業は必修科目なので避けられない。

憧れて入った大学なのに、教授のせいで1日でも早く卒業したいという気持ちが芽生えてしまった。


「やあ、久川さん。今日もチャーミングだね」


今時まず使わないような言葉を投げかける。

毎日毎日、本当に嫌になる。


「あの、教授。私は生徒です。あまり、私にだけ必要以上に声をかけるのはどうかと思うのですが」


なんとか教授を遠ざけようと試行錯誤するが、

のれんに腕押しだった。


「だから、気を使わなくてもいいんだよ。私と君の仲じゃないか。

もっともっと、たくさんお話しようよ」


勝手に仲良しみたいに言うのはやめてほしい。

不愉快で仕方無い。


「ところで久川さん、君は彼氏はいるのかい?」


信じられない事を聞いてくる。

教授が生徒に対して聞くような質問じゃない。


「もちろん、いますよ」


本当は彼氏はいない。だけど、そう言わないとますます近づいてきそうで嫌だった。

だから彼氏がいるとウソをついた。


「そうなの?その彼氏とはどれくらい付き合っているの?」

「べ、別に教授には関係ないですよね?」

「彼氏とはうまくいってるの?どのくらいデートしてるの?

エッチは頻繁にしてる?」


もはやセクハラでしかない。

こんな事を平気で聞ける神経が理解できない。


「プライベートな事なので、お答えできません」

「本当に付き合ってるの?」

「付き合ってます。教授には関係ないです」

「う~ん、ダメだよそんな男と付き合っちゃ。エッチもたんぱくだろ?

私だったらそんな男みたいな事はしない。もっと幸せに出来るよ」


分かってはいたけど、キモい教授のクセして私の事を狙っている。

歳も30は離れていると思うけど、教授という立場がありながら生徒に平気で迫るとか、頭がおかしいのかこの変態教授は。


「用事あるので帰ります」


出来るだけ冷たい対応をして、教授を引き離そうとした。

しかし、教授には通じない。


毎日毎日、私に声をかけてくる。

こんな事が続くものだから、学校内でも噂になっていた。

教授と私が、付き合っているのではと・・・


「やあ、久川さん。今日もかわいいね」


相変わらず、キモく話しかけて来る。

しかし、今回ばかりは私も怒りが頂点に達した。


「いい加減にしてください教授!あなた、何のつもりなんですか?

教授が私にいつも声をかけるせいで、変な噂まで広がってるんですよ!!

教授と私が付き合ってるっていう、最悪な噂が!」

「そうなのかい?いいじゃないか。それだけ、私と君はお似合いだという認識なんだと思うよ」

「そんなわけ無いでしょ!!教授がこれ以上私に付きまとうなら、私は法的な措置も検討しますし、大学の上の方にも話を通します。私、本当に迷惑してるんです。

私は、教授の事が心底嫌いなんですよ!

もう、私に2度と付きまとわないでください!!」


さすがにこたえたのか、教授は何も言わなかった。

私はそのまま、教室を後にした。


前期も終わり、夏休みが始まった。

教授の科目は単位を落とされるのではないかと不安だったが、

そこは大丈夫だった。

気持ちも落ち着いた頃、私は実家に帰る事にした。


「ただいま」

「あら、みどりちゃん、おかえりなさい!大学はどう?楽しんでる?」

「うん、とても充実した生活送ってるよ!」


教授のせいで気分はずっと沈んでいたが、今はもう問題無い。

なんせ、怒鳴った時の教授の本気で困った顔は傑作だったから。


「あれ、誰かお客さん来てるの?」

「そうそう、せっかくだからみどりちゃんに紹介するわね。

今ね、私がお付き合いしている方が来てるの。

お母さん、今後その方との再婚も考えてるのよ!」

「そうなの?お母さんやるじゃん!」

「ウフフ!今、とっても幸せなの!」

「ねえねえ、どんな人?」

「今呼んであげる。ねえ、五郎さん、娘が帰って来たの!会ってあげて!」


そして、1人の男性が出てきた。

そして、私は唖然とした。


そう、目の前にいたのは、大山教授だった。


私の頭の中は真っ白になった。


なんで、教授がうちにいるの?


なんで、お母さんと付き合ってるの?


なんで、今私の目の前にいるの?


なんで・・・・・・・・・・・・


「あら、驚いて声も出ないのかしら?

五郎さん、うちの娘のみどりですよ!」


そして大山教授は。不気味な笑みを浮かべながら言う。


「これからもずっとよろしくね、

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