第7話 ブラック企業  

「はぁ・・・、今日もハードな仕事と残業、限界よ・・・」


と、いつものようにつぶやく彼女は、某IT系企業の社員。

大学卒業後、この会社に入社したが、ケタ違いにハードな仕事内容だった。

いわゆる、ブラック企業というやつだ。


「入社した時、2つ上の先輩がとても優しくて親切で、

あの人のおかげで仕事続けられたけど、昨年辞めちゃったのよね。

そりゃあ、こんな会社じゃ辞めたくもなるよね。

はぁ、私も辞めたい」


最近、ずっとこんな調子だ。

ストレスは限界レベルで溜まっている。


「おい、尾崎、例の件ちゃんと片付いたんだろうな!?」

「す、すみません。まだ時間がかかりそうです」

「は?まだやってんのか?ほんと無能だなお前は。

俺たちは遊びでやってんじゃ無いんだよ。

お前を只で雇ってるんじゃないんだよ。

ちゃんと報酬に見合った仕事しろよバカが」


言うほど給料も高くない会社。

それなのに、明らかにキャパオーバーな仕事量。

とても、1人で仕上げられそうにない。


「もう、ヤダこの会社」

「おい、尾崎!A社のデータまとめたか?」

「い、今やってます!」

「早くしろ、このノロマ!」


別の上司が、追い打ちをかけるように怒号を飛ばす。


「先輩、大丈夫ですか?」

「ああ、美咲ちゃん。ありがとう、大丈夫よ」

「ほんと、部長さんて怖いですよね。容赦なく無理難題ふっかけてくるし」

「気にしちゃダメよ。ここは切り替えて、仕事早く終わらせよ!」

「先輩・・・」


親しい後輩にも心配される始末。

もう、1分1秒でも早く帰りたい。

そんな事ばかり考える毎日を送っていた。


「思えば、ここに入社してから辞めた人、けっこういたよなぁ。

不思議なぐらいみんな美人さんばかりで、今いる人も美人さんばかりなんだけど、

こんだけ忙しければ、化粧のノリも悪くなるよね」


実は彼女も、けっこうな美人だ。

大学時代、ミスコンで優勝している。


「もう無理、やっぱり来月でこの会社辞めよう。

辞めて実家に帰って、新しい道を探そう」


次の日、退職を決意した尾崎は、部長にその旨を伝える。


「部長、来月いっぱいで退職を希望します」

「・・・そうか。分かった」


思ってたより、あっさりと受け取ってくれた。

すごく緊張していた尾崎だったが、おかげでホッとした。


「今までお世話になりました」

「いや、かまわんよ。まあ、そこに座りなさい」


言われた通り、腰をかける。

そして、部長はお茶を出してくれた。


「すまなかったな。私も色々と厳しい事を言って」

「いいえ、そんな。私こそ力不足で申し訳ございません」


あれほど厳しかった部長が、今日はとても優しい。

少し不気味に思いながらも、出てきたお茶を飲んだ。


「では部長、業務に戻ります」


そして立ち上がろうとしたところ、意識が朦朧もうろうとする。


「あ、あれ、何で・・・」


そのまま、尾崎は気を失った。



・・・



気がつくと、見知らぬ部屋にいた。


「ここ、どこ?」


かなり長い時間眠っていたのか、体がとても重い。

意識もまだはっきりと戻らない。

思うように体は動かない状態だった。


「おい、目が覚めたか」


聞き慣れた声がする。

そう、部長の声だった。


「ぶ、部長、ここはいったい・・・」

「ここはな、中東のとある場所だよ」

「中東!?なんでそんなとこにいるんですか!?」

「なぜって?お前には。これからここで頑張ってもらうんだよ」

「頑張るって、何をですか?」

「決まってるだろ、この紛争地域で頑張る戦士の方々のために、慰み者になってもらうんだよ」

「な、何言ってるんですか、部長・・・」


突然、そのような事を言われても何がなんだか分からない。

尾崎は混乱していたが、ふと横を見る。

そこには、痩せ細った女性がうなだれていた。

体中に赤い斑点があり、目はうつろ。

かろうじて生きているような状態だった。


「うそ、先輩・・・」


そう、そこにうなだれていたのは、昨年まで世話になった先輩社員だ。

しかし、あの時の面影が無くなるほど、変わり果てた姿だった。


「そんな、なんでこんな事に・・・」

「ああ。そいつにもここで頑張ってもらったんだがな、病気になって

今じゃ使いもんになりゃしない。

そこで代わりが必要だったんだが、ちょうどお前が辞めたいと言い出したからな。

都合が良いと思ったんだよ」

「えっ、まさか・・・今まで辞めた人達はみんな・・・」

「おお、察しがいいな。うちの会社はな、表向きはIT系企業だが、裏では戦争で使える物を作っている。

だから、この地域は闇のお得意様なんだよ。だから、今後とも贔屓ひいきにしていただくために、お前たちには体をはって頑張ってもらうんだよ。この国でな」

「信じられない・・・あなたはそれでも人間ですか!!」

「人間だとも。人間だからこそ、欲望に素直なんだよ。

お前のような甘ったれた事を言っている奴は、ただのイレギュラーだと思うがね」

「ふざけないでください!!私はこんな所で売春婦なんかしませんからね!!」

「売春婦?違うよ。兵士の方々の、ただの慰み者。つまり、性処理道具さ」

「どっちでも同じです!私は帰らせてもらいます!」


部屋から出ようとしたら、扉の先には複数の屈強な男達がいた。


「おお、来られましたか。新しいのを用意しましたので、どうぞお好きにお楽しみください」


そして、男達は尾崎を押さえつけ、服をはぎ取り始める。


「い、いや!何するの、やめて!!」


しかし、男達は手を止めない。

ただの、野獣と化している。


「じゃあ尾崎、これからよろしくな」

「いやあああ、誰か助けて、いやああああああああ!!!」


尾崎の悲鳴が響く中、部長は部屋を出て、外でタバコを吸い始める。


「ふぅ、あいつもいつまで持つかな。まあ、次の貢物を考えておくか。

そう言えば、尾崎の親しい後輩が、なかなか兵士様好みの女っぽいな。

よし、それでいくか」

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