第5話 死後判定所
僕は、自殺した。
理由は、クラスのみんなからイジめられた事が原因だ。
理由は、僕のブサイクすぎる見た目だった。
女子全員から気持ち悪いと言われ、
少しでも近付くと嫌な目で見られ、
たまたま少し体が触れでもしたら、大声を上げられる。
不良男子から毎日のように暴力を振るわれる。
さらに、殴られた後は必ず、
「手が汚れただろ、どうしてくれるんだ!」
と言われ、追加で暴力を振るわれる。
何度謝っても、許してくれない。
担任の女性教師も、明らかに僕の事は無視している。
以前、課題でどうしても分からない事があったから、
先生に聞きに行った。
すると先生は、
「ごめん、話しかけないでくれる?」
と言って、僕の質問を一切聞いてくれなかった。
家に帰っても、厳しい母が待っていた。
僕は勉強も出来なかったため、毎日叱られた。
以前、学校で毎日イジめられている事を打ち明けた事もある。
しかし母は、
「あなたが勉強出来ないから悪いのよ。勉強が出来れば、
誰もあなたをからかったりしないの。分かる?
あなたは勉強するしかないの。
勉強して良い成績を収めれば、あなたはみんなから認められるの」
それしか言わない。
いつも、勉強の事しか言わない。
そんな母に対して、父は何も言わない。
父は、
「家の事は、全てお前にまかせる」
と母に言って、家の事は基本何もしない。
昭和な脳の父親だったから。
友達もいない、相談出来る相手なんて1人もいない。
居場所は、一つも無い・・・
そして、実行に至ったわけだ。
気がつくと、不思議な世界にいた。
空には雲もなく、なんというか、薄紫のような空だった。
綺麗と言えば綺麗だし、不気味と言えば不気味だ。
そして、目の前に建物がある。
そこは、『死後判別所』と書いてある場所だ。
すると、案内人らしき人(?)が近づいてくる。
「こちらへ」
案内に従うがまま、建物の中に案内される。
中には、一本道の廊下があり、それ以外には壁しか無い。
「あのー、どこへ?」
案内人にたずねてみるも、反応は無い。
歩き続けていると、目の前に大きな扉があった。
「中へどうぞ」
入口以来、案内人が口を開いた。
そして、扉の中に入る。
すると、やや広い部屋があった。
部屋の中には、もう1人の男がいた。
「あれ、君も案内された系?」
なんと言うか、チャラい男だ。
いかにも、遊んできたと言った感じの男だった。
「ええ、まあ」
「じゃあ、君も殺されちゃった、みたいな?」
「いえ、僕は自殺して・・・」
「えっ、マジ!?もったいないじゃん!
俺なんて、付き合ってた子にやられちゃったよ。
浮気がバレちゃって、発狂したその子が包丁持ってきて
ブスって一発よ!
鬼痛かったっての!
女遊びグセが仇となっちまったってこと!」
見た目通りの男だった。
けど、気さくに話しかけてくれた事もあり、
僕はちょっと嬉しかった。
友達というほどではないけど、
生きてた頃には味わえなかった楽しさだ。
「時間です。お二人とも、こちらへ」
案内人が、僕たちを次の部屋へ案内する。
そこには、1人の男性がいた。
机と椅子があり、会社面接みたいな雰囲気だ。
「どうぞ、お二人ともお座りください」
男性の指示に従い、僕たちは椅子に座る。
「では、挨拶から。私は、死後判定所のシグマと申します。
お二人の生前の行いをもとに、今後どのような道を歩まれるかを
お伝えする役目を持っています」
「生前の行い?」
「はい、生前にどのように生きていたかで、次のステージが決まります。
良い行いをしたとか、悪い事をしたとか、その度合いによって
次のステージに大きく影響します」
「次のステージとは?」
「次の人生。つまり、生まれ変わりという事ですね」
よく、死んだら天国だの地獄だのとあるが、そのようなものは無い。
ただ、生前に良い行いをした人は、次の人生はとても幸せになるといったような事だった。
つまり、次の人生が天国になるか地獄になるかという事だ。
そういった意味では、みんなが知っているあの世と相違無いのかも知れない。
「では、順番にお伝えします。まずは、相田
最初に、チャラ男の人が呼ばれた。すごい名前だ。
「あなたは生前、かなり女遊びがひどかったようですね」
「あれ、もしかして俺、次ヤバくね?」
確かに、浮気が原因で殺された人だ。
かなり厳しい判定が出てる事だろう。
「ですが相田さん、あなたは多くの女性を楽しませてきた実績がありますね。
ほとんどの女性が、幸せを感じていたようです」
「そりゃそうっしょ!俺は浮気相手もマジ本気みたいな!」
「コンピュータがはじき出した結果、相田さんは次の人生で、
資産家の息子として生まれ変わります。
少々厳しい家庭ですが、とても裕福で良い環境です」
「マジ!?やったあ!俺マジ金持ちじゃん!」
女遊びが過ぎた人でも、多くの人を幸福にしたという功績で
次の人生は良くなるんだな。
僕は、どんな判定になるんだろう?
正直、不安が募る。
「では相田さん、そちらの金の扉から出てください。
そこを出ると、新しい人生が始まります」
相田さんは、満面の笑みで金の扉に向かった。
「じゃあ、おっ先~♪」
そして、相田さんは新しい人生へと向かって行った。
「では、沼田 和樹さん、あなたの生前について確認します。
あなたは、・・・その。かなり嫌われていたみたいですね」
「ええ、おかげで酷いイジメにあいました」
「特に、女性陣からは相当な嫌われぶりですね。ここまで嫌われている人は初めて見ました」
「そうですか・・・」
「では、コンピュータがはじき出した結果をお伝えします」
「は、はい」
「沼田さん、あなたにはダークゾーンへ行っていただく事になりました」
「あの、ダークゾーンとは?」
「何も無い、闇の空間です。そこで、永遠に過ごしてもらいます」
「えっ、そんな!?なぜです?僕は何も悪い事はしてませんよ!?
生まれ変わったりしないんですか?」
「それは無理です。沼田さんは見た目の問題で激しく嫌われているので。
多くの方が不快になってしまいます」
「そんな、僕が何をしたって言うんですか!?」
「ですから、あなたは生前ものすごく嫌われており、多くの人を不快にしています。
これは、大きなマイナスポイントです」
「ま、待って下さい!それはあんまりですよ、別に僕が好きで不快にしたワケじゃ無いんですよ!
こんなの、理不尽じゃないですか!」
「そうは言われましても、コンピュータが出した結果なので」
「いったい、僕が何の罪を犯したというのですか!?」
「う~ん、そうですね。強いて言うなら・・・」
「強いて言うなら?」
「生まれてきた事が重罪ですね」
「そ、そんな・・・」
「というワケで、そこの黒い扉から出ていってください」
「そ、そんな嫌です!お願いです!何とかしてください!!」
「それは無理です。決まった事ですから」
「い、嫌だあああああ!!!」
しかし、僕の意思とは裏腹に、体が勝手に黒い扉に向かう。
そして、僕はダークゾーンへと入って行った。
ダークゾーン
そこは、暗くて何も無い場所。
ただただ、暗くて何も無い場所。
でも、いいんだ。
僕は、これで誰とも関わらず過ごせる。
もう、誰からもイジめられなくなる。
もう、何もかもずっと、もう・・・・・
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